Science November 20 2020, Vol.370

脅威の検知は眼で始まる (Threat detection starts in the eyes)

マウスは、視野内で急速に大きくなる何かを見た場合、襲いかかる捕食者を示しているかもしれないので素早く逃げる。Kimたちは、そのような迫り来る視覚刺激に選択的に応答し、それに応じた先天的防御行動に必要とされるマウスの網膜中の小さな神経細胞群を特定した。これらの神経細胞は、近くの神経細胞からの入力を選択的に統合することにより、この特定の計算を実行する。このように、眼の中の神経回路は、情報が脳に到達する前であっても、特定の計算を実行し、先天的で進化的に保存された行動をもたらす。(Sk,ok,kh)

Sci. Adv. 10.1126/sciadv.abc9920 (2020).

小頭症遺伝子に対する機能検査 (Functional screen for microcephaly genes)

遺伝子検査は、生物学的プロセスにおける調節因子を同定するために広く使用されている。ヒトでの検査は現在二次元細胞培養に限定されており、組織依存的な遺伝子機能を試験することができない。Eskたちは、CRISPR-Cas9スクリーニングとバーコード付き細胞系統追跡を組み合わせて、3次元のヒト脳オルガノイド組織における機能喪失検査を可能にした。小頭症候補遺伝子を試験することにより、小胞体は、組織の完全性と脳の大きさを調節する細胞外基質タンパク質の分泌を制御することが分かった。ヒト脳組織におけるこの遺伝子検査は、小頭症における複数経路の存在を示し、オルガノイドにおける遺伝子の体系的試験のための1つの手段を提供している。(KU,kj,kh)

【訳注】
  • オルガノイド:3次元的に試験管内でつくられた臓器。
Science, this issue p. 935

圧力下の液-液相転移 (Liquid-liquid transitions under pressure)

強く過冷却された水は高密度型と低密度型との間の相転移を生じると理論シミュレーションにて予測されているものの、氷の結晶化がとても速く起きるため、この相転移を実験的に調べることは困難である。Kimたちは、200ケルビン近傍で形成されたアモルファス氷層を高速加熱するための赤外フェムト秒パルスに、高速な構造決定のためのX線レーザーを組み合わせた。この加熱過程により高圧高密度の液体の水が生じた。高密度液体層が広がり圧力緩和されると、低密度の液体領域が現れて、20ナノ秒から3マイクロ秒の間の時間規模で成長した。これは、競合する氷への結晶化(3~50マイクロ秒)よりもずっと速かった。(NK,MY,ok,kj,nk)

Science, this issue p. 978

「底」以下の遺物星団 (A relic star cluster under the floor)

球状星団(GC:Globular cluster)は、大きな銀河の周辺領域を軌道運動する数千から数百万の重力的に結合された星の集合体である。GCは、水素やヘリウムより重い化学元素の割合が少ない低金属量の古い星で構成されている。しかし、GCは「底」と呼ばれる最小限の金属量を持っているように見える。これは、これらの元素の少なくとも一部がGCの形成に必要であることを暗示している。Larsenたちは、近傍にあるアンドロメダ銀河で金属量がこの「底」の値以下であるGCを発見した。この予想外の発見は、GCの形成と銀河への合体のモデルに関する情報を提供するものである。(Wt,nk)

Science, this issue p. 970

馴化するジカ・ウイルス (Domesticating Zika virus)

ジカ・ウイルス(ZIKV)は、何故、その起源の大陸であるアフリカで、アメリカ大陸と同様な惨状をもたらしてこなかったのだろうか? アフリカ以外では、このフラビノウイルスは、至る所にいる蚊の亜種であるネッタイシマカ(Aedes aegypti aegypti)により伝染するが、この蚊はアフリカの祖先亜種であるA. aegypti formosus から出現し、人の血を好む性質と家屋周囲での生活様式を獲得した。今やこの亜種は、気候変動と人間が出すごみの助けにより、多くの熱帯域の都市に定住している。Aubryたちは14の蚊飼育株で、それらのZIKVへの相対的な感染のしやすさについて調べた。量的形質遺伝子座マッピングは、ガボンとグアドループ由来の蚊の間で、染色体2上の違いを示した。マウスの感染実験で、アフリカの蚊は南米の蚊よりも送り込むウイルスが少ないことが明らかとなった。感染しやすさの増大と、水を含むどんな廃棄物中でも繁殖するネッタイシマカの能力が組み合わされ、このウイルスの物騒な性質が、世界を廻りながら増幅されてきた。(MY,kj,nk,kh)

【訳注】
  • グアドループ:西インド諸島にある島嶼群。
  • 量的形質遺伝子座:量的形質(数値によって評価できる形質)の発現に影響を与えるゲノム中の遺伝子領域のこと。1つの量的形質に対して通常、複数の遺伝子領域が寄与する。
  • マッピング:ゲノム上における遺伝子位置を特定すること。
Science, this issue p. 991

SARS-CoV-2に対する強力なカクテル (A strong cocktail against SARS-CoV-2)

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の感染は、ウイルス上にあってACE2受容体に結合する3量体棘突起タンパク質によって開始される。ウイルス感染を中和する、棘突起に対する抗体は、治療薬としての可能性を有している。Tortoriciたちは、2つの非常に強力な抗体であるS2E12およびS2M11について記している。電子顕微鏡から得られた構造は抗体の結合の特徴を明らかにし、S2E12が棘突起を、ACE2と結合できない構造に閉じ込めていることを示した。両方の抗体はハムスターをSARS-CoV-2の投与から守った。それらは、ウイルスと戦って耐性の発達を防ぐ抗体カクテルに役に立つかもしれない。(ST,MY)

Science, this issue p. 950

天皇海山列の頭を見つける (Finding the Emperor's head)

火山島と海山列は、マントルを通過して湧昇する高温物質からなる、深部プルームから形成される。これらの中で最も有名なものは、ハワイ-天皇海山列である。しかし、その海山列に先行するはずのプルーム先端に関わる大規模な火山構造は、長い間発見されなかった。Weiたちは、ついに、ロシア東部の下にあるマントルに、この構造が存在する可能性がある場所を特定した。この構造は2000万年から3000万年前に沈み込みを起こしたようである。そして、その場所はいくつかの地球力学的過程を制約するのに有用である。(Wt,nk,kh)

Science, this issue p. 983

他の感染症に取り組む (Tackling other infectious diseases)

重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の世界的大流行は、創薬と臨床試験を以前は不可能と考えられていた速度に向上させた。展望記事でGuptaは、コロナウイルス疾患2019(COVID-19)用の薬剤開発の機構が、毎年何百万人が死亡する他の感染症の治療にどのように導入できるのかについて論じている。著者は、研究を集中させ、運営を効率的に実施し、大規模な資金調達を確保することにより、他の重症感染症に取り組むための広範な薬剤開発の仕組みを作ることができると示唆している。(MY,kh)

Science, this issue p. 913

生態系への火災の影響の高まり (Fire's growing impacts on ecosystems)

火災は生物多様性の発展において重大な役割を担ってきており、多くの生態群集を形作る自然界の要素となっている。しかしながら火災の発生率は人間活動によって激化してきており、これは今や、決して火災の傾向がなかった、もしくは火災に適合してこなった生態系と生息地に影響を及ぼしつつある。Kellyたちは今回、どのようにしてそのような変化がすでに種を絶滅の危機に曝しているか、また地上の生態系を変容させているかを概説し、火災レジームの変化をひき起こしている傾向について議論している。彼らは、火災の活動が変化しつつある時代に、生物多様性維持を助けるために保護活動家と政策立案者が取ることができるであろう行動についても考察している。(Uc,MY,kj)

【訳注】
  • 火災レジーム:繰り返し起きる自然火災の型、頻度、強さ、季節性、空間的広がりに関する概念的用語。
Science, this issue p. eabb0355

カルシウムの波に乗る (Riding the calcium waves)

ロタウイルスは、世界中の子供に重い下痢と嘔吐を引き起こすが、感染がこれらの病気をどのようにして引き起こすのかはほとんど分かっていない。有力な説は、ウイルスに感染した細胞が、上皮細胞を調節不全にする傍分泌性のシグナル伝達分子を分泌するというものである。Chang-Grahamたちは、ロタウイル感染細胞が、細胞間のカルシウム波として現れる細胞間シグナル伝達を引き起こすことを見出した(StaniferとBoulantによる展望記事参照)。このシグナルは、ロタウイルス感染細胞によってアデノシン 5'二リン酸が繰り返し遊離する結果生じる。この遊離は近傍の未感染細胞の受容体を活性化し、カルシウム・シグナルに至る。この細胞間カルシウム波は塩化物イオンとセロトニンの分泌を活性化し、これが下痢と嘔吐の一因となる。この傍分泌シグナルを遮断することが、止痢薬療法の標的を意味することになるかもしれない。(MY)

【訳注】
  • 傍分泌:細胞間におけるシグナル伝達の1つで、特定の細胞から分泌される物質が、血液を通らず組織液などを介してその細胞の周辺で局所的に作用するもの。
Science, this issue p. eabc3621; see also p. 909

芯まで緑 (Green to the core)

太陽からの光は、何らかの形で今日の地球上のほとんどの生命に力を与えている。電荷分離が起こる光合成器官の中核である反応中心(RC)は、一度だけ創始されて多様化し、さまざまな課題や環境に適応した新しい種類の複合体を生成してきたと考えられている。Chenたちは今回、RCの進化を理解する上での、欠落している重要なパズル・ピースを提示している。それは、集光性タンパク質に結合した緑色硫黄細菌のホモ二量体I型RCの低温電子顕微鏡構造である。観察された補因子と色素の配置はこのRCの生化学的特徴を説明しており、今日のRCに見られる様々な構造と機能を、単一の祖先RCがどのように生み出したかを理解する手助けとなるであろう。(Sk,ok,kj,kh)

Science, this issue p. eabb6350

2つの道でもつれる? (Two ways to get tangled?)

アルツハイマー病による認知症での神経変性は、凝集したタウ・タンパク質からなる神経原線維変化と関係する。Darwichたちは、バロシン含有タンパク質(VCP)のハイポモルフ変異に関連する神経原線維変化を持つ、今までとは別の型の常染色体顕性認知症について述べている。VCPは病的状態のタウ・タンパク質を脱凝集することが見出され、また、ハイポモルフ変異は細胞及びマウスでのタウ・タンパク質蓄積を増やした。これらの知見は、神経細胞の健全状態を維持するタンパク質代謝回転の役割に光を当て、VCPがアルツハイマー病に対する治療標的を提供するかもしれないことを示唆する。(MY,kj,kh)

【訳注】
  • バロシン含有タンパク質:細胞内の異常タンパク質の処理などを担い、細胞機能保持に働くタンパク質。
  • ハイポモルフ変異:野生型の遺伝子産物の発現を抑制的にする、あるいは活性の低下した変異型の遺伝子産物を発現する遺伝子変異のこと。
  • 常染色体顕性疾患:親から受け継いだ顕性遺伝子が病気に関係するものである場合、その遺伝子が顕性のため発現し、子供に同じ病気が現れること。
Science, this issue p. eaay8826

気候変動は病気の危険性を変える (Climate change alters disease risks)

気候変動は、感染症の傾向と強さに変化を引き起こしているらしい。例えば、気候条件が涼しい場合、温暖な気候に棲む両生類宿主は、涼しい地域に棲む宿主よりもカエルツボカビによる感染に大きな負担に直面する。Cohenたちは、この「熱的不一致」仮説が宿主-病原体関係の全範囲にわたって当てはまるかどうかを試験するために、世界的な383研究のメタ解析を実施した。著者たちは、日付と場所のデータを、選択した宿主と寄生生物の特性および気象データと組み合わせた。その結果として得られたモデルにおいて、真菌症の危険性は、温暖な気候地域における異常な寒冷のもとで急激に増加したが、細菌病の流行は涼しい気候地域における異常な温暖のもとで急激に増加した。温暖化は他の寄生生物よりも腸内寄生虫に利益をもたらすと予測され、ウイルス感染は気候変動との明白な関係を示さなかった。(KU,ok,kj,kh)

Science, this issue p. eabb1702

マウスにおいて網膜再生を開錠する (Unlocking retinal regeneration in mice)

ゼブラフィッシュは損傷した網膜組織を再生できるが、マウスは再生できない。Hoangたちは、損傷時の遺伝子発現とクロマチン・アクセシビリティの変化を追跡することで、ゼブラフィッシュにおける網膜グリア細胞は新しい神経細胞を生成できるが、マウスにおける同じ細胞型はそれを生成できない理由についての手がかりが明らかになることを見出した。ゼブラフィッシュでは、活性化されたミュラー・グリア細胞が増殖期に変化するが、マウスでは、遺伝子ネットワークがグリア細胞を静止状態に戻す。いくつかの転写因子がマウスに静止状態を強制し、そしてこれらの破壊により、網膜損傷後にミュラー・グリア状態が増殖して新しい神経細胞を生成することができた。(KU,kj)

【訳注】
  • ミュラー・グリア細胞(Muller glial cell):網膜に存在するグリア細胞の1つで、網膜のほぼ全域に存在する。
Science, this issue p. eabb8598

細胞と最も抵抗の少ない経路 (Cells and the path of least resistance)

適切な胚発生、成体の恒常性、腫瘍細胞の播種、および免疫を含む過程では、ある種の細胞がそれらの発生場所から移動しなければならない。遊走する細胞は、微小物理的環境の間を通り抜ける。とはいえ、生体内において経路探索の際の組織の表面形状の重要性はほとんど知られていない。ショウジョウバエを観察し、Daiたちは卵巣の卵室内の境界細胞を使用して、経路選択を詳しく調べた。生細胞イメージング、遺伝学、数学的モデル化、およびシミュレーションは、組織の微細表面形状がエネルギー的に有利な最も抵抗の少ない経路を提供するのに対し、化学遊走物質が直交方向の案内情報を提供して細胞間接着が牽引に寄与することを示した。この結果は、細胞がどのように、表面形状、接着性、および化学遊走物質からの吸引情報を統合し優先順位づけして、多くの中から1つの経路を選択するのかについての洞察を与える。(Sh,MY,kj,nk,kh)

【訳注】
  • 生細胞イメージング:生体組織や細胞を生かしたまま、個々の細胞のはたらきや遺伝子の発現の様子を可視化し、外部から観察する手法。
Science, this issue p. 987

母体のIgEは胎児のマスト細胞を活性化する (Maternal IgE activates fetal mast cells)

マスト細胞(MC)は、免疫グロブリンE(IgE)抗体による活性化を通してアレルギー反応に関与する免疫細胞である。MCは哺乳類の発生初期に生じるが、IgEを介した活性化が胎児組織で起きるかどうか、IgE刺激の起源が何かは不明である。Msallamたちは、母体由来のIgEが、胎児由来の胎児性Fc受容体により胎盤関門を通過し、ヒトとマウスの胎児のMCを感作しうることを示している(Rothenbergによる展望記事参照)。出産前の母親による感作は、生まれた後に一過性のアレルゲン感受性をもたらし、アレルゲンへの初回曝露後の子に皮膚と気道の出生後炎症の発症をもたらした。このように、母体のIgEと胎児のMCの両方が、妊娠中のアレルギー性疾患の母子感染に影響を与える可能性がある。(Sh,kh)

【訳注】
  • マスト細胞:脊椎動物の結合組織中に散在し、組織に加えられた機械的や化学的な刺激、アレルゲンに敏感で、それらに触れるとヒスタミンとヘパリンを含む顆粒を細胞外へ放出する。過剰なヒスタミンは、アレルギー反応を起こすことがある。
  • 胎児性Fc受容体:血漿中から細胞内に取り込まれたIgG抗体が細胞小器官の1つであるリソソームによって分解されるのを防ぎ、再び血漿中に戻す受容体。最初、齧歯類の新生児小腸で同定されたため胎児性と名付けられた。また、胎盤を介して母親のIgGを胎児に輸送することで、胎児の感染防御に役割を果たしていることが知られている。
Science, this issue p. 941; see also p. 907

温度と接触を感じる (Feeling temperature and touch)

我々の皮膚の様々な受容体は、我々が物体に触れているのを感じることを可能にし、またその物体の温度の大まかな感覚を我々に与えてくれる。接触を感知するための手段のほとんどはそれ自体が温度に敏感であるため、人工の皮膚のような材料でこれを達成することは難題であった。Youたちは、導電性エラストマー薄膜のイオン緩和動態を研究した(Liuによる展望記事参照)。彼らは、温度を検出するための歪みに影響されない内因性変数としてイオン緩和時間が使用可能であり、歪みを検出するための温度に影響されない外因性変数として静電容量が使用可能であることを示し、それらの信号が互いに干渉しないようにこの2つを分離した。(Sk,MY,kh)

Science, this issue p. 961; see also p. 910

柔らかい接触 (A soft touch)

手が物体を掴むのにかかる力を測定するには、指先に検出素子を配置する必要があるが、これらの検出素子は、最終的に加えられる力の大きさに干渉したり影響を及ぼしたりするであろう。Lee たちは、一連の電界紡糸材料で構成されたナノ織物製の検出素子を開発した(Liuによる展望記事参照)。彼らは、自動試験装置を使用して、この素子が物体の把持に伴う圧力を繰り返し検出できることを示している。彼らはまた、検出素子は人間の指に取り付けることができ、これが物体を掴むのに用いられる力に影響を与えないことも示している。(Sk,ok,kj,kh)

【訳注】
  • 電界紡糸(エレクトロスピニングとも呼ばれる):紡糸ノズル内の高分子溶液に高電圧を加え、発生した高分子溶液内の静電気同士の反発力で溶液を糸状に押し出し、直径数nmの微細繊維を生成する技術。
Science, this issue p. 966; see also p. 910

分子を電界搬送する (Telegraphing molecules)

走査トンネル顕微鏡(STM)の探針は、直接的な相互作用を通じて原子や分子を操作するためにずっと用いられてきた。 Civita たちは今回、極低温では、STM探針からのバイアス電圧が、大きな有機分子であるジブロモ・テルフルオレンを長距離(平らな銀(111)表面の直線路に沿って数十ナノメートル)推進できることを示している(EschとLechnerによる展望記事参照)。この静電効果は、分子が進路に沿って配向していることを必要としており、また、臭素基を欠く誘導体は方向を変える。2探針構成においては、バイアス電圧の変化により約60ナノメートル離れた2つの特定の地点間で分子が発送・受理された。(Sk,kj,kh)

Science, this issue p. 957; see also p. 912

抗真菌分子を捜す (Prospecting for antifungal molecules)

海洋細菌は、しばしば異常な化学構造とそれに対応する反応性を持つ多量の天然物を産生し、それらは時には貴重な生物学的機能につながる。Zhangたちはメタボローム検査を用いて、非常に多様な化学構造を産生するホヤの微生物叢から得られた微生物株に狙いを定めた。彼らは、次に、これらの分子を真菌の抑制に対して検査した(Cowenによる展望記事参照)。turbinmicinと呼ばれる多環式分子は、多剤耐性真菌病原体であるCandida auris およびAspergillus fumigatus に対して強力な抗真菌活性を持っていた。予備的な作用機構およびマウス毒性研究は、この分子が真菌特異的経路を介して作用し、治療用量で良好な忍容性を示すことを示唆している。(KU,MY,kh)

【訳注】
  • メタボローム:細胞活動で生じる代謝物を(液体クロマトグラフィー質量分析器などで)網羅的に計測する技術。
Science, this issue p. 974; see also p. 906