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- 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約
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Science December 15, 1995
半導体溶液 (Semiconductor solution)
ほとんどの半導体は共有結合、非分子性固体であり、これらの結晶は溶融状態からか あるいは気相から、通常高温状態で成長する。Trentlerたち(p.1791)は、有機溶剤に 溶けた試薬から、ガリウム ヒ素の様なIII-V族物質結晶を200度C以下の低温で成長 させる方法について報告している。これらの結晶は最大、数マイクロメーターまでの 細いウィスカーを形成する。
フォトリフラクティブ(光屈折性)液晶 (Photorefractive liquid crystals)
適当な幾何学的関係でレーザー照射してやると、フォトリフラクティブ物質の屈折率 は変化するが、この効果はホログラフィーや光信号処理に有効である。通常電場の存 在下で2つのレーザー光(twin laser)を与えてやると電荷が発生し、これが電場によ って移動(変位)する。この電荷は、屈折率の格子を作ることが出来、2つの光線の 間の光の強度を変化させる。Wiederrechtたち(p.1794)は、弱い電場や弱い光でも働 くような強いフォトリフラクティブ物質を作るために、ネマティック液晶混合液をエ レクトロンアクセプターとドナーでドープした。
アルドラーゼ抗体 (Aldolase antibody)
アルドール縮合はケトンをアルデヒドと反応させるが、これは、有機化学の中では最 も基本的なカーボン=カーボン結合形成反応である。この反応を起こす多くの方法が 存在しているが、このためには通常、化学量論的試薬と保護基を必要とする。Wagner たち(p.1797)は、上記反応によって、クラスIアルドラーゼに基づいて、多種類のア ルデヒドとケトンをこの反応で結合させる触媒抗体(catalytic antibody)を合成した 。これら抗体は、Wirschingたち(p.1775)の研究記事に詳しく述べられている、反応 化合物を使った免疫によって作製された。
超新星ショック (Supernova shock)
OHのメーザー線状放射は、超新星に伴う衝撃の跡を追っているものと思われていた。 Yusef-Zadeh たち(p.1801およびFukuiによる解説p.1771)によると、この放射は、銀 河の超新星跡(G359.1-0.5)と、それを取り囲む分子ガスリングの間の境界面に沿って いる、と検出結果を報告している。分子性ガスとOHメーザー線の速度比較から、衝撃 放射は、超新星の跡の腕(limb)のCO物質に関連していると見られる。
米の耐病性 (Disease resistance in rice)
米の病気に対する分子レベルの理解が深まると、米の栽培はより容易になろう。Song たち(p.1804,およびShimamotoによる解説p.1772)は、イネ白葉枯病菌(Xanthomonas o ryzae)の亜類型(subtype)に耐性である、単子葉類の米の遺伝子をクローン化した。 実質的にはすべての穀物種がこの細菌病原体のある種に感染させられている。この遺 伝子から予測されるタンパク質生成物の配列からは、受容体キナーゼの可能性を示唆 する。この遺伝子は遺伝子族の1つで、最近双子葉類で同定された耐病性遺伝子にあ る程度似ている。
目の中の細胞の運命 (Cell fate in the eye)
発生中のショウジョウバエの複眼の中で、複眼を構成する1つ1つの個眼のfat遺伝 子でコードされるタンパク質が、複眼を構成する1個の目の光受容体細胞が8個以上 出来るのを防ぐ役目を果している;突然変異体は、余分な異所性光受容体細胞を持っ ている。Huangたち(p.1842)は個眼のFatタンパク質はユビキチン(ubiquitin)に依存 するプロテアーゼであることを示した。このプロテアーゼは、発生過程で、眼細胞中 の細胞数を特異的に制御する物質のレベルをコントロールしているのかも知れない。 この結果は、脱ユビキチン化酵素が特異的タンパク質のレベルをコントロールするこ とが出来、ユビキチン化状態によって定義されるタンパク質の安定性が発生に関わり 合っていることを示している。
HIV抑圧者 (HIV suppressors)
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)に感染した個人からの活性化CD8+リンパ球は、HIVを抑制 する可溶性因子を分泌する。Cocchiたち(p.1811)は、細胞検定システムを開発し、抑 圧因子の主要成分としてRANTES, MIP-1α, MIP-1βの3つのケモカイン(chemokines) を同定した。感染した細胞内でのHIVの複製は、これらケモカインの組換えられた形 によって抑制されうる。
可変構造 (Variable structure)
抗原は、T細胞受容体(TCR)に結合しているペプチドフラグメントとしてT細胞によ って認識される。Fieldsたち(p.1821)は、TCRα鎖の可変(V)領域の構造を決定し、こ の鎖がβシートの異常な結合を示した。この結果と、以前決定した可変βドメインの 構造を使って、VαVβ会合のモデルを作った。
染色体の順位 (Chromosome order)
細胞分裂前中期に、車輪の輪またはロゼットの形をした染色体が短時間見られる。Na geleたち(p.1831)は、この前中期に染色体の順番を調べ、ロゼットを横切って互いに 相同なものが存在していることを見つけた。彼らのデータは更に、染色体が反平行な 2つの単相の組にグループ分けできることを示唆している。
偏った反応 (A biased response)
免疫反応の性質はTヘルパー(TH)細胞に支配される。もし、TH1細胞が占有すると、 その結果細胞性免疫となるが、TH2応答だとアレルギー病のように免疫グロブリンE が生産される。応答をTH1タイプか、あるいはTH2タイプの方向かに偏らせる初期の出 来事の解明に大きな努力が払われている。Yoshimotoたち(p.1845)は、そのような出 来事の1つを同定した。NK1.1マーカーの発現によって区別される小数のT細胞は( 1マーカー)、抗原感作直後にインターロイキンー4を生産した。このサイトカイン はTH2応答の発達に好ましい条件を確立するのを助ける。
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