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- 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約
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Science March 21, 1997, Vol.275
門番からの信号(Signals from the gatekeeper)
腺腫性多発結腸ポリープ(adenomatous polyposis coli=APC)の腫瘍抑制タンパク 質は、まだよく解明されてない情報伝達機構によって、結腸上皮の分裂中や瀕死 の細胞の適切なバランスを保つための門番としての機能を持っていると思われて いる。APCは、転写制御因子のTcf/Lefファミリーによって仲介されて転写を活性化す るタンパク質であるβカテニンなどのいくつかの結合パートナーを持っている(Peiferによる展望 記事参照、p.1752)。Korinekたち(p.1787)およびMorinたち(p.1784)は、正常細 胞においては、APCはβカテニンによって転写活性を下方制御し、この重要な制 御機能は、大腸癌細胞におけるAPC自身やβカテニンの変異によって阻止されるこ とを示した。Rubinfeldたち(p.1790)による関連した研究によると、類似の変異性 メカニズムによる情報伝達経 路の破壊が、黒色腫の起源にも重要な役割を演じていることが示唆されている。( Ej,Kj)
パリティ違反(Parity violations)
1957年に、核のベータ崩壊がパリティ違反(パリティの非保存)を示すことが見出された。これは、あ る素過程において生じる素粒子は、左手系と右手系(核スピンのような)とを示す素粒子の数が等しく ないことを示している。あわせて、パリティ違反と電荷は、原子核における「アナポール」モーメント に導かれるであろうことが予言されていた。Wood たち(p.1759; Haxtonによる展望 p.1753も参照 のこと)は、セシウム原子におけるパリティ非保存の遷移について、素粒子物理学の標準モデルの検証 となりうる精度でそのアナポールモーメントを測定した。(Wt)
巨大な波(Giant waves)
固体中の伝導電子は、電荷の欠損に応じて再配置しうる。スクリーニングと呼ばれるこの効果により、 電荷密度における長距離におよぶ Friedel 振動が発生する。Sprunger たち(p.1764) は、走査型 トンネル顕微鏡(STM)を用いて、ベリリウムの(0001)面を研究した。これを選んだ理由は、この表 面は、ほとんど半導体的であるバルクの固体の頂上に乗っている2次元電子ガスのように振る舞うであ ろうことによる。電子密度の振動は、まさしく Friedel 振動の周波数で観測されたが、その振幅は通 常は大きなものであった(この大きさは、土台をなすベリリウム原子の格子像を見ることができないほ どのものである)。この大きな振幅は、Friedel 振動とは異なり、これらの波は多体効果がその元とな っているに違いないことを示唆している。(Wt)
すべて列をなして(All in a row)
ネマティック液晶中に分散した小さな水滴は、合体せずに鎖状の構造に伸びることが見出されている。 Poulin たち(p.1770; 表紙と Joannyによる展望 p.1751 を参照のこと)は、短距離範囲の斥力と 長距離範囲の双極子による引力が相互作用して、この効果を発生することを示している。これは、位相 幾何的な欠損の立場からモデル化することができる。(Wt)
局所的な取り引き(Dealing locally)
磁性と超伝導性は固体内部においては競合しており、例えば、磁性不純物によっ て、超伝導状態に移る転移温度を急激に低下させる。Yazdaniたち(p.1767)は、超 伝導体(ニオビウム金属)における局所的な磁性不純物(吸着マンガン、あるい はガドリニウム原子)による効果をSTM(走査トンネル顕微鏡)による高解像の微 分伝導度スペクトルとして得た。それによると、不純物原子の回りの数原子半径 の領域の超伝導ギャップ中に励起状態が存在している。スペクトルは電子やホー ルのトンネル現象に対して非対称であり、モデル計算によれば、これは時間軸に 関する対称性破壊に起因する。(Ej)
過剰放射(Radiative forcing)
2つの研究報告が地球大気の放射全体の収支に及ぼす気体の種類の影響について 焦点を当てている。Valeroたち(p.1773)は、赤道帯の太平洋上空を協調して計測 飛行した3つの測定データを利用して、晴天の日の水蒸気による温室効果を測定 した:即ち、雲のない時、水蒸気の放射強制が海の表面温度と高度の関数としてどう 関連しているかについて。Hobbsたち(p.1776)は、人間の活動に起因するエアロゾ ルによる過放射を調べた(過放射とは、radiative forcingの訳で、ある現象が 存在しない状態での放射に比べて、その現象が存在した ために生じた放射の増加分を指している)。ブラジルにおける生物(バイオマス)の燃焼で生じ たスモークの空中測定によれば、直接的過放射の効果は温室効果を生じるガス の効果に比べて小さいと思われる。(Ej)
インフルエンザの病原性(Influenza virulence)
1918年に勃発したインフルエンザは、スペイン風邪として知られており、2千万 人以上が死亡した史上最悪の汎発性の病気である。Taubenbergerたち(p.1793;お よびPennisiによるニュース解説p.1739)は、インフルエンザウイルスが存在して いた流行初期の段階で死亡した人の保存肺の試料から得られたウイルスのRNA断片 の配列を決定した。その解析結果によれば、その系統は昔から知られているブタ インフルエンザウイルスに近縁のH1N1サブタイプで、トリのサブグループとは異 なっていた。このような配列データは、将来の病原性の勃発の予測に役立つであ ろう。(Ej,Kj)
自然にうまく見えている(Best viewed naturally)
ニューロンはどうやって情報を表すのか?。ニューロンの出力は活動ポテンシャル の発火に限定されており、これはよく知られているようにスパイク状で、その重要パラメー タは、スパイクの数と頻度である。しかし、時間関数としてのスパイクの変化に よって、スパイク間隔と、このパラメータの変動、と言う他の重要因子を導くことが出来る。 Van Steveninckたち(p.1805)は、ハエの視覚ニューロンに、靜的イメージ(実験 室のような)を見せたときと、変化する(自然な)イメージを見せたときの、こ れらのパラメータを解析した。これらのデータを情報理論的に測定した結果、自 然な刺激が与えられている時の方が、より再現性の高い活性を示し、はるかに高い S/N(信号/雑音)比をニューロンが示すことが示された。(Ej,Kj)
底部マントルの導伝性(Electrical conduction in the lower mantle)
底部マントルに関する電気伝導度は貴重な情報であり、その化学的性質を知る上 で重要である。伝導度は鉱物の組成や欠陥の状態に敏感に依存する。Dobsonたち( p.1779)は、底部マントルに相当する高圧、高温状態での(Mg,Fe)Oの電気伝導度を 測定した。従来の測定では、Fe2+=Fe3+による小ポーラロンによって伝導度が支配 されていると思われていたが、大ポーラロンによる伝導性の説明の方が、より適 していると述べている。(Ej)
アメリカの南極科学基地(American scienctific base at South Pole)
老朽化したアメリカの南極科学基地を作り替える話が進んでいる。Mervisのニュー ス解説(p.1732)によると、この基地は、滑走路を持ち、夏には現在と同じ110人規 模、冬季には、現在の倍の50人が滞在できる「豪華でない」施設を作る計画であ る。今までの$70 Million/yearの大型予算から、$20 M/y に縮小されると言うが、 活動内容は気象観測、天体観測、その他の研究を支援するだけでなく、各国が領 有を主張する南極大陸に、存在し続けることの意味も持っている。(Ej)
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