AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約 |
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月は、アポロ宇宙船の飛行のおかげで、採取した場所がわかっている 岩石試料を我々が得ている地球以外の唯一の天体である。これらをも とにして、月の起源と進化の理解に到るには、月の表面組成と、内部 構造の推測のための月の重力および磁場の測定結果の全体的なマッピ ングが必要である。そのような全体的情報は、今や、1月以降、月の マッピングを行なっているルナー・プロスペクター (Lunar Prospector)によって与えられつつあり、それは、1475ペー ジのBinderによる概観に始まる一連の7つのレポートに示されている。
月は、45億年前、火星くらいの大きさの爆発流星(bolide)がプロト地 球(proto-Earth)に衝突し、物質を地球周囲の軌道上に放出したこと によって形成されたと考えられている。この物質が、その後再固着し て月になったのである。火山の活動は、20億年間活発に行われたが、 月が冷えていくにつれ衰えていった。今日では、月は不活性であり、 地球においてプレート・テクトニクスを引き起こしている対流のよう な内部のプロセスが存在していないからその表面は変化を受けない、 静止状態にある天体だと考えられている。その歴史を通じて、月は 小さいものから大きなものまでさまざまな、衝突によるクレーター を生み出す爆発流星による爆撃を受けてきた。大きな衝突のいくつ かは、非常に深い部分から物質を掘り出したのではなかろうか。
ルナー・プロスペクター(Lunar Prospector)は、3種類の(粒子)分 析計(spectrometer)、および磁場測定器、電子反射計、ドップラー 重力計を備えた、安価な衛星である。それは、月の極軌道を低高度 で周回しながら、全体的なマッピングをしている最中である。ドッ プラー重力実験装置は、月の内部構造の変化によって生じる宇宙船 の軌道の些細な変化を分析する。重力データの分析(Konoplivたち p.1476; また、Irionによるニュース記事参照のこと)によると、月 には鉄を豊富に含む小さな核が存在する。このように、巨大な衝突 によってこの核が形成されるほど豊富に、鉄が月に存在しているに 違いないからには、それは鉄が豊富な地球のマントルに、あるいは 地球の初期の核に由来するものであろう。磁場測定器と電子反射計 による測定結果(Linたちによる p. 1480)は、インブリウムベイス ン(雨の海の窪地)とセレニタティスベイスン(晴れの海の窪地)の丁 度裏側では、(従来の多くの仮説とは逆に)月の外殻の磁場が局所的 に割合と強くなっていることを示している。このように、ある種の 衝突は衝突場所の反対側に、外被の磁化を引き起こした可能性があ る。インブリウム衝突ベイスンの裏側での磁場は、太陽風を曲げて、 小さな磁気圏を作り出すくらいに強い。
γ線とα粒子、中性子の分析計は、月表面における宇宙線と太陽風 プラズマによって生み出される粒子の相互作用によって生じる粒子 流を用いて、月の外殻表面を作り上げている元素の全体的な分布を マップしている。それにより、γ線(Lawrenceたちによる p. 1484) と中性子(Feldmanたちによる p.1489)の分析計の分析に基づいて、 鉄、チタン、トリウムとカリウムの存在量の全体分布図が示されて いる。これらの全体分布図が示してくれるのは、主要な衝突による 窪地、たとえば南極のエイトケンとインブリウム、は化学的には、 月の高地(等高線の高い地域で、主に玄武岩の溶岩流によってでき ている)とは異なっている、ということである。クレメンタイン衛 星のスペクトル反射率データから推測される鉄とチタンの分布図は、 概して、ルナー・プロスペクターによるマップ(Elphicたちによる p. 1493)と一致している。最後に、中性子分析計から導かれた水素 量の解析によると、月の両極には水の氷が存在するらしい。これは クレメンタイン衛星のレーダー観測が月の南極にあるクレータから 水の氷によるらしい信号を受けたことと合致する。(KF, Nk)