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- 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約
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Science June 28, 1996
コレラにおけるバクテリオファージの役割(Role of bacteriohpage in cholera)
糸状体ファージは病原性因子をコードすることが解った。WaldorとMekalanos(p.1 910;ニュース解説参照p.1869)は、ファージがコレラ毒素の構造遺伝子をコードする ことを示した。ファージの感染は消化管で起きる。この受容体は、毒素と一緒に調節 される「線毛」と呼ばれる腸の定着因子である。ファージは腸で定着する菌株 に選択的に感染するから、遺伝子治療ベクターとして有用であることが証明される かも知れない。多くの臨床的に関連した病原体が類似の「線毛」を発現することから 、これらは病原性に関連するファージの受容体として機能する可能性を示している。 (Ej,Kj)
一人前の星とも呼べず( Not quite a star)
天文学者達が、 Gliese 229 Bを一つの褐色矮星として 明確に同定できたため、この天体を星と惑星との中間的な存在 にした要因は何かを定めることに対して大きな 関心が集まっている。Marley たち (p. 1919)は、 Gliese 229 Bのメタンのスペクトルと木星大気の 進化モデルを用いて、この天体の質量と年令を評価した 。加えて、彼らのモデルは、波長4ー5ミクロンで輻射フラックスが 増加することを予言しているが、この 波長帯は観測家が他の低温天体の探索で使う場所でもある。(Wt,Nt)
er tunneling barrier. 原子的伝導体( Atomic conductors )
未来のデバイスの適用に当たっては、ナノメーター構造 あるいは原子レベルの構造を通しての電子輸送に ついての理解が要求されるであろう。 Yazdani たち (p. 1921; Muller and Reedによる展望p. 1901も参 照のこと)は、走査型トンネル顕微鏡の先端とニッケル の表面との間に保持された、一個のキセノン原子あ るいはキセノン原子の一対の電気抵抗を測定した。 理論計算は正確に、観測される抵抗を予測し、また、 非共鳴的伝導が6sの電子レベルの末尾を通して生 じていることを示している。(Wt)
クラスター生成( Cluster creation )
二つの報告において、あたらしいナノメーター構造の 合成方法について焦点をあてて述べられている。 Ahmadi たち (p. 1924)は、プラチナ粒子の形態 は、コロイド合成において、キャップ材料である、ナト リウムポリアクリレート(sodium polyacrylate)の 濃度を変化することにより、制御できることを示した。 Xie たち(p. 1926)は、ナノメーターサイズの結晶構造 を持つ窒化ガリウムを合成した。これは、青緑 のレーザーダイオードへの応用がある。この合成方法 は、水のかわりにベンゼンを用いることを除いては 、熱流体的合成法に類似のものである。六面体の相 に加えて、彼らはまた、通常はバルクのサンプルでは 高圧下においてのみ見られる岩塩構造の相を作成した。(Wt)
量についても語る(Speaking volumes)
堆積物中のプランクトンの酸素の同位体比は、水温と、氷床として蓄えられた水の量 、つまり大洋の酸素同位体比率に影響する水量、の両方を反映している。 Schragたち(p.1930;およびBroeckerによる「展望」p.1902)は、 深海の掘削コアの空隙水を分析し、 温度に依存した分別が起きていない、氷の量に関する部分の信号を取り出した。その 結果、最終最大氷期間の大西洋深部の水は、現在より4゜C冷たく、氷床の発達によ って大洋の同位体比を1/mil(1/1,000,000)だけ変化させた。(Ej,Kj)
T細胞のCD28とHIV-1感染(CD28 and HIV-1 infection of T cells)
CD4+ T細胞はヒト免疫不全ウイルス1(HIV-1)の主要感染部位であるが、すべての 細胞が感染するとは限らない。免疫再構成や遺伝子治療の為に、非感染細胞のポリクロ ーン性増殖を刺激しようと試みても、通常、感染した細胞をも刺激してしまい、うま く行かない。Levineたち(p.1939)は、固定化した、対CD28細胞モノクローン抗体で、 感染者由来のT細胞をすべて同時に刺激すると、HIV-1のウイルス負荷が軽減したこと を示した。同様な、非感染ドナー由来のT細胞の刺激は、HIV-1感染に対する抵抗を 示した。(Ej,Kj)
マクロファージとHIV-1(Macrophages and HIV-1)
単離された異なったHIV-1は、異なったCD4+細胞への感染能力に差があるが、 これは、特定の融合補助因子と相互作用するエンベロープ糖タンパク質の違いに 依存している。 最近その、T細胞補助因子がfusinと同定された。Alkhatibたち(p.1955; および、 Balterによる先週のニュース解説p.1740)は、マクロファージの補助因子が、 chemokines RANTES, MIP-1[α], MIP-1[β]のGタンパク質結合受容体である CC CKR5であることを示した。 これら補助因子の同定によって、なぜ人によっては何度もHIVに曝されながら 感染しないのか、 は、CC CKR5が発現に発現レベルを様々に変えることで説明出来るかも知れない。 さらに、 このことは新たな治療戦略、小動物感染モデルへと発展するかも知れない。(Ej,Kj)
洞窟居住者(Cave dwellers)
良く知られた光独立栄養プロセス(光合成に基づく栄養循環プロセス)ではなく、硫化 水素 からのエネルギー利用の生物体に基づく、深海の熱噴出口、淡水湖熱噴出口、地表の温 泉 などに於ける生態系が今まで明らかにされてきた。Sarbuたち(p.1953)は、新谷ルーマニ アの洞窟で 見つかった小さな陸生の生態系である、第4の化学独立栄養プロセスを追加した。こ の石灰地形系において、多様な動物相、その多くは固有相、は、化学独立栄養系の1 次生産者を食べることで支えられている。(Ej,Kj)
シグマ因子の葉緑体移入(Chloroplast import of sigma factor)
葉緑体ゲノムは、RNA転写装置を構成する様々なタンパク質のすべてをコードしているが 、 プロモーター選択性に影響するシグマ因子はコードしていない。田中たち(p.1932)は、 今まで見つからなか った遺伝子は葉緑体の中にあるのではなく、核ゲノムにあることを見つけた。核内遺 伝子生成物は、その配列がラン藻のシグマ因子に類似しており、葉緑体に移入される 。この、遺伝子の異常な分布は、真核生物細胞が進化する過程で原始的な内部共生体 から宿主核のゲノムへと遺伝子が伝達してことを表しているのかも知れない。(Ej,Kj)
視覚学習のための画像表現(Image representations for visual learning)
画像合成問題は、適当な少数のパラメータを利用して画像を表現することを目指し、 また、画像認識問題は、与えられた画像から適当なパラメータを抽出しこれを元に画像 の特性を記述する古典的な課題である。1980年以来、両方の分野の研究者は、画像に 物理的なモデルを使うことで、両アプローチの中間的なモデルを利用してきた。最近 になり「代表的な画像」そのものを基底として利用する方法が開発されて 来ている。Beymer and Poggio(p.1905)は、この基底ベクトルとして、従来の「単なる 代表画像」ではなく、物理的に意味のある代表画像、例えば、首を少し左右に振った 2枚の顔画像を基底とすることにより、各基底ベクトルを低次元(たった2つの画像の 間に張られた基底として)で表現し、結果として少数の「学習画像」で基底を作る ことに成功した、と報告している。それによると、少数の学習画像サンプルで基底が 構成出来るだけでなく、各基底に意味を持たせることが出来、任意の顔画像、例えば、 モナリザにしかめっつらをさせることが出来る。(Ej)
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