AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約 |
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細胞表面免疫グロブリン(mIg)は、Bリンパ球の表面で抗原に特異的な受容体として 働く。2番目の(共刺激)信号がない状態でmIg経由で最初の信号が来ると、Bリン パ球は応答せず、多分死滅する。ではB細胞が体の中を回っている抗原に出会ったと きに、何がmIg信号を阻害し、その結果免疫応答を不活化しているのであろうか?こ れに、Doodyたち(p.242)はmIgと関連する分子、CD22、が寄与しているのではないか と推察している。CD22はSHPに結合し、かつ、活性化させる。このSHPはフォスファタ ーゼの1種で、mIgを経由する信号をネガテイブに制御している。mIgからのCD22分離 は、ヘルパーT細胞上の受容体によって仲介されているのかも知れない。このヘルパ ーT細胞は共刺激信号をも伝達している。
もっとも新しい氷河期が衰退する期間についての詳細な記録は沢山得られている。例 えば、グリーンランドや南極の掘削アイスコアなどがある。少なくとも、記録の期間を 示 す共通の時間のスケールがあれば、これらのアイスコアのデータから地球規模の気候 変動を理解する基礎が得られる。SowersとBender(p.210)は氷の中にとじこめられて いる酸素の同位体を利用して、グリーンランドと南極のアイスコアの層のマーカーを 作った。両者の比較によれば南極の温暖化と大気中のメタンと炭酸ガスの増加はグリ ーンランドの温暖化より3000年も前に始まっている。
メチルクロロフォルム(Ch(3)CCl(3))の排出は人工の温暖化ガスであるが、これはモ ントリオール議定書で規制されている。Prinnたち(p.187、RavishankaraとAlbritton の解説も参照,p.183)によればCH(3)CCL(3)の排出は1990年中ごろより減少してい る。このガスの減少と水酸基(ヒドロキシル)ラジカル(実はこれが重要なスカベン ジャーなのだが)の濃縮の関係が議論されている。
タンパク質が完全に伸びきってしまう前の準安定な形状を天然のチトクロームCとの 水素交換実験で研究した。Baiたちによると(p.192)、畳まれた形状が徐々に伸びて行 く各ステップには、これに協力的な構造単位が関係している。この構造単位はループ か、互いに助け合って、安定化する螺旋とループからなるペアである。
通常ボゾンと呼ばれている粒子は、その従姉妹に当たるフェルミノンと呼ばれている 粒子とは全く異なる振舞いをする。電子のようなフェルミオンは、同じ量子状態を避 ける。それに引き換えボゾンは超流動のヘリウムの様に同じ状態を好む。理論的に、 ボゾンは、適当な条件の元では単一の量子状態に凝縮する。これをボーズ=アインシ ュタイン凝縮と呼ぶ。この捕えどころのない状態は15年に渡って捜索されてきた 。ついにAndersonたちは(p.198)、磁場と光の場に閉じ込められたルビジュウムの原 子蒸気のボーズ=アインシュタイン凝縮の存在を実験的に証明する報告をした。解説 記事でBurnett(p.182)が述べているように、このような状態を作り出すことが物理学 の基礎的な研究に新たな展開を与える。この研究の背景とコメントはTaubes(p.152) のニュース記事を参照。
マントルの深部では、溶融したマントルの密度は個体のそれよりも大きいかも知れな いと思われている。その理由は高圧下における溶融状態での構造と成分の変化からで ある。Suzukiたち(p.216)は、20ギガパスカルにおいて、単純なマントル溶融体の 中ではダイアモンド結晶は浮かぶことを実験的に示した。これから推測できることは 、ダイアモンドは地球の500キロメートルの深さの所に集積しているかも知れない と言うこと。
各種CD1分子が多くのタイプの細胞表面上に発現する。これらCD1分子は主要組織適合 性遺伝子複合体(MHC)タンパク質とある程度の類似性を示すが、その抗原提示におけ る機能は良く解ってない。Castanoたちは(p.223)マウスCD1分子が芳香族またはかさ 高な疎水残基を含む特定のモチーフをもつペプチドと結合することを示した。MHC cl ass 1 分子と異なり、強い結合のためには長いペプチド(約20残基)が必要である 。Sielingたち(p.227)はヒトCD1b分子が微生物lipoglycan分子を識別することを示し た。このlipoglycan分子は、T細胞に抗原提示するためには内在化(インターナリゼ ーション)されていなくてはならない非ペプチド性抗原である。(関連記事、Bendel ac,p.185)
上皮増殖因子(Epidermal Growth Factor)と、それに関連するリガンドは動物の成長 の多くの場面に関係している。Threadgillたち(p.230)と、Sibilia & Wagner(p.234) はマウスの中でEGFレセプターをノックアウトすることによって、予想もしてなかっ た複雑さのEGF内シグナリングを明らかにした。それによれば、EGFレセプターが欠け ているかどうかはマウスの遺伝的背景に依存する。1つのマウスの株が致死的である かどうかは授精中期に生じるし、これは多分胎盤の欠陥によるのであろう。一方、EG F受容体を欠くマウス株は、誕生後3週間も生きたが、いくつかのシステムに異常を 持っていた。
我々が歳をとると記憶の信頼性は落ちてくる。なぜこんなことが起きるかを調べるた めGradyたちは(p.218)若年や、老年が人間の顔を観察し、認識する過程における(神 経細胞の活性の指標として)大脳の血流を測定した。老年者が顔を観察する際に活性 化される脳の領域は、若年者の脳の活性領域の一部にすぎない。歳をとって記憶が衰 える原因の多くは刺激の不完全な記録によるものであると同時に、認識そのものにあ るらしい。