AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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IEEE Software (IEEE) Vol.12, No.5


最も早いものが生き残る:サービス速度の改善
Survival of the Fastest: Improving Service Velocity

Neil C. Olsen

IEEE Software, Vol. 12, No. 5, September 1995

ソフトウエア工学の文献では、ソフトウエアプロジェクトにおける重要な要素として、 時間に焦点を当てることは稀である。しかし、サービスの早さ、つまりソフトウエアを 市場に展開するあるいはカスタマイズすることのできる早さは、品質、先見性、リスク 、コストあるいは生産性よりもプロジェクトの決定に重大な影響を持つ。利益の考慮が 優先されない非商業的なソフトウエア市場でさえ、作業がサービスできる早さは、他の 計測可能な全ての要素に対して、いかなる他の要因よりも深く影響を与える。

私は20年以上ソフトウエア技術者であり、私の仕事のプロセス、技術的な意志決定そし て人生は、スケジュール、市場窓口や出荷時期によって振り回されてきた。このことは 私の同僚にとっても一般的事実である。そこで、こうした困難な状況を単に証明するだ けでなく理解できるようにするために、私は技術者として、私の観察や主観的な経験を 数学モデルによって記録しておくが必要であると感じている。

本記事では、ビジネススポンサーの見地から、ソフトウエアアプリケーションの開発や 市場展開の早さを改善するためのケースを示す。その目標は、利益を増やし、競合を倒 し、評判を確立して、市場を占有することである。そして、迅速な展開と顧客の要求を 満足させるために、最善のソフトウエア技術、スタッフ、インフォメーションエンジニ アリングの工程そして組織構造を選択することが課題となる。


コンカレントエンジニアリングによるソフトウエアの国際化対応
Internationalizing Software with Concurrent Engineering

Farshad Rafii and Sam Perkins

IEEE Software, Vol. 12, No. 5, September 1995

ソフトウエア産業にとって、新たな商品を多様なグローバルな市場へ同時に送り出すこ とは、競争上必要になりつつある。海外市場の重要性の高まり、多国籍の顧客からの異 なった要求、次第に寿命が短くなる商品の狭い利益回収期間により、ソフトウエアベン ダーは主要な商品を数週間もしくは数か月以内に国際化したバージョンをリリースしな ければならない。

コンカレントエンジニアリングは、ベースとなるソフトウエアのバージョンを国際化に 対応させたりローカルな市場にカスタマイズすることに要する時間とコストを劇的に引 き下げることによって、新たな商品を同時に市場に出荷することを可能にする。しかし 、コンカレントエンジニアリングは、特に技術的に大きく飛躍する商品に適用するとき や開発チームを広範囲に分散させなければならない時には、潜在的リスクも存在する。

我々は、開発プロジェクトの構造について、管理者が利用できる選択範囲のフレームワ ークを示す。これらの選択は、タイミングと場所の次元によって変化する。そして潜在 的市場からの要望と開発プロジェクト固有な技術的あいまいさの2つの要因に基づいて、 最も適切な選択が得られると主張する。並行して分散した開発が最善の時には、管理者 は、プロジェクトの指導、組織の構成、定量化のシステム等の鍵となる要因に焦点を当 てなければならない。なぜならこれらはプロジェクトの結果が成功することを決定づけ に最も大きな役割を果たすからである。

我々の提案の意義を示すために、ソフトウエア商品の国際化対応において重大な遅れに 関係したことのあるハード/ソフトウエア製造企業が行った3つの詳細な事例研究に基づ く初期段階の研究成果を報告する。


サイクル時間とコストを削減するための大規模な産業的再利用
Large-Scale Industrial Reuse to Reduce Cycle Time and Cost

Emmanuel Henry and Benoet Faller

IEEE Software, Vol. 12, No. 5, September 1995

再利用の促進には組織の管理、手法やツールに対する変更を必要とするが、こうした全 ての変更には時間がかかるため、投資に対する見返りが遅れ、時にはそれを払拭してし まう。我々は、長期に及ぶ再利用戦略は短期間における再利用の成功に基づかねばなら ないと考える。こうした理由から、我々の会社-- Matra Cap System社 --は実際的かつ 楽観的な(非計画的、偶発的な)再利用主体のプロジェクトに根ざした再利用戦略の基 礎を作った。

ここで、我々は2つの大規模な産業的プロジェクトの結果を報告する。そこでは、プロジ ェクトベースでそして組織をまたがった再利用が、市場に出荷するまでの時間、生産性 、そしてエラー発生率で定量化される品質を改善した。これらの良い結果は再利用と開 発プロセスの反復性という両方から得られている。ある1つのプロジェクトの結果から組 織をまたがる再利用への関心が確認された。その結果、我々は、会社の中で異なった部 門で作られたが既存システムの大きな部分を再利用しているプロジェクトを次々と記録 した。

我々は、楽観的再利用ポリシーの別の興味深い結果に出会っている。それはもし異なっ たグループにより管理されたなら保守に費用がかかるであろう類似モジュールの幾つか のバージョンである。 この理由から、共通コードの保守に注目を移しつつある。我々の 新たな内部生成物のポリシーは長期間における計画的再利用を容易にすると信じる。


マルチボックスパーサー:自作の字句解析よ、さらば
Multibox Parsers: No More Handwritten Lexical Analyzers

Lev J. Dyadkin

IEEE Software, Vol. 12, No. 5, September 1995

ツールを利用して、解析対象の言語を記述した文法からコンパイラの前処理のパーサー 部を生成することができる。Lex/Yaccの様なツールは、パーサーが2つの部分、もしくは ボックスである字句解析部と構文解析部を持つことを仮定する。このアプローチは、For tranの様な字句的に複雑な言語に対してはとても厄介なことになる。なぜなら、1つのボ ックスでは、字句解析全てに対して文法的にその複雑さのレベルを表現するには十分で はないからである。その結果、コンパイラ作成者は字句解析を行うLexを断念し手書きで 字句解析器を作ることになり、パーサー全体の自動生成を可能とするパーサー生成器の 重要な目的を無効にしてしまう。

2ボックスパーサーに対する別の方法、そしてこれらの複雑さの問題を克服する方法はマ ルチボックスのパーサーである。字句解析のボックスと構文解析のボックスを持つ替わ りに、マルチボックスのパーサーはボックスの連なりを持つ。それぞれのボックスは、 次のボックスのために、入力言語をよりシンプルな出力言語に変換する。必要なボック スの数は解析する言語の複雑さに依存する。このマルチボックスアプローチは、Fortran 90標準と同じ複雑さの言語における字句的な複雑さのレベルを扱えるボックスを十分に 持っているので、解析する言語に因らずに字句解析器の自動生成を可能にする。

このアプローチはFortran90のコンパイラの開発でしか使われていないが、他の言語のコ ンパイラ開発にも同様に適している。ここでは、新たな言語に対して、ボックスの数や ボックスとそれと対応する文法の設計を示す。


品質展開に向けての現実的なステップ
Practical Steps Toward Quality Development

Akira K. Onoma and Tsuneo Yamaura, Hitachi Software Engineering

IEEE Software, Vol. 12, No. 5, September 1995

数十年間、ハードウエアの能力とソフトウエアのサイズは、確実に増してきた。こうし た大規模で複雑な危ういコード本体に対して、ソフトウエア開発と品質保証を分離する ことが必須であると確信している。もしこの2つを分離できないなら、何がソフトウエア の品質なのかを知ることは困難で、その結果、それを管理することは困難である。知ら ないことは管理できない。

日立ソフトウエアでは、高品質ソフトウエアを維持しスケジューリングを改善すること を目指してソフトウエアプロジェクトを組織している。このために、大規模ソフトウエ ア開発チーム内で、独立したグループ間に必然性のある競合をさせている。設計部門と 品質保証部門間の競合的な雰囲気を作ることによって、双方のチームの技術者は品質に 敏感となるように動機づけられる。

1979から1992の間、日立ソフトウエアにおけるソフトウエア生産性は3.2倍に上昇した。 このことは、市場での障害を減少させることによっても生産性が上がることを証明して いる。この記事では、我々のソフトウエア開発プロセスを示し、そしてさらにあなた方 自身の開発サイクルにおいて健全な品質保証を実現するためのアドバイスを与える。


RAD標準の開発
Developing A RAD Standard

Don Millington and Jennifer Stapleton

IEEE Software, Vol. 12, No. 5, September 1995

1994年の初めに、エンドユーザ組織とソフトウエアツールのベンダー、後に少数の学術 関係者が加わって、ダイナミックシステム開発手法コンソーシアムを設立した。彼らの 達成目標は、ラピッドアプリケーション開発(RAD)に対するパブリックドメインな手法 を継続的に開発し進化させることである。目的には、手法に対するフレームワークの出 版、その促進、トレーニングや資格認定の提供等を含んでいる。

今年初めにDSDM標準案の第1版が出版にされた。そこではRAD手法に対して重要となる3つ の要素、開発者が容易にエンドユーザと連絡がとれるようにするためにエンドユーザコ ミュニティに1人の委任された中堅スタッフを入れなければならないこと、開発チームは 安定しており十分に確立された技量を持つこと、そしてアプリケーション分野が初期の 要求仕様が柔軟でありユーザのグループが明確に定義されている商業的分野であること を明らかにした。

DSDMマニュアルの第2版は1996年1月に出版する予定である。しばらくの間、その手法は 、幅広いRADの経験を持ち、問題点や新たなアイデアを探求しているDSDMコンソーシアム のメンバーが、試行ベースに使用している。同時に、ワーキンググループは、システム 保守、再利用そしてDSDMと他の手法との関係の領域において第1版を改善するための題材 を作成している。


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