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- 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約
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Science June 22, 2001, Vol.292
気孔について(Stomatal Matters)
過去40万年間の地球規模の温度と大気のCO
2
濃度は驚くほど高い相関関係を 示しており、従って、それ以前でも高い相関関係が成り立っていたと期待してよいであ ろう。しかし、CO
2
の濃度を他の代理特性を使って過去6000万年間の温暖期 間を推定すると、全体的には不整合であり、300ppmから3000ppm以上の隔たりがある 。Royerたち(p. 2310)は、中新世と暁新世/始新世境界間の温暖期における大気中の CO
2
濃度を化石の葉の気孔密度(周囲のCO
2
濃度レベルの関数と して表せる)の測定値から推定した結果、この不一致について述べている。彼らは、こ の期間のCO
2
濃度はほとんど300ppmから 450ppmの比較的低い値に留まって おり、対応するCO
2
の強制力によるものと推測される温暖化の大きさは、古 代温度の多様な代理特性値からの推定値よりずっと小さい。これらの結果から CO
2
以外の地球温暖化要因の必要性が示唆される。(Ej,hE)
液晶を整列させる(Lining Up Liquid Crystals)
ほとんどの液晶デバイスでは基板に対して、液晶材料が特定の状態に整列すように誘導し た表面処理を施すことが要求される。この一般的な手法は表面を摩擦によって1方向にこ すり、方向を整列させることである。Stohrたちは(p. 2299)、吸収端近傍X線吸収微細構 造(NEXAFS: near-edge x-ray absorption fine structure)分光計を用い様々な処置(摩擦 したポリイミド、イオンビームを照射したポリイミドとイオンビームを照射したダイヤモ ンド様の炭素フィルム)を施された表面に対して配向性結合整列との相関を確認した。彼 らは、炭素質を持つ表面に整列を誘導する全ての方法により基板が形成できることを発見 した。イオンビーム照射したダイヤモンド様のカーボンフィルムが摩擦方の替わりに用い ることが可能で、次世代の液晶デバイス形成の基礎となるだろう。(Na)
相和す音響振動(Acoustic Oscillations in Accord)
宇宙進化の標準モデルは、初期インフレーションに続いて超高温ビッグバンが起きたと 仮定している。この過程では、最初の10万年の間にイオン化したプラズマで満たされた 宇宙が生み出され、高密度の固まりの内部のフォトンの圧力と重力の引力との間の競争 的な相互作用が、プラズマ中に音響振動を生成した。初期宇宙の電波領域におけるなご りである宇宙マイクロ波背景輻射(Cosmic Microwave Background CMB)には、これらの 音響振動の特徴が残されており、それらは最近測定された。そして、この CMB 自体は 、最近測定された初期宇宙の電波領域におけるなごりを表している。Miller たち (p.2302) は、宇宙史的には最近に形成された、銀河団と個々の銀河の物質密度分布に 刻印された音響振動を解析した。そして、その振動は CMB の結果と矛盾ないことを見 出した。このように、若い銀河に記録された振動は、非常に古いプラズマ中に記録され た振動と整合しており、宇宙形成のインフレーションホットビッグバンモデルに対して いっそうの支持を与えるものである。(Wt,Nk)
アフリカの雨(African Rains)
熱帯地方は、地球全体の気候の変動を起こす重要な源となる地域であり、また地球温暖 化が及ぼす影響を予期するために、そこが気候変化に対する反応をよりよく理解しなけ ればならない地域であると考えられている(Gasseによる展望記事参照)。しかし、この 地域の大陸温度(continental temperature)と降水量に関する精度の高い記録は比較的 少ない。Barkerたち(p.2307)は、ケニア山の高原湖に生える珪藻に起源を持つ二酸化珪 素の酸素同位体分析の結果を報告し、完新世にそこで起こった重大な同位体シフト (isotopic shifts)の原因が、気温の変動ではなく降雨と蒸発の総量における変化であ ることを結論付けた。(TO,An)
正確で信頼のおける脳のトレイン(連接)(Precise and Reliable Brain Trains)
活動電位タイミングの精度が皮質における介在ニューロン機能を理解するための中心的 な論点になっている。脳スライスの中の対記録(Using paired recordings in brain slices)を用いて、Galarreta と Hestrin (p. 2295; Helmuthによるニュース を参照のこと)は、錐体細胞と高速抑制機能を持つ介在ニューロン間の正確なスパイク 伝達の信頼性を研究した。介在ニューロンは皮質抑制性細胞のサブセットである。この 伝達でのニューロンの発火は、ある時間窓内に生じた。この時間窓は約1ミリ秒続き 、刺激性・後シナプスのイベントの立ち上がり位相に厳密な対応をしていた。この正確 な伝達は、高速抑制GABA作動性ネットワークの同期的な発火をさせる必須な機構を構成 するのかもしれない。(hk)
古い星団の中は少し静かすぎる(A Bit Too Quiet in Old Star Clusters)
球状星団は、銀河円盤が作られる前の宇宙の初期に(約 120億年から 140億年前)形成さ れた銀河のハローの中で見出されている。Grindlay たち (p.2290; Watson によるニュ ース解説 18 May を参照のこと) は、Chandra X線天体観測機を用いて、天の川銀河中 の球状星団 47Tuc 中の恒星種族を調べた。彼らは、X線源のおよそ 50〜55% が、ミリ 秒のパルサー(MilliSecond Pulsars MSPs) であり、30% は降着現象の起きている白色 矮星であり、15% はフレアバーストしている連星であり、そして、いくつかは無活動状 態にある低質量のX線連星であることを見出した。MSP は、無活動状態のX線連星中の 中性子星への降着現象のために回転が上昇させられている可能性があるが、47Tuc 中の 無活動状態の連星の個数は、MSP の数を説明するには少なすぎる。このため、47Tuc 中 のMSP の個数を説明するには、形成に関する別のモデルが必要である。これらと 47Tuc に関する他の発見は、初期の星の進化モデルの改定が必要であることを示唆している。 (Wt,Nk)
成長へのレッドクス制御( Redox Control of Growth )
原核生物は二成分の信号伝達系によって周りの酸素変化を感知し、それに従って代謝を 調節する。驚くことに、酸素がこのプロセスを制御している分子信号ではない。このプ ロセスには、膜ー結合センサーであるキナーゼと遺伝子発現を調節する応答レギュレ ータを含んでいる。Georgellisたち(p.2314)は、膜-結合したキノンのレドックス状態 が大腸菌のArcBセンサーキナーゼを制御しているということを決定づけた:キノンは代 謝反応に関係する電子輸送連鎖におけるキャリアである。(KU)
CO
2
はどこに?( Whither CO
2
? )
光合成によリ固定化された二酸化炭素の量を計算することは、将来の気候変動の状況を 予測する上で重要である(Wofsyによる展望参照)。合衆国の陸生による炭素吸収量は大 きな議論の的であった。Pacalaたち(p.2316)は、森林調査から得られた推定値と二酸化 炭素濃度の大気モデルから得られた推定値を比較する包括的な分析を示している。吸収 の推定値は、ほぼ2倍の(年あたりの炭素量0.3から0.6ペタグラム)差があるが、二つの 方法による推定値の大きさは類似している。Fangたち(p.2320)は毎年の中国森林量のデ ータにもとづき、過去半世紀にわたっての中国における存在している森林の炭素バイオ マス貯蔵量の変化を報告している。彼等の結果は、中国における森林再生が地球規模で の陸生炭素吸収に寄与しているらしいことを示唆している。(KU)
それに続くダメージ(Collateral Damage)
セントジョンズの麦汁の成分であるハイパーフォリン(hyperforin)などの生体異物が 、核のプレグナンX受容体(PXR)を活性化する時に、危険な薬物-薬物相互作用が生じ るかもしれない。なぜなら、この受容体は、免疫抑制剤シクロスポリンなど多くの小分 子を代謝する酵素であるチトクロームP450の発現を刺激する転写因子だからである。 Watkinsたち(p. 2329)は、ヒトPXR単独のリガンド結合ドメインおよびコレステロ ール低下剤SR12813と複合体形成した際のリガンド結合ドメインの結晶構造を、それぞ れ2.5オングストロームおよび2.75オングストロームの解像度で決定した。PXRは様々な 化合物と結合することが知られている。しかし、疎水性のリガンド結合窩の内部にはい くつかの極性残基があり、それにより方向性のある乱雑さを特定していることが示され 、そして3つの異なる方向性でSR12813との結合を媒介していることが示された(もとも とは不活性のマウスPXR上でおこなった、SR12813に対する感受性に寄与しているこれら の疎水性残基の標的化変異生成(targeted mutagenesis)の結果)。そして、これらの 極性残基の位置および性質が、PXRの正確な薬理学的活性プロフィールを確立するため に必須であることが示された。(NF)
つくるか、それともつくらせないか(Make or Break)
大型の細菌ウィルス(ファージ)は、宿主の細胞膜に穴をあけ、そこから細胞壁を分解 するウィルスが産生する酵素を放出することにより、宿主細胞から脱出する (Hatfullによる展望を参照)。これらのファージに相対するものとして、小型の一本 鎖核酸のウィルスは、細胞壁を破壊するための別のストラテジーを立てており、細菌の 細胞壁合成の様々な工程を阻害するタンパク質を産生する。Bernhardtたち(p. 2326)は、III群ssRNAファージQベータ由来のタンパク質A2が、細胞壁合成の最初の酵 素を阻害しており、そしてその結果、20分後には増殖している細菌の細胞壁が崩壊し始 めることを示している。(NF)
重要なリクルーター(Executive Recruiters)
転写活性化因子は、SAGAとNuA4というヒストンアセチル転移酵素(HAT)複合体を補充す ることによって、染色質構造をとるDNA鋳型からの転写を刺激できるが、この複合体が プロモータを法的とする機構はまだ不明である。Brownたち(p 2333)は、酸性の活性化 因子がTra1pと相互作用することを明かにした。Tra1pは両方の複合体におけるサブユニ ットであるので、ヒストン修飾のために、プロモータにNATを補充することにはTra1pが 必須の成分であるらしい。(An)
聴力のイオン性の機構(Ionic Mechanism of Hearing)
哺乳類の蝸牛における外側の有毛細胞という特定化細胞は、聴覚の過程の初期に働く 。最近、外側の有毛細胞の電気的な運動性に役割を果す運動性タンパク質prestinが同 定され、クローン化された。Oliverたち(p 2340)は、このタンパク質における珍しい電 位感受性は内因性ではなく、重炭酸イオンや塩素イオンのような細胞内の陰イオンの存 在に依存することを発見した。この陰イオンは、外因性の電位センサーのように働く 。運動性タンパク質に結合すると、外側有毛細胞の電気的な運動性に関与する分子構造 の再編成を引き起こす。(An)
立体配置か、電荷の移動か(Conformation Versus Charge Transfer)
分子スイッチに見られるコンダクタンスの変化は、しばしばニトロ基ないしアミノ基な どの官能基における荷電すなわちレドックス状態の変化に帰すものとされている。 Donhauserたちは、いくつかのフェニレン・エチレン・オリゴマーの構造と伝導率を 、走査トンネル効果顕微鏡を用いて、2つの異なった状況下で観察した(p. 2303)。1つ は、表面上に島状に互いに強固に詰まった状態(欠陥を有する場合と、秩序だった配列 の場合の双方)、もう1つは、個々ばらばらになってアルカン・チオール単層に入り込 んだ状態である。立体配置の変化を許しやすい状態(欠陥を有する場合およびアルカン 中)にある分子は、秩序立った密集した状態にある分子より、高コンダクタンス状態と 低コンダクタンス状態の間の自発的なスイッチングを引き起こしやすかった。彼らは 、電場によって誘導されるスイッチングは荷電を有する基の移動によってなされている 可能性がある、と示唆している。(KF)
配列から歴史を読む(Reading History from Sequence)
C型肝炎ウイルス(HCV)は、世界的にみて最大の肝疾患の原因である。PybusたちはHCVの 伝播率を決定する疫学的な変数を推定しているが、これは、将来の流行のしかたと公衆 衛生上のリスクについて定量的な予測を可能にするものである(p. 2323)。この結果は 、ウイルスの遺伝子的な違いではなく伝播経路の差によるサブタイプ間の流行のしかた に有意な差のあることを示している。この疫学的モデルは、数理的疫学と集団遺伝学と いう学問間に重要な掛け橋を提供してくれ、遺伝子配列データから感染症の基礎的な再 生産率の推定を可能にしてくれるものである。(KF)
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