AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science December 19, 1997, Vol.278


コバルトを用いる鳥籠への経路(Cobalt route to cages)

膨大な新しいタイプの分子篩(ゼオライト)が合成されて きているが、12の環状のチャンネルの三次元的ネットワ ークを持つフォージャサイト(faujasite)構造を含むゼオ ライトを作ることは困難であった。Bu たち(p.2080) は、 燐酸アルミニウムの分子篩へ大量のコバルトを混合するこ とにより、いくつかの新しい構造を作る方法を示している。 そして、その構造のあるものは異常に大きな籠の構造をし ている。(Wt)

チューニング可能な半導体ダイオード (Tunable semiconductor diode)

ショットキーダイオードは金属と半導体からなっており、 ある電圧の範囲においてのみ、電流を通す。原理的には ターンオン電圧(電流が流れ出す電圧)は、金属の仕事関 数に応じて変化するはずであるが、実際には表面状態へ の「ピン留め」により、電圧はさまざまな金属に対して ほとんど同じである。Lonergan (p.2103; Scottによる 展望記事(p. 2071)も参照のこと) は、金属として導電性 高分子を用いることにより、チューニング可能なダイオ ードを作ることができることを示している。金の格子が 高分子中に包埋されるのであるが、その金格子は高分子 を電気化学的にドーピングし、それの仕事関数を変化さ せるのに用いることができる。(Wt)

秩序!秩序!(Order! Order!)

金属の錯体が溶液中での反応を触媒するために用いられる 場合、それらは通常、互いに独立に機能すると考えられて いる。Tollnerたちはこのたび、均一系において非常に低 い反応性しか示さないロジウム錯体について、錯体のラン グミュアー・ブロジェット膜によって課される秩序が触媒 作用の活性化を著しく増加させる、ということを示した (p. 2100)。また、高い基質選択性も観察されている。(KF)

クローニングにおける、より大きな制御 (Greater control in cloning)

大型の動物のクローニング技術の重要な応用の一つは、 大量の医療関連製品を作り出せるようになる、という ものである。この目的に向けてのステップの一つとして、 Schniekeたちは、血液凝固因子IXをコードする遺伝子を ヒツジ胎児の繊維芽細胞(fibroblasts)に挿入し、それか ら遺伝子を組換えられたその核を別のヒツジの脱核された 卵母細胞に挿入し、遺伝子組換えヒツジを作り出した (p. 2130)。成熟以前の誕生または死の発生率は従来より 高くなったが、この方法には従来の方法にまさる点がいく つかある。特徴付けをした細胞集団から始められること、 子孫の性を予め決めておけること、導入遺伝子を伝達しな いモザイク祖を回避することができること、などである。 (KF)

遺伝的時計と気候(Genetic clocks and climate)

遺伝子の周期も、気温が高い低いに関わらずほぼ24時間 を周期とする身体のリズムを維持する時計の一部を構成し ている。ミバエの自然な集団には、周期遺伝子中にスレオ ニン-グリシン-をコードする種々の長さの反復を持つ、 この遺伝子のいくつかの変異体のうちの一つがある。この たびSawyerたちは、この変異を、ミバエが異なった温度 条件の下でもリズムを一定に保つ能力の違い、に関連づけ た(p. 2117)。温度を補償する能力が大きいミバエが、 ヨーロッパの北の高緯度地域で発見されている一方、その 能力が低いものは、より南に分布しているのである。(KF)

タンパク質の通路(Protein conduits)

分泌される運命にあるタンパク質は小胞体(ER)を横切って 共翻訳的に転位する。Beckmannたち(p.2123;および PowersとWalterによる展望記事p.2072)は翻訳-転位機 構の鍵となる成分の3次元構造を再構成した-即ち、ER中 のタンパク質を導く通路として働くタンパク質であると思 われている、Sec61を伴う複合体中のリボソームの構造を。 リボソーム中の通路とSec61複合体中の通路は、2つの複 合体間を新生鎖が直接伝達出来るように並んでいる。 (Ej,hE,Kj)

アブシシン酸の制御(Regulating abscisic acid)

環状ADPリボース(cADPR)は細胞の信号伝達メカニズムに 使用されるいくつもの可能性のある要素の一つである。 Wuたち(p.2126、P.2054のPennisiのニュース解説も参照) はホルモンであるアブシシン酸に対する植物の生理反応は cADPRとカルシウムにより仲介されるという証拠を提供した。 アブシシン酸は乾燥や低温などの多様なストレスに対する 高等植物の反応を制御している。(Na)

細胞のシグナルを組織化する (Organizing cellular signals)

刺激に対して細胞の表面で応答し、そして、細胞内部の 生物学的機能を制御する沢山の生物学的情報伝達経路が 明らかにされてきた。最近の研究によると、これらの経 路に関与している分子は、多くの場合、細胞質中を単に 拡散することによってアトランダムに相互作用をしてい るのではないらしい。むしろ、効率的で特異的な情報伝 達には、これら分子の空間的組織化や、特定経路の成分 の制御された物理的相互作用が決定的に重要なように見 える。PawsonとScott(p.2075; p.2072)は、このよう な生化学的情報伝達経路を組織化することに寄与する色 々な分子の役割を総轄し分析して、情報伝達網の生理的 な制御に必要な込み入った制御メカニズムにおけるこの 様な機能の重要性を議論している。(Ej,hE,Kj)

極めて適応性の高い触媒性抗体 (A highly accepting catalytic antibody)

実験室における合成ツールとしての酵素の有用性は、しば しばその基質の高い特異性のために制限されている。しか し、触媒性抗体は、多様な基質を受容できるように操作可 能である。Barbasたち(p.2085)は、反応性免疫化によって 準備されたアルドラーゼ触媒性酵素が、付加反応や結合反応 のために、いかに広範囲の基質を受容し、解糖に関与してい る類似した酵素と同等の加速度を出し得るかについて述べて いる。結晶構造からは、反応性免疫化によって引き起こされ る触媒性リジン残基が疎水性構造のポケット奥深く存在して いることが分かる。(Ej,hE,Kj)

底部マントルでの分配 (Partitioning in the lower mantle)

底部マントルでの主要な2つの鉱物はペロヴスカイトと magnesiowstiteであるらしい。この両方ともマグネシウム といくらかの二価鉄を固溶体として含んでいる。これら2つの 相の間での2価鉄とマグネシウムの分配率を知ることは、導電 性のようなマントルの性質を理解する上で鍵となる。Maoたち (p.2098)は実験データを示して、底部マントルのような深さや 温度が上昇すると、ペロヴスカイト相にはより多くの二価鉄が 分配されることが窺われる。(Ej,hE,Tk)

青に向かって(Into the blue)

植物は光源の方向に成長することによって青い光に反応する。 シロイヌナズナ(Arabidopsis)のいくつかの変異体からの実生 種は、この屈光性応答に欠陥を持っている。Hualaたち (p.2120)は、この変異種の1つに影響を受けたNPH1遺伝子を クローン化した。原形質膜にあるこのタンパク質は、青色光に 反応して大きく加リン酸反応をするが、これは光に対する応答 の非常に初期の段階を示しているのかも知れない。(Ej,hE,Kj)

リボソームの経済を規制するもの (Regulating the ribosomal economy)

細菌中でのタンパク質合成は厳格に規制されている。メッセン ジャーRNAからタンパク質に翻訳するリボソームの数は、リボ ソームRNA(rRNA)転写によって規制されている。Gaalたち (p.2092およびRobertsによる展望記事p.2073)は、rRNA転写 がアデノシンとグアノシン三リン酸(ATPとGTP)の量によって 規制されている様を示している。大腸菌においてrRNAプロモー タは高濃度のATPまたはGTPを必要とするが、それはRNAポリ メラーゼと極めて短寿命の複合体を形成するためである。ATP とGTP濃度は成長率と共に増加するため、rRNA転写とリボソー ム活性もタンパク質合成が細胞のATPを消費し尽くすまで増加 するであろう。(Ej,hE,Kj)

宇宙のがれき(Rubble in space)

1996年に打ち上げられた地球近傍小惑星観測衛星 (NEAR: The Near Earth Asteroid Rendezvous)は最初の 目標である第433番小惑星エロス(Eros)への軌道周回へ向か う途中科学者たちは第253番小惑星Mathildaの観測が行える 可能性を認識した(p.2070のAsphaugの展望参照)。 Yeomansたち(p.2106)は、どのようにしてNEARの航行チー ムが地上ベースのマチルダ(Mathilde)の軌道データと HipparcosとTychoのカタログからの星の基準データを用い、 Mathildeの軌道を正確に予測し、1225Kmという近さまで NEARを接近させることが出来たかについて報告した。 MathildeのNEARに対する引力から、重量はおよそ10^14トン であると見積もられた。Veverkaたち(p.2109)は、NEARの 画像データにより、この不規則な小惑星の大きさが66km× 48km×46kmであると報告した。Mathildeの容積密度は水の たった1.3倍しかないことになり、マチルダは殆ど多孔性であ るか、水和されているか、破砕されているか、又は、それらの 組みあわせであると考えられる。少なくとも、5つの大きな衝 撃クレータが存在し、科学者たちに、なぜこんな低密度のがれ きの山が無傷でいられるかの疑問を投げかけている。(Na)

ドットにとっての遠足日(Field day for dots)

量子ドットのような量子的に閉じ込められた構造の励起状態の エネルギーは、電場によるStark(シュタルク)効果によって シフトする。この効果は光信号を電気的に制御するために利用 されている。EmpedoclesとBawendi(p.2114)は蛍光顕微鏡 を使って、単一のセレン化カドミウムの量子ドットのStark効 果を測定した。見かけの線幅よりずっと大きい、基底の励起状 態エネルギーのシフトが誘起された。そして、局所的な電場に よる誘起で励起された状態は、約90 Debyeにも及ぶ強く分極 された双極子である。(Ej)
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