AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science November 24, 1995


神経細胞発達におけるバランスの役割 (Balancing act in neuronal development)

正常に神経細胞が発達する為には、アポトーシス(apoptosis)を経由して死滅するシ グナルを受け取るたくさんの神経細胞の存在が必要である。Xiaたち(p.1326)は、ア ポトーシスを制御する上で重要な、細胞外部の沢山の刺激によって活性化されるマイ トジェン活性化タンパク質(MAP)キナーゼの役割を明らかにした。神経細胞成長因子を 奪われた褐色細胞腫(pheochromocytoma)細胞内でMAPキナーゼファミリーの2つのキ ナーゼがアポトーシスに関して、互いに反対の効果をもっている。成長因子によって 活性化されるMAPキナーゼであるERKの活性はアポトーシスを抑止する一方、環境から 来る様々なストレスによって活性化されるMAPキナーゼであるJNKの活性はアポトーシス の働きを促進する。このような2種類のシグナル経路の活性のバランスが、これら細胞 の生存を制御するうえで決定的な役割を演じている。

ホッピング陽イオン (Hopping cations)

結晶性固体中での陽イオンの拡散は、粒界成長、イオン伝導度、相分離など多くのプ ロセスを制御している。XuとStebbins(p.1332)は、2次元核磁気共鳴法を使ってLi(4 )SiO(4)中のLi+(原子量6)のホッピングを追跡した。この方法によって、その割合と 、結晶中の特定サイト間の活性障壁を直接測定出来る。

地球のハロに棒状模様が (Barring Earth's halo)

地球の紫外線像には、地球磁力線と太陽風の相互作用によって発生するオーロラ状ハ ロが見られる。また、しばしば正午の磁極上を真夜中の方向に向かって走る連結棒状 のパターンが見られる。この棒状オーロラ、あるいはθ-オーロラ、は惑星間磁場(IM F)が北を向いている時生じると考えられてきた。NewellとMeng(p.1338)はこれに対し て、IMFが長い間北を向いていた後、南向きに反転したときにθオーロラが出来るこ とを示す衛星のデータを紹介している。

紅海のオープニング (Opening the Red Sea)

紅海は大陸の分裂が新たな海盆を形成している例である。海底拡大は南で始まり現在 では北方に移動しているが、初期の分裂発展に関する知識は大陸分解モデルをテスト するのに不可欠である。OmarとSteckler(p.1341)によるフィッショントラック法年代 測定研究の結果、地殻の最初の分解に伴い、3千4百万年前に始まる2つの関連した 急激な上昇運動、侵食そして将来の紅海の方向への拡大があったことを示している。 プレートは南から北に向かって開いて行ったのではなく、剛体が北の方に折れ曲がる ように開いた。

おとりを非活性化 (Deactivating decoys)

ウイルスに感染した細胞は細胞毒性Tリンパ球(CTL)によって破壊される標的で ある。Meierたち(p.1360)によれば、突然変異は、HIVに感染した細胞がこの免疫反 応を回避するのを助けると言う。CTLの活性化にはT細胞受容体とヒト白血球抗原ク ラス1表面複合体が、ウイルスペプチドを含む感染した細胞の上で相互作用すること が必要である。標的ペプチドとほんのわずかばかり異なるペプチドを持つ複合体 提示することによって、CTLを不活性化あるいはアネルギー化(反応低下)す ることが出来る。従って、感染した細胞は壊されてしまうよりは、実際CTLを不活性 化している。このCTLは、もしかしたらHIVの異形を持つ細胞を破壊していたのかも知 れない。

ステロイド強化剤 (Steroid enhancer)

ステロイド受容体は、ホルモンに反応して遺伝子を調節するリガンド誘導転写因子の ファミリーを形成する。Onateたち(p.1354)は、リガンド依存の形式で、種種のステ ロイド受容体の転写活性を強化するSRC-1(steroid receptor coactivator-1)タンパ ク質を分離し、その特質を明らかにした。SRC-1の強化活性はステロイド受容体に限定し て いるように見える。また、SRC-1の先端を切り取った形の物(truncated form)は、負の リプレッサーの役目をし、いくつかのステロイド受容体のホルモン誘導による転写活 性を抑止する。

それほどの痛みを伴って (Taking such pains)

モルヒネのようなオピオイド(opioid)鎮痛薬は、鈍くて継続する痛みを遮断する事が 出来るが、針で刺したような急激な鋭い痛みには効果がない。Taddeseたち(p.1366) は、ラットの歯の髄に痛みの反応を起こす痛覚神経細胞のパッチ鉗子(patch clamp)試験を行った。μオピピド受容体の活性化は、永続的な痛みの信号を伝達する小 さ くて低速伝達の痛覚神経細胞のカルシウムチャンネルを阻止するが、初期の鋭い痛み の反応を伝達する大きくて高速伝達の痛覚神経細胞には効果がない。

神経細胞活性と癒着 (Neuronal activity and adhesion)

神経系の発達は、細胞表面に存在している接着と認識を司る分子による細胞相互作用 と神経細胞活性の両方によって調整されている。Itohたち(p.1369)は、マウスの後根の 神経節から採られた神経細胞が神経細胞成長の前に特定の周期で刺激さ れると、神経細胞接着分子L1分子の発現、およびこれら神経細胞の他のタイプの細胞 への接着が減少した。ほかの周期での刺激や、あるいは、神経細胞発生後では L1発現や細胞間接着は変化無かった。ある種の神経細胞活性化が、発達する神経系の パターンを形成するのに役立つ特定の接着分子の発現を調節することが出来る。

クリップがはずれる (CLIP unclips)

主要組織適合遺伝子複合体(MHC=Major Histocompatibility Complex)のクラスII 分子は 、 外因性抗原由来のペプチドを提示する。新たに合成されたクラスII分子は 、不変な鎖として知られているポリペプチドによって外因性ペプチドに結合しないよ うになっている。ことに、CLIPの断片(クラスIIに関連する不変鎖ペプチドのための )はペプチド結合溝をブロックする。CLIPが取り除かれて外因性ペプチドと結合する メカニズムはよく分からない。最近の証拠によると、非古典的MHC分子であるHLA-DM の役割を指摘しているが、DM陰性細胞中での分子の一部は正常に発現している。Krop shofer たち(p.1357)は、CLIPの自己放出が適当な条件で生じることを示している。 自己放出はエンドゾームpHで起こり、溝の外に存在するアミノ末端セグメントによって 触媒される。
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