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- 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約
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Science July 16, 1999, Vol.285
鍛えうる分子論理ゲート(Malleable Molecular Logic Gates)
計算のためのデバイスの密度を増加させるアプローチの一つは、 大きなプログラマブルメモリーの配列へのアクセスに、これまで よりはるかに大きく依存することである。デバイスの欠陥は、組 み立て中にあるいは動作中においても生ずる可能性があるが、相 互接続の密度が高ければ、個々のデバイスの欠陥の存在は必ずし も、チップの残りの動作を損なうことにはならない。Collier た ち (p.391; Service による解説を参照のこと) は、そのようなコ ンピュータ用のスイッチングデバイスを作るために、溶液中の ロ タキサン(rotaxane)分子の電気化学的特性を制御した。これら の分子を二つの電極間のバリア層として用いると、スイッチが 「閉じた」状態(つまりオン)を生み出す。しかし、酸化パルス により、非可逆的にそのスイッチを「開く」(つまり、オフにす る)ことができる。選択的にそのようなパルスを印加することに より、高電流レベルと定電流レベルは十倍以上も異なっているた め、論理回路(ANDと OR ゲート)を作ることができる。これら のμmスケールのデバイスの性能は、はるかに小さな大きさにま で縮小可能と期待されている。(Wt)
リフト熱の流行を予報する (Forecasting Rift Fever Epidemics)
東アフリカでは、リフト渓谷熱(Rift Valley fever)が周期的に 人や家畜に感染する。そのウィルスは蚊によって媒介され、その ため過去半世紀の全ての主な流行は、激しい降雨が続いた後に発 生している。Linthicumたち(p.397;Epsteinによる展望記事参 照)は、気候指標の分析と人工衛星からの植生分布の観測とに基 づき、5ヶ月も先に大発生を予測することを可能にするメトリク ス(計量方法)を開発してきた。局地的な伝染地域を推測するた めの人工衛星からの監視に加えて、このように前もって大発生に 気づいていることで、ワクチン接種や蚊の抑制によって、流行病 を制御し限定するための、施策をおおいに促進することができる であろう。(TO)
光合成に光を注ぐ(Shedding Light on Photosynthesis)
細菌性光合成の間では、光エネルギーを捕捉するアンテナ複合体 (light-harvesting antenna complexes)は、光子を吸収して 励起状態に入る。次のステップでは励起エネルギーを反応センタ ーに伝達する。励起とエネルギー伝達の精密なプロセスを解明す ることに多大な研究の焦点が当てられてきたが、電子的励起状態 の特徴付けを行うことは困難と判ってきた。Van Oijenたち (p.400;Orritによる展望記事参照)は、低温単一分子の分光法を 使い、アンテナ複合体LH2の2つの異なる部分を調べた。彼等は、 励起状態は、一方の部分に局所するが、他方では非局在化するこ とを発見した。この結果から、光合成におけるエネルギー伝達の 割合やメカニズムを知ることができる。(TO)
時々は反対のものも反発する(Sometimes, Opposites Repel)
逆の電荷は引き合う。それゆえ、私たちの直感によれば、帯電し た粒子は逆の電荷を有する表面を一様に覆うであろうと予想され る。Aranda-Espinoza たち (p.394)は、正帯電した界面活性剤 と中性の界面活性剤との混合物でてきた大きな小胞(直径20μ m)の表面への、負帯電したラテックス粒子の付着を検討した。 そして、付着領域と非付着領域(反発的領域)への分離が生ずる ことを見出した。著者たちは、負帯電のカウンターイオンが、非 付着領域では小胞の内側の表面に凝集しており、ラテックス粒子 を反発するのはそれらの電荷であると論じている。この、静電的 付着が飽和するというこの効果は、細胞の膜と小胞との間で働い ている可能性がある。(Wt)
スペクトル全域の色調(Colors from All Over the Spectrum)
植物や細菌の光合成に必要なエネルギーは可視光に由来する。 Jiangたち(p.406)は、光合成細菌ロドスピリルム属centenum から青色光(クリプトクロム)と赤色光(フィトクロム)の光受容体の 両方に関係しているハイブリッド光受容体を単離した事を報告して いる。この新たなタンパク質は原核生物の光活性黄色タンパク質 (PYP)に類似し、そして青色光を吸収するパラ水酸化桂皮(ケイヒ) 酸発色団を含む領域と赤色光に感ずるフィトクロムに類似したもう 一つの領域を持っており、PYP-phytochrome-related物質Pprと 命名された。Pprはカルコン合成酵素遺伝子の青色光依存性制御に 介在しており、そして太古の細菌情報伝達系の成分の一つであり、 その後植物フィトクロムに進化したものかもしれない。(KU)
左右どっちだった? (Was That a Right or a Left)
殆どの脊椎動物は概観上左右対称であるが、体内の臓器はしばし ば非対象である。最近の研究により、このような左右非対象性を つかさどる遺伝子的プログラムの見通が得られるようになってい る。ニワトリの場合、線維芽細胞増殖因子FGF8 (fibroblast growth factor)とソニックヘッジホッグたんぱく 質(SHH:Sonic hedgehog protein)が各々右と左の初期決定の役 目を持っている。MeyersとMartinは(p. 403)、比較のためマウ スを研究し、FGF8とSHHはこの2つの生き物において非常に異な る機能を果たす、ということを発見した。ニワトリの右決定因子 であるFGF8はマウスにおいては左決定因子であり、SHHは、ニ ワトリの左決定因子の働きとは異なり、左を特定する遺伝子がマ ウスの右側に発現するのを阻止する。(Na)
宿主を細工して移植片を受け入れる (Helping Hosts Accept Grafts)
癌の化学療法で生じる骨髄損失は正確に適合する、即ち完全なる 組織適合性を持ち、移植片が宿主を攻撃しなくなるような骨髄ド ナーが見つからないと致命的になる。移植片対宿主病(GVHD)を 防ぐアプローチの一つとして、骨髄から成熟T細胞を取り除く方 法がある。不幸な事に、この方法は、しばしば骨髄細胞を移植し づらくし、そして腫瘍発生に対する抵抗を弱めてしまう。 Shlomchikたち (p. 412;Hagmannによるニュース解説参照)は、 僅かな組織不適合性の場合にGVHDが宿主の抗原提示細胞(APC) によってのみ促進される事を示している。このように、移植片の T細胞よりむしろ宿主の適切なAPCのみを標的にする事によって 移植成功率が高まる可能性がある。(KU)
背骨の悪さを受け継ぐ(Inheriting a Bad Back)
椎間板の病気は、典型的には坐骨神経症と関係しているが、あり ふれていて、しかもお金のかかる公衆衛生上の問題である。ある 遺伝的な要素がその病気に関係しているらしいと疑われてきたが、 病気が環境や生理学的な要因も寄与する多因子性のものであるた め、それを証明することは、むずかしかった。Annunenたちは、 通常の連鎖解析の方法を改良して、フィンランド内の遺伝的に無 関係な個人からなるグループにおけるその病気と、コラーゲンIX のポリペプチド鎖の一つをコードするある対立遺伝子との間に、 関連が存在することを証明することができた(p.409)。(KF)
逆位の際の転位因子の関与 (Implicating Transposable Elements in Inversions)
ゲノムの可変性は、逆位(inversion)や挿入(insertion)、欠失 (deletion)、転位(rearrangement)などの複数のイベントに よって生み出される。逆位は、多くのゲノムに広く見られるもの であるが、この配列変化の起源ははっきりしていない。間接的な 証拠によれば、転移性の要素によって逆位が生み出されうるのだ が、自然な遺伝子集団においてこのイベントが起きることの直接 的な証拠は、つかまえられていなかった。自然なショウジョウバ エ集団における2j逆位をクローニングし特徴付けすることで、 Caceresたちはこのたび、ある転位因子 (transposable element)が逆位を生み出す原因としての役割を 果たしていることを示す証拠を示している(p.415)。新規の転位 因子が方向付けを行なう、2j逆位の仕組みの一つが提案されてい る。(KF)
タンパク質を切断、細胞を分裂 (Cut the Proteins, Divide the Cell)
細胞分裂時に、正常な染色体の分離は、癌細胞において不正になっ てしまう場合が多くあるが、姉妹の染色分体の放出と後期の開始の 正確なタイミングが必要である。酵母において、染色分体の分離に、 Ps1pとCut2pというセキュリン(securin)タンパク質の選択的タン パク分解が必要である。同様な配列をもつ関連しているタンパク質 が哺乳類細胞において発見されていないが、Zouたち (p 418; Orr-Weaverの展望記事参照)は、アフリカツメガエルと ヒトから、Pds1pとCut2pと機能的に関連しているタンパク質を同 定したことを報告している。この脊椎動物タンパク質は、後期を促 進する複合体によって分解されるが、分解されないアフリカツメガ エルタンパク質の変異体は、アフリカツメガエル卵の抽出物におけ る姉妹染色分体の分離を遮断する。ヒトのセキュリンタンパク質は、 PTTG(下垂体腫瘍トランスフォーミング遺伝子)というトランスフォ ーミング遺伝子の生成物であり、いくつかの腫瘍と癌株化細胞にお いて過剰発現される。従って、Pds1pの脊椎動物類似体が染色体分 離の間違いを起こすことによって、腫瘍の形成に関与するのかもし れない。(An)
ウイルスと宿主にストレスを与える (Stressing Virus and Host)
ストレスに応答する順応を分子レベルで理解することは、ウイルス が薬の治療に対して抵抗性を有するかどうかを予想するための鍵で ある。この現象の以前の研究は、一遍にみえる変化した遺伝子が少 なかったため、困難であった。Wichmanたち(p 422)は、高温度と 異常な細菌宿主という条件下で、バクテリオファージX174の進化に ついてゲノム全体の動的な研究を行なった。同型培養において、同 様な変化が観察されたが、変化の順番とタイミングがかなり異なっ ている。(An)
機能に基づくほ乳類細胞の遺伝子分離 (Functional Approaches to Gene Isolation in Mammalian Cells)
G. J. Hannon たち (Techview, 19 Feb., p. 1129) は、彼らの表 現によると「ほ乳類の細胞から、機能に基づいて遺伝子を分離する という特殊戦略によるMaRXというシステムを開発した」。これに 対してA. V. Gudkovたちは、「MaRXとか言う手法の基礎的な考え 方やほとんどの技術的な特徴は、我々や他の実験室で長年発表して きた方法の原理や手法と見分けがつかないように思える」とコメン トしている。A. Kimchiたちは、Hannonたちによって応用された ものと同じ原理に基づいて設計され、また、複雑な生物学的プロセ スを制御する新規な遺伝子を分離するために利用されてきた、早く から「確立している手法の1つである、、、テクニカルノックアウ ト(TKO)」について述べている。このコメントの全文は以下を参照 (Ej,hE):
www.sciencemag.org/cgi/content/full/285/5426/299a
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