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- 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約
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Science December 5, 1997, Vol.278
火星の概観、今と昔(A view of Mars, then and now)
マーズパスファインダーは1997年7月4日、火星表面に無事 バウンドしながら軟着陸し、着陸船の太陽電池板を広げ、着 陸船の周りの岩や土壌のサンプル採取のため探査車ソジャー ナを発進させた(Golombekたちの記事、p. 1743)。着陸船か らのラジオトラッキングによりFolknerたち(p.1749)は火星 の回転速度、極軸の揺動の見積も精度を高めることが出来た。 その結果、火星の核は密度が高く、鉄分が多いことが示唆され た。大気の圧力、温度と密度の測定(Schofieldたちの記事、 p.1752)によると、昼間の温度はバイキング1号の測定結果や 塵旋風の証拠よりも若干暖かいことが示された。着陸船の撮像 装置は着陸地点の、埃だらけの山や溝にかつて水や、風、衝撃 による侵食をしめすと思われる様々な岩石の形や表面の組織を 見せる、圧倒的なパノラマ画像(折込み頁参照)を提供した (Smithたちの記事、p.1758、表紙も参照)。探査車のチームは (p.1765)は探査車からの土壌と岩石の特性分析で、おそらく礫 岩の存在など、堆積のプロセスが起こった証拠を発見した。一方、 Hviidたち(p.1768)は、着陸船上に並べた磁石に付いた塵の分析 から、水が磁性鉱物の酸化に関係したであろうと結論づけた。 最後に、探査車上のアルファ線プロトンX線分光計(APXS)により 10数回の化学分析が行われ、採取された岩石には、火星からの隕 石とは異なり、酸化ケイ素が多く含まれていることが明確になり、 おそらくそれは火星地殻の成分分化作用を現しているのであろう (Riederたちの記事、p.1771)。採取された土壌は岩石とは異なる 組成を持ち、また、これらの土壌は、風化作用で侵食されその付近 の岩石に火星の隕石のような苦鉄質の岩石からマグネシウムと鉄が 供給されて形成されたと思われる。これら全ての観測と分析は、火 星は大昔には、より暖かく、水気の多い場所だったことを示唆して いる。(Na,Tk,Nk)
量子ドットについて(On the quantum dots)
量子ドットとは、電子により電荷を与えうるナノメートルスケール の半導体の構造である。この量子ドットは、原子と同じように励起 状態への遷移を示す。(McEuenによる展望記事(p.1729)を参照のこと). Kouwenhovenたち(p 1788) は、環状の欠損のない量子ドットでは、 量子数や原子の Hund則に対応する遷移の存在を同定できることを示 している。Schedelbeckたち(p 1792) は、これらの人工的な原子か ら人工分子を作ることを研究している。二つの量子ドットからの波動 関数間の重なりにより、ドット間の距離に依存する結合強度を有する 結合と反結合の準位が形成される。Stewartたち(p.1784) は、対称 性を欠いた系における電子の遷移を調べるために、不規則な量子ドッ トを研究した。異なる数の電子を持つ量子ドットに対して、励起スペ クトル中に強い相関が観測された。これは電荷を与えるエネルギーが 異なっているにもかかわらず観測されている。そして、一つの準位を 満たすのに対して、スピンが対を成す二電子ではなく、一電子でも十 分であった。(Wt)
アイソトープと亜酸化窒素(Isotope and N2O)
亜酸化窒素(N2O)は温室効果ガスであるため対流圏において重要で あるだけでなく、成層圏においてオゾンの破壊にもかかわっている。 このN2Oの地球全体としての収支勘定や、まだ同定されていない発生 源・消失源を知ることは難しかった。N2Oの多様なアイソトープに よって、鍵となるトレーサーが利用できることが以下の3つの報告で 述べられている。RahnとWahlen(p.1776)は、NとOの重いアイソ トープが成層圏のN2Oに濃縮していることを示し、CliffとThiemens (p.1774)は対流圏のN2Oに酸素17(17-O)が富化しているのは酸素の 質量と無関係なプロセスに依るものであることを示している。Yungと Miller(p.1778)は、成層圏における富化は、より軽量のアイソトープ 種の選択的光分解に依るものであろうと提案している。(TO,Ej,hE)
核の中の水素(Hydrogen in the core)
地球の核は殆どが鉄で構成されている、しかし、地震波による観測では、 核に相当する圧力での金属鉄の密度よりも観測密度が低いことを説明す るためには、軽い元素が一種または数種、核内に存在 する必要がある。 Okuchi(p.1781、p.1727のWoodによる展望も参照)は高圧 (〜7.5ギガパスカル)、高温(1200〜1500℃)で鉄金属内に水素の泡を 分離しないように閉じ込めた。急冷したサンプル中の水素の泡の体積に より、核の密度の不足分のうち、約60%は水素で説明できると推論した。 (Na,Nk)
草はより緑に(The grass is greener)
大型の草食動物が草地の特定の部分を好むのはなぜだろう。 セレンゲティ国立公園でのMcNaughtonたちによる観察は、ある場所で 草を食べることが、その場所の栄養分を増やすことを加速する、という 正のフィードバック・ループの存在を支持するものである(p. 1798)。 食べられる草地では、窒素のミネラル化の割合が高くなり、土壌中の ナトリウムのレベルも増加する。ナトリウムの入手可能性が増加する ことは、植物よりもむしろ草食動物たちを利するものとなるらしいの である。(KF)
巧みなウイルス(Handy virus)
PBCV-1は、通常ゾウリムシの内部に存在している緑藻類を感染する ウイルスである。DeAngelisたちは、このウイルスが、通常のように 宿主のもつ酵素や宿主の炭水化物を頼りにするのではなく、炭水化 ヒアルロナンを合成することができる、ということを示した(p. 1800)。 この多糖体が産生されると、藻類はゾウリムシに吸収されることが 難しくなり、感染に弱い状態のままになってしまう、ということが 考えられる。(KF)
脳下垂体を生み出す(Producing the pituitary)
哺乳類の脳下垂体が神経管の底部と口腔の上部との複雑な相互作用 から発生する。その後、特異的なホルモンと生理的な機能を持つ 様々な細胞類が分化によって発生する。Shengたち(p. 1809)は、 この過程を制御する転写制御因子を解明した。Lhx3とLhx4という 遺伝子は、前駆物質であるRathke's pouchの口の外胚葉からの形成 を冗長に制御する。引き続いて, Lhx3は脳下垂体のいくつかの前駆 細胞の運命選択を独立的に制御し、Lhx4は細胞の増殖に影響するよ うである。(An)
タンパク質の墓所(The protein graveyard)
小胞体において、誤って折りたたまれたり組み立てられたりした 分泌タンパク質と膜タンパク質は、ユビキチンに依存する過程に よる分解のために、小胞体膜の細胞質側に送られる。このタンパ ク質は、小胞体膜へ転位置された欠損のタンパク質を含んでいる。 Biedererたち(p.1806)は(p. 1806; Riezmanによる展望参考 p. 1728)、ユビキチン依存分解における中心的な酵素である Ubc7pは、新たに同定されたタンパク質Cue1pとの付随によって、 小胞体の細胞質表面に局在化することを示した。Ubc7pとCue1p との相互作用は、小胞体タンパク質の分解に必要であり、真実の 細胞質のタンパク質の分解にも必要である。細胞は、小胞体の表面 を骨格として用い、Ubcとプロテアソームを含む細胞質タンパク質 の分解物成分を濃縮するとみられる。(An)
混成メソ構造(Hybrid mesostructures)
無機と有機の混成材料は、長い周期性(メソ構造)を持つ局所的に 相分離した構造を形作ることがある。これらは、触媒反応から 光学に至るまで応用上興味深いものである。Templinたち (p.1795)は、シリカ前駆物質を組み合わせて適当なブロック共重 合体を選択することにより、高分子鎖の長さで決定されるような スケールのある範囲の微細構造が得られることを示している。 微細構造は、ブロック共重合体の相図によって決定される。この 方法は、潜在的に、ある範囲の組成の材料と 100nm までのスケ ールの長さにまで拡張することができる。(Wt)
Stat3の制御分子(Regulator for Stat3)
多数のホルモンやサイトカインと細胞表面の受容体との結合は、 Stat(転写の信号伝達と活性化因子)という転写制御因子の活性の 変化によって、遺伝子発現の変化を引き起こす。インターロイキ ン-6や上皮細胞成長因子やホルモンleptinという類の受容体が全 てStat3の活性化に関連している。Chungたち(p.1803)は、 Stat3と相互作用し、Stat3を制御する分子を特性つけた。この 分子は、PIAS3(活性化STATのタンパク質阻害薬)と名付けられ、 Stat3の活性型と付随する。PIAS3との付随がDNA結合および Stat3による転写活性化を抑制する。Stat1はPIAS3に結合世ず、 変化されないため、この効果がStat3に特定である。(An)
混ざった信号(Mixed signals)
最近の証拠によれば、発ガン性の小さなグアニンヌクレオチド 結合タンパク質Rasの活性化した変異種はホスト細胞に複数の 信号を送り、そこでは異なる--むしろ矛盾した--信号を増進 する。無制御な細胞の成長を起こすには癌遺伝子は細胞分割を 促すだけでなく細胞死を抑制するのであろう。Mayoたち (p.1812)は、活性化したRasが形質転換細胞の死を回避させて いるメカニズムを調べた。Rasは転写制御因子NF-κBを活性化 するが、これはアポトーシスを阻止する。NK-κB活性の阻止に よってRasのこの効果を除去すると、Rasからのアポトーシスを 促進する信号を優勢にし、活性化Rasを発現しているRat-1細胞 での細胞死を促進する。腫瘍形成をさせる癌遺伝子からの色々な 信号の間の均衡を理解することによって、癌性細胞の成長を阻止 したり、細胞死を促進したりする戦略を明らかにするであろう。 (Ej,hE)
物理ニュース:光波長で作動する光素子 (Photonic Crystal Made to Work at an Optical)
電子に比べて光の方が遥かに速く情報を伝達できることは周知の ことであるが、光の入出力は電子的手法で行われている。しかし、 最近の光による光制御素子の開発によって光革命が起きるかも知 れない。しかし、まだ、その変調性能は、電子回路に比べて数桁も 小さいが、MITの研究者たちはx線リソグラフィーによって光波長 で作動する光素子を初めて作った。その結果は11月13日号の Natureに掲載されている。(Ej)
天文ニュース:太陽系外のダスト円盤を持つ星 (Dust Disks May Point Way to Exoplanets)
【オランダ、ユトレヒト発】伝統的には、天文学者たちは、惑星が 形成されるときには、その回りにはダストを残さずに、天体に吸収 されてしまうであろうと考えていた:従って、ダストの円盤がある と言うことはその天体系に惑星がない証拠であると思われていた。 しかし、Cancer星座中の、太陽に似た暗い55 Cancriには、従来 1つか2つの巨大惑星を伴っていると思われていたが、研究者たち はダストの円盤を見つけた。どうも、惑星とダスト円盤とは共存可 能らしい。(Ej)
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