AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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IEEE Multimedia (IEEE) Vol.2, No.1


MHEG 解説
MHEG Explained

Wolfgang Effelsberg and Thomas Meyer-Boudnik University of Mannheim

IEEE MultiMedia, Vol. 2, No. 1, Spring 1995

本記事は、現在 ISO の MHEG グループ(Multimedia Hypermedia Experts Group)で審議中で、まもなくまとめられる MHEG 標準についてサーベイを行なっ ている。MHEG 標準の目的は、最終形式(final form)におけるマルチメディア プレゼンテーションを蓄積・交換・実行するために用いることのできる、シス テムに依存しない構造情報の符号化を定義することである。MHEG 符号化プレ ゼンテーションのビルディングブロック(building block)を説明するために実 行例(running example)を用いる。ネットワーク化されたマルチメディアキオ スク環境(networked multimedia kiosk environment)において MHEG を用いた 実験を投稿するために、完全な MHEG の実行時環境を示す。


QOS ブローカ
The QoS Broker

Klara Nahrstedt and Jonathan M. Smith University of Pennsylvania

IEEE MultiMedia, Vol. 2, No. 1, Spring 1995

Keywords: quality-of-service, scheduling, real-time communications and services, remote-control applications, software architecture for multimedia

多くのネットワーク接続された(networked)マルチメディアアプリケーショ ンは、遅延に敏感(delay-sensitive)であり、資源の利用可能性(resource availability)や適時性について保証付きのサービスを要求する。非同期伝送 モード(ATM)に基づくようなネットワークについては、これらのサービス上の 要求はサービス品質(QOS)パラメータを通して詳しく述べることができる。QOS の保証は端末間の(end-to-end)プロトコルアーキテクチャにおける複数階層に おいて必要である。end-to-end に QOS を与えるには、下層のネットワークに おいてのみならず、コンピュータやワークステーションのホストといったシス テムの端点(end-points)における資源管理のアーキテクチャが要求される。

QOS ブローカと呼ぶ端点における実行主体であるエンティティのためのモデ ルについて述べる。QOS ブローカは、階層にまたがって資源管理を調和 (coordinating)させながら、端点における資源を組織化(orchestrate)する。 仲介者(intermediary)として、QOS ブローカはアプリケーションや階層毎の資 源管理者(resource manager)から、実装の詳細(implementation details)を隠 す。翻訳(translation)や、認証(admission)や、交渉(negotiation)といった サービスは、ブローカによって、アプリケーションの要求に対して適切にシス テム構成を行なうために用いられる。システム構成は、QOS の交渉を経て、通 信システム内のひとつあるいは複数の接続を結果として得られる。交渉は初期 設定(setup)のために必要な通信システムのすべての構成要素を含む。

QOS ブローカの重要な特質(property)は、他の実体の操作上の詳細 (operational details)から協同実体(cooperating entities)を隔離するとい う、動的な仲介者(active intermediary)としての役割である。ブローカは、 所望のシステム構成を行なうためにエンティティ同士の通信を管理する。ブロー カは、分散型マルチメディアシステムのためのソフトウェア工学的なテクニッ クであるとみなすことができる。

ATM LAN で接続された IBM RISC System/6000 をホストとしてこの上に Qos ブローカのプロトタイプの実装実験を行なった。このプロトタイプをロボット の遠隔操作に用いて有効性の確認を行なった。このアプリケーションは時間の 制約が非常に厳密(strict timing constraints)なものである。この実験によ り、提案システムの限界やシステム支援のための要求がわかり、提案アーキテ クチャのための試験台とすることができた。


ATMベースのマルチメディアサーバ
ATM-Based Multimedia Servers

Reza Rooholamini and Vladimir Cherkassky Dell Computer Corporation

IEEE MultiMedia, Vol. 2, No. 1, Spring 1995

マルチプロセッサシステムの次世代のアーキテクチャは、クライアント−サー バパラダイムの急速な発展、IC 技術の発展、コンピュータと通信の融合、現 在のソフトウェア投資の保存(preservation)といったものの影響を受ける。次 世代のマルチプロセッサはマルチメディアのクライアント−サーバ環境におけ るサーバとして位置付けられる。現在のサーバは、処理用あるいは蓄積用のサ ブシステムに対して、ネットワークの高域バンドを効果的に割り当て、内部的 にかつ効果的にマルチメディアのトラヒックを処理することはできない。この 問題を克服するために、本論文では三つの階層を持つスケーラブルな、サブシ ステムベースのマルチメディアサーバアーキテクチャを提案する。このサーバ においては、蓄積用、あるいはプロセッサメモリ、あるいはネットワーク/コ ミュニケーションといったサブシステムは、それらサブシステム間をまたにか けたマルチメディア情報の高速転送を可能にする ATM によって相互接続され ている。


マルチメディアOSの解析
Analyzing the Multimedia Operating System

Ralf Steinmetz IBM European Networking Center

IEEE MultiMedia, Vol. 2, No. 1, Spring 1995

Keywords: multimedia, operating system, resource management, file system, scheduling

マルチメディアアプリケーションは、オーディオやビデオのデータを、自然 に−−すなわち誤りがなくかつ人工的に感じられずに−−知覚できるように処 理する必要がある。この時間的に連続なメディアのデータは、マイクロフォン、 カメラ、ファイルといった起源を持っている。データは、これらのソースから、 同じコンピュータあるいは遠隔地にある計算機にあるスピーカや、ビデオウイ ンドウ、ファイルといった目的地(destination)に転送される。ディジタルデー タは、ソースからシンク(sink)までの行程において、少なくともなんらかの移 動・複製・変換といった操作によって処理される。それゆえ、このデータ操作 処理において、オペレーティングシステムのもとにある多くのリソースが常に 存在している。これらリソースの管理およびそれぞれのスケジューリングはマ ルチメディアアプリケーションのリアルタイムの要求に応じて行なわれなくて はならない。

本文は、マルチメディアデータを処理することのできるオペレーティングシ ステムの主な特質、すなわちリソース管理、スケジューリング、スケジューリ ングに着目したファイルシステム、といったものについて概略を示す。これら のすべてのトピック(topic)について、最も適切なアプローチ法および それに 代わるもの(alternative)を示す。このサーベイ記事は、マルチメディアのた めに拡張したオペレーティングシステムのアーキテクチャを示すことによって まとめとしている。


ビデオ代数(Video Algebra)を用いた合成とサーチ
Composition and Search with a Video Algebra

Ron Weiss, Andrzej Duda, and David K. Gifford MIT Laboratory for Computer Science

IEEE MultiMedia, Vol. 2, No. 1, Spring 1995

Keywords: algebraic video, video algebra, content-based retrieval, video indexing and searching, video databases

ディジタルビデオプレゼンテーションシステムの、合成(composition)・サー チ・ナビゲーション・再生(playback)のための操作を提供する algebraic video と呼ぶデータモデルを紹介する。ビデオプレゼンテーションは、所望の ビデオストリームを作成するためのビデオセグメントへの基本的な操作の集合 によって構成されるビデオ代数(video algebra)を利用することによって構成 される。ビデオ代数は、ビデオセグメントに付随する属性のみならず、ビデオ セグメントを時間的あるいは空間的に結合するための操作を含むものである。 algebraic video アクセス手法は、質問(query)およびナビゲーション操作で ある。質問およびナビゲーションは、ユーザが所望の属性を述べたりプレゼン テーションの内容を探検したりすることによって興味のあるビデオプレゼンテー ションを見い出すことを可能にする。従来のアプローチとは異なり、 algebraic video はビデオ表現を任意の深さの階層にしまう(nest)ことを可能 にする。また、ビデオセグメントが前後関係(context)によって属性を継承す ることができる。algebaric video システムのプロトタイプによる実験により、 algebraic video はビデオへのアクセスおよびビデオの管理の効果的な手法で あることがわかった。このプロトタイプシステムは、存在する収集物から興味 あるビデオセグメントを発見したり、これらのセグメントの代数的な組み合わ せにより新しいビデオプレゼンテーションを創作したりするために用いられる。

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IEEE Multimedia (IEEE) Vol.2, No.2


多地点間マルチメディア遠隔通信実験
Experiments in Multipoint Multimedia Telecommunication

H. W. Peter Beadle University of Wollongong

IEEE MultiMedia, Vol. 2, No. 2, Summer 1995

Keywords: multimedia, telecommunications, networks, applications, digital communications, computer supported collaborative work, DQDB, experimental results, case studies

本論文は、国家的規模のネットワーク実験(experiments of networks of national scale)を含めた、マルチメディア通信サービスと放送型ネットワー クとの相互作用(interaction)についてのここ5年間の研究の成果について述 べている。これらの実験により、高レベルのアーキテクチャ上のプリミティブ (high-level architectural primitive)が、いかに多地点間マルチメディアア プリケーションの急速に作成できるようになったかがわかる。それらのアプリ ケーションについての、客観的な性能評価および主観的な使いやすさについて の評価結果を述べる。イーサネットや、異機種間マルチメディアネットワーク や、米国の DQDB ネットワーク“Fastpac”や ATM 実験ネットワークといった、 専用網および公衆網上の多数の実験により結果を得た。

結論として、直観的(intuitive)なユーザインタフェースを用いた限定され たマルチメディア通信システム/サービス(limited multimedia telecommunication system/service)は、現在の技術ですぐにでも構築するこ とができる。しかし、各組織がかけているコストに十分見合う利益を、これら のシステムがもたらすことができるかどうかについての評価の明確化がいまだ 不十分である。


マルチメディアコンテンツ記述における品質保証
Quality Assurance in Scripting

P.A. Subrahmanyam, K. J. Singh, Guy Story, and William Schell Information Systems Research Laboratory, AT&T Bell Laboratories

IEEE MultiMedia, Vol. 2, No. 2, Summer 1995

Keywords: scripting, interactive television, formal methods, finite state machines

インタラクティブテレビ(ITV)アプリケーションを含み、マルチメディアア プリケーションプログラムは、「マルチメディアスクリプト言語」を用いて開 発されることが多い。多くのアプリケーションデザイナの経験によると、ユー ザのセッションやゲームの実行中に遭遇する可能性のあるすべての異なる状況 をあらかじめ想定することや、必要とされる応答(responses)がスクリプトに 確実に含まれているということを保証することは大変困難である。電話あるい はケーブルネットワークのように公的にアクセス可能なネットワーク上に広く 複製されるアプリケーションを危険にさらす前に、予期せぬあるいは破滅する かもしれないネットワーク資源の配置を避けるために、そのアプリケーション がある程度「顧客によって試されている」ということを保証することは望まし く、また、経済的である。残念ながら、ほとんどのスクリプト言語のプラット ホームにおいてはこのような「品質保証」については無視される傾向にある。

上の問題に対処ための方法論について述べる。コンテント開発者は、「監督 (directors)」と「役者(actors)」との階層を定義するものと考えることので きるような、スクリプト言語Mのためのグラフィカルなフロントエンドを用い てアプリケーションを作成する。マルチメディアオブジェクトをサポートする 相互有限状態機械(interactive finite state machines)の集合による、この スクリプト言語のための形式的意味論(formal semantics)を開発した。形式的 解析(formal analysis)を支援するための、Mから他のオートマトンベースの 中間表現(internal auttomaton-based representation)への変換手法を実現し た。この枠組を用いることにより、インタラクティブなユーザのセッションあ るいはゲームに固有の特性−例えば、デッドロックの可能性、遭遇する可能性 のある潜在的なシナリオ(potential scenarios that might be encounterd)、 資源利用などなど−を、関連付けられたツールの集合を用いることによって解 析的に答えることのできる質問とすることができる。典型的な ITV デモスク リプトの一部であるゲームについて、有用な特性の解析に成功した。この実験 により、形式的解析を行なうことの重要性が明確になる。


分散型マルチメディアによるプロセス制御
Controlling the Process with Distributed Multimedia

Aloke Guha Network Systems Corporation Allalaghatta Pavan, Jonathan Liu, and Barry Roberts Honeywell Technology Center

IEEE MultiMedia, Vol. 2, No. 2, Summer 1995

Keywords: distributed multimedia, real-time systems, asynchronous transfer mode, client-server, process control

プロセス制御産業(process control industry)におけるマルチメディアは、 時間的にクリティカル(time-critical)なプロセスの可視化(visualizing)・監 視・制御のためにマルチメディアデータを利用するという点だけでなく、さま ざまな画像センサを統合するという点においても広い視野を持っている。本研 究は、マルチメディアデータを操作するクライアント−サーバモデル、ならび に画像処理専用装置(specialized image processing hardware)、および多く の商品(a number of commercial products)とからなる分散型のアーキテクチャ が、フィルムのコーティングプロセスの監視と制御において非常に効果的であ ることを示す。


分散型マルチメディアとサービス品質:サーベイ
Distributed Multimedia and QOS: A Survey

Andreas Vogel CRC for Distributed Systems Technology Brigitte Kerherve Universite de Quebec a Montreal Gregor von Bochmann and Jan Gecsei Universite de Montreal

IEEE MultiMedia, Vol. 2, No. 2, Summer 1995

このサーベイが示すように、QOS(Quality of service サービス品質)は、分 散型マルチメディアシステムに含まれるすべての構成要素について重要度が高 まってきている。直接ユーザに影響を与える QOS パラメータだけでなく、通 信プロトコル、OS、マルチメディアデータベース、ファイルサーバのそれぞれ における QOS パラメータについて論じる。


電子広告のための消費モデル
A Consumption Model for Targeted Electronic Advertising

Rick Dedrick Intel Architecture Labs

IEEE MultiMedia, Vol. 2, No. 2, Summer 1995

情報分散ネットワークにより、消費者は、ビジネスや家庭での利用において、 豊富なメディアに基づいた電子的なコンテンツ(electronic content)へのアク セスが可能になるであろう。電子広告(electronic advertizing)は、消費者の 個人的な空間を侵すことなく、消費者のために新しいサービスを提供しながら 消費を助勢しながら、このような情報分散ネットワークにおける複合的な構成 要素(an integral component of such networks)になっていくであろう。本論 文においては、消費モデルについて説明を行ない、このモデルにより、『消費 者主導の広告(consumer-driven advertising)』がいかに発展していくか、そ してそれがなぜすぐには始まらないかが説明できる。


MPEG/AUDIO圧縮の手引書
A Tutorial on MPEG/Audio Compression

Davis Pan Motorola Inc.

IEEE MultiMedia, Vol. 2, No. 2, Summer 1995

本論文は、MPEG オーディオ圧縮の理論背景について論じる手引書 (tutorial)である。MPEG オーディオは、ディジタルオーディオ信号の高忠実 度(high fidelity)圧縮のための ISO 標準として、MPEG グループによって開 発されたアルゴリズムである。MPEG オーディオ圧縮標準は、総ビットレート 1.5Mbps における、ビデオ圧縮(11172-2)、オーディオ圧縮(11172-3)・および ビデオ・オーディオ・関連するデータストリームの同期(11172-1)という三つ の部分からなる標準の一部分を占めるものである。MPEG オーディオ標準は、 オーディオ信号のみのアプリケーションにおいても低ビットレートかつ高忠実 度のオーディオデータ圧縮として用いることができる。

MPEG オーディオ圧縮アルゴリズムは非可逆圧縮ではあるが、6倍またはそ れ以上の圧縮率においても『明瞭』("transparent")で聴感的には無損失な圧 縮を可能にする。このアルゴリズムは、人間の聴覚システムの聴感的な特質を 利用して動作するものである。本論文においては、心理聴覚モデルの基礎、お よび聴覚的な劣化を最小限にするという特徴を持つ、MPEG オーディオアルゴ リズムに用いられているオーディオデータの圧縮手法についても論じる。

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IEEE Multimedia (IEEE) Vol.2, No.3


インタラクティブマルチメディアテレビの地域分配方式
Local Distribution for Interactive Multimedia TV to the Home

Dale D. Harman, Gang Huang, Gi-Hong Im, Mai-Huong Nguyen, Jean-Jacques Werner, and Michael K. Wong

IEEE MultiMedia, Vol. 2, No. 3, Fall 1995

Keywords: carrierless AM/PM (CAP), interactive TV, residential networking, fiber-to-the-curb, unshielded twisted pair, switched digital video, digital local distribution technology, ATM

本論文においては、インタラクティブマルチメディアテレビ・トゥ・ザ・ホー ム(IMTV to the home)における地域分配システムについて論じる。本論文にお いて考えるネットワークアーキテクチャは、カーブ(curb、家の近くの道路の 縁の意味)までは光ファイバで、カーブと各家庭との間の IMTV 信号のローカ ル分配は電話回線や同軸ケーブルによって行なわれるというものである。カー ブから各家庭への『下り』IMTV チャネルは 51.84Mbps、各家庭からカーブま での『上り』のチャネルは 1.62kbps の伝送レートで動作する。


ビデオの受容性とフレームレート
Video Acceptability and Frame Rate

Ronnie T. Apteker, James A. Fisher, Valentin S. Kisimov, and Hanoch Neishlos

IEEE MultiMedia, Vol. 2, No. 3, Fall 1995

Keywords: frame rate, message content, multimedia, perception, temporality, watchability

本論文は、典型的な GUI(Graphic User Interface)を用いたビデオアプリケー ションにおいて、映像のフレームレート(frame rates)を落とすことにより、 ユーザの理解度に与える影響について実験を行なうものである。特に、連続的 なメディア(continuous media)のフレームレート(これはひとつのQOS(Quality of system)パラメータである)を下げた場合、アプリケーションの種類によっ て異なる理解度を与えるという実験結果が示されている。マルチメディアのセッ ションにおいて QOS を下げた場合、異なる分散型マルチメディアアプリケー ションについては、そのアプリケーションが要求するネットワークの帯域(一 つのマルチメディアサーバがサポートし得るユーザの数に直接関係する)によっ て異なる結果が得られるということがわかった。


インタラクティブなマルチメディア『シナリオ』のための時間モデル
A Temporal Model for Interactive Multimedia Scenarios

Nael Hirzalla, Ben Falchuk, and Ahmed Karmouch

IEEE MultiMedia, Vol. 2, No. 3, Fall 1995

Keywords: multimedia document, scenario, temporal relationships, user interaction, active multimedia, scenario representation, non-halting options.

マルチメディアのオーサリング(authoring)には、課題(challenge)が残って いる。いわゆる『本』とは異なり、マルチメディア文書には、音声と映像の同 期や、ビデオに同期してテキストのサブタイトルを流すなど、創作段階(at the authoring stage)で詳しく記述する必要のある時間的な関係や、メディア オブジェクトを描写(rendering)する前にユーザの入力を待ったり、ドキュメ ントをある方向(certain direction)に再生するユーザの行為を待ったりする など、創作時に簡単にはわからない関係がある。これに対して、ハイパーメディ ア文書には、時間という概念が含まれていない。ハイパーメディア文書は、 『蓄積交換的』(store-and-forward)であり、ユーザが選択行為を行なうまで 何も起こらない。現在、作成者がシナリオ(scenario)を記述することのできる 形のオーサリングツールが多く存在するが、動的なマルチメディアシナリオを 作成することのできるオーサリングツールはほとんどない。後者によって作成 された文書は、記述通り再生することができるのみならず、その筋(course)を、 ユーザの対話操作にしたがって、動的に変えることができるようになる。我々 の研究の目標は、このような表現(representation)・オーサリングツールを作 成することである。

本論文においては、インタラクティブなシナリオ記述のための時間モデルに ついて述べる。非同期的および同期的な時間的なイベントのための新しい表現 方式(representation)を規定する。ポイントは、利用者(viewer)に対して停止 が不要(non-halting)でかつわかりやすい(transparent)選択を提供できるよう なシナリオを、創作者が制作できるようになるということである。最後に関連 研究について比較対照する。


ネットワークの発展とマルチメディア通信
Network Evolution and Multimedia Communication

Heinrich J. Stuettgen IBM European Networking Center

IEEE MultiMedia, Vol. 2, No. 3, Fall 1995

本サーベイ論文においては、分散型マルチメディアアプリケーションが発展 するための通信技術上の要求について解析する。ネットワーク技術における現 在の進展について理解するために、これまでの、あるいは新しいネットワーク 技術がこの要求に対してどの程度支援可能かについて調査する。機能面のみな らず、現在のネットワークインフラに新しい技術をいかにブレンドするかとい う問題についても解析を行なう。通信回線の設置(wiring)、相互接続 (interconnection)、管理といったインフラ投資(infrastructure investments)は、新しいネットワーク技術の導入に関するコストの大部分を占 めるものでるため、上の問題は新技術の成功を左右するものである。最後に、 統合マルチメディア通信支援における上位階層の通信の問題についての簡単な 議論によってまとめとする。

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IEEE Multimedia (IEEE) Vol.2, No.4


X.400 に基づいた実用的なマルチメディア電子メイル
Practical Multimedia Electronic Mail on X.400

Sylvain Carrier and Nicolas D. Georganas

IEEE MultiMedia, Vol. 2, No. 4, Winter 1995

大小様々なコンピューターネットワークやワークステーションの急増は、電子 メイルの拡張的な利用や発展を支援するプラットホームとなりつつある。(し かし、)ユーザは、電子メイルの有用性に慣れると同時に、マルチメディアコ ンテンツ(を扱うこと)や相互運用性といった点における電子メイルの限界に も直面した。インターネット/MIME標準により相互操作性を内蔵した、 X.400 をマルチメディア対応にするアプローチを提案する。このアプローチは、 現在の X.400 とインターネット電子メイルを、相互運用性に関する公開文書 を用いることにより、マルチメディア情報の伝送/変換に利用することができ るということを保証する。このアプローチに基づくオタワ大学における MCR 研によるプロトタイプの実装を示す。(本アプローチと、)軍事メッセージ (military messaging)標準や他のマルチメディアメイルプロジェクトとの簡単 な適合性の比較も行なう。


ハイパーメディアのオーサリング
Hypermedia Authoring

Athula Ginige, David B. Lowe, and John Robertson

IEEE MultiMedia, Vol. 2, No. 4, Winter 1995

ハイパーメディアのアプリケーションを開発する際に重要な機能は、その情報 内で、相互のリンクを識別できることと、相互のリンクをアクセシビリティが 高まるように構成できることである。この特色はオーサリングというプロセス の主要部である。オーサリングには多くのアプローチがある。そのうちのいく つかは小規模のプロトタイプに適している。大規模なハイパーメディアシステ ムや、ある期間を越えた(over a period of time)メンテナンスが必要なシ ステムを開発する時には、より構造的なアプローチや、開発プロセスを支援す る適切な方法論が必要になる。不適切なアプローチをとってしまうことにより、 開発コストが非常にふくれあがり、所望のレベルの機能が得られず、利用やメ ンテナンスが困難なシステムになってしまう可能性がある。


メディア分類法(taxonomy)
A Media Taxonomy

Rachelle S. Heller and C. Dianne Martin

IEEE MultiMedia, Vol. 2, No. 4, Winter 1995

本論文は、マルチメディアアプリケーションの研究および開発の双方において 用いることのできるメディア分類法について述べる。この分類法は、二つの次 元を持ったカテゴリ分けの枠組として示すことができる。テキスト、グラフィッ ク、サウンド、動画といったますます複雑になっていくメディアのタイプが縦 軸(垂直次元)を構成する。三つのカテゴリ(詳細、表現、抽象)に分けられ るメディアそれぞれの表現方法が横軸(水平次元)を記述する。

本分類法は、ふたつの大学院マルチメディア専攻において首尾よく用いられて いる。そのひとつはマルチメディアのデザイン(設計)に、もうひとつはイン タラクティブなマルチメディアの研究や評価に、焦点を当てたものである。本 分類法は、元来のマルチメディアのカテゴリ分けと関連性が多く、研究者に対 してマルチメディアのプレゼンテーションにおいて個々のメディアによるイン パクトや付加価値をいっそう十分に理解させることのできる解析ツールの成長 する『兵器工場(arsenal)』に貢献することができるものである。


マルチメディアプロダクトにおける色とテキストの利用
Using Color and Text in Multimedia Projections

Ronald Vetter, Charles Ward, and Susan Shapiro

IEEE MultiMedia, Vol. 2, No. 4, Winter 1995

本稿においては、教室の環境(setting)におけるマルチメディア資料の投影に おいて筆者らが経験した問題点について論じる。例えば、スクリーン上では一 緒によく見え、簡単に区別のできるある複数の色が、プロジェクションパネル (projection panel)を通して送られてOHPで投影された時は簡単に区別でき ない。本稿では、マルチメディアのプレゼンテーションの開発者らがこのよう な資料の投影についての共通の問題のうちいくつかを回避するためにならうべ き指針について提案を行なう。また、心理的および生理学的な要因に基づいた マルチメディアのアプリケーションにおける色の適切な利用についても論じる。 また、この情報をいかにすれば利用することができるかという一例についても 示す。


インテリジェントマルチメディアシステムを用いた、難聴の子どもたちのため の教育/コミュニケーション手段
Teaching Communication Skills to Hearing-Impaired Children With An Intelligent Multimedia System

Fernando Alonso, Angica de Antonio, Jos. Fuertes, and Car Montes

IEEE MultiMedia, Vol. 2, No. 4, Winter 1995

Mehida は、難聴の子どもたちに対して、その子どもたちが友人とコミュニケー ションをするための使いやすく魅力的な手段を提供する、マルチメディアシス テムである。Mehidaは、難聴の人々に対して指話、会話、手話、読唇、読み書 きといったさまざまな形式のコミュニケーションを同時に利用できるようにす ることを目的とする総合的なコミュニケーション手段である。インストラクショ ンやゲームを用いることで色々なコミュニケーションの手段を教えている。こ のアプローチ法により、子どもは異なる種類のコミュニケーションを練習する 機会を得る。子どもたちをアシストしたりガイドしたりするために西洋なしの 形をしたキャラクターが作られた。この生徒は常にこのキャラクターと関係し、 そのキャラクターはその子どもの活動それぞれについて、子どもがなにをすべ きかを説明する。Mehidaの学習プロセスは、(1)基本学習(2)初歩的な読み書き (3)つづり(4)単語(5)文章の読み書き、の5段階に分けられる。それぞれのフェー ズは、例えば類似性という概念の習得を形や大きさや色の似た図形を選択する といった行為に噛み砕くように、子どもたちが学習プロセスにおいて習得し、 より低いレベルの一連の操作目標に噛み砕く、技術や知識の表現であるの教育 目標の階層をなす。


マルチメディアと空間情報システム
Multimedia and Spatial Information Systems

Zarine Kemp

IEEE MultiMedia, Vol. 2, No. 4, Winter 1995

複数のマルチメディアのデータタイプを結合することについて、空間情報シス テム(Spatial information systems, SIS)における要求がどんどん高まってき ている。画像、音、アニメーション、非構造化テキストなどは情報システムに おける地理的に配置された実体の統合の一部を形成するデータの例である。こ こでは、適用領域を示し、空間情報システムにマルチメディアの能力を含める ことに関係する事項や問題について考える。また、ここでは、いかにマルチメ ディアデータを、一般的かつアプリケーション独立な方法において空間情報シ ステムと統合することができるかということを説明するために、拡張的なマル チメディアへの要求をともなったエコロジカルな適用例を紹介する。この問題 は、いかにマルチメディアの能力を地理的に関係したモデルに基づいた空間情 報システムと併合するかを述べたり、SISとマルチメディアデータをよりよく 統合するためにオブジェクト指向モデルを利用することを議論したりすること によって考えることができる。


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