AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science July 21, 1995


ハンチントン病のタンパク質機能 (Protein functions in Huntington's disease)

ハンチントン病(HD)は,主要な神経退化による不整であるが、これは、タンパク質hun tingtinのためのHdh遺伝子の1つにCAG鎖の余分な繰り返しが含まれている。そのた めタンパク質のポリグルタミンのアミノ基末端が長くなっている。この欠陥の為に正 常なタンパク質と相互作用する上で、機能の欠落が生じたり、新たな機能を獲得した りする。Duyaoたち(p.407) は、マウスにおける相同Hdhを不活性にし、ヘテロ接合マ ウスの表現型は正常であるがホモ接合マウスは神経システム形成に先立つ胚成長過程 で死亡することを見つけた。これらのことからヒトのHD欠陥は機能の余分な獲得にあ ると推測している。


小さな移動スイッチ (A small moving switch)

電子回路が原子のサイズにまで縮小されたら電気伝導度は量子化され、スイッチが電 流をオン・オフさせるベースができる。Smith(p.371)は、点接触型量子スイッチを作 った。金をメッキしたニッケル線の先端を隣接する金の表面の近くでピエゾ素子で動 かす(走査型トンネル顕微鏡の様に)。たった2オングストローム動かすだけで電導 状態をスイッチすることができ、これには1原子のみが関わっていると思われる。


不揃いからもっと光が (From disorder comes more light)

ポリマーLEDが実際の応用に使われるかどうかは、その素子がどのように作られるか に依存する。発光層として良く使われているPoly(p-phenylene vinylene)(PPV)は通 常高い結晶度に作られる。そのため、フィルム状にすることが難しく、かつ、発光を も制限しているようだ。Sonたち(p.376)は、シス接続を分子の鎖に導入して柔軟性を 増加させる合成方法を報告している。この材料を使って合成したLEDは良い効率を示 し、現在のPPV LEDより高い電流密度を達成できる均一なフィルムを作ることが出来る。


涼しいが、敏感な (Cool but sensitive)

花粉の記録や、雪の境界線の復元、あるいは、同位元素のデータは、最終氷河期(LGM )に熱帯性気候が大きな気温低下があったことを示しているが、最近の海水表面の温 度復元は、熱帯の温度低下は殆ど無かったことを示唆している。Stuteたち(p.379)は 、ブラジル低地の地下水で炭素14による年代の解った水から得られた稀ガスを分析 し、この地域はLGMの期間5度以上涼しかったと結論した。北緯40度から南緯40 度のアメリカ大陸は同様な寒冷効果を経験しているようだ。


アマゾンの海路 (Amazonian seaways)

中新生の頃、(800万年‾1000万年前)南アメリカでは海水面は今よりも高く、大陸内 部では洪水に見舞われていた。Raesaenenたち(p.386,およびWebbによる解説記事p.36 1)によると、ブラジルのアマゾン地区にあるAcreの細粒堆積物の特徴は近くのアンデ スからの河川性と言うより潮汐性だと言う。粒子の沈澱パターンは潮汐流を示してい るし、鮫の歯を含む海洋性の化石が見つかった。内陸から海路への洪水で、現在類似 の流域で見られるより、更に海洋性の生物種に富むアマゾン川流域を形成していたよ うだ。


修了させる方法 (Means to the ends)

真核細胞のDNAの両端を安定化させるテロメア(末端小粒)は、リボ核タンパク テ ロメラーゼによって合成される、繰り返しの多いDNA配列を含んでいる。Cohn & Blac kburn(p.396)は、通常の配列のテロメアを持つ酵母Saccaromyces castellii と、異 常なテロメアの配列を持つ酵母 S. cerevisiae の2つの酵母から、試験管内でテロ メラーゼの活性を再構築した。s. cerevisiae 活性は、通常は必要な EST1 遺伝子な しでも再現できること;ゆっくりと、しかも度々反応を停止させることで、配列の異 常性が増すようだ。


毒性の検査 (Scanning for virulence)

バクテリアの毒性の原因となる新しい遺伝子を高速に同定する方法がHanselたち(p.4 00)によって開発された。挿入突然変異誘発(insertional mutagenesis)の構想では微 生物からの(ここではSalmonella typhimurium)トランスポゾン突然変異体に、同定用 のDNA配列で印をつける。突然変異体はプールされ、マウスの接種剤として利用され る。接種された突然変異体から抽出され増幅されたたDNAと、接種3日後のマウス脾 臓からのDNAの比較から、inv/spa ファミリー以外の新しい毒性遺伝子の同定が可能 になった。


今やすべてを統合して (Altogether now)

環境性ストレス、成長因子、及びサイトカインがc-fosなどのごく初期の遺伝子の発 現増強を刺激する。この遺伝子発現は三重複合体因子(TCF)が血清応答エレメント( SRE)において血清応答因子(TCF)と結合することによって仲介される。Whitmarsh( p.403)たちは、tcfタンパク質の1つであるElk-1がマイトジェン活性化タンパク質 (MAP)キナーゼのJNKおよびERK群のいずれによってもリン酸化されることを示す。 このリン酸化はDNA結合、三重複合体形成、および転写活性を活性化する。したがっ て、Elk-1のリン酸化はMAPキナーゼシグナル経路、並びに各種刺激に対する応答を統 合する。


シナプスの発見 (Finding the synapse)

神経筋連接点では、ニューロンがシナプスという特異領域において筋肉細胞と接触す る。Martinたち(p.413; Hallたちによる解説p.362参照)は、特定の分子がどのよう にしてシナプスに特異的に存在するのかを調べた。そのうちの1つはシナプスに存在 し、他方はシナプスに存在しない2つのラミニン(細胞を結合する細胞外マトリック スに見られるタンパク質)からのキメラ分子を作成することによって、シナプスへと タンパク質を正しく向かわせるのに必要なタンパク質領域を同定した。さらに、この 領域には運動ニューロンが接着することが知られているトリペプチド配列を含んでいた 。


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