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Science November 1, 2002, Vol.298


短信(Brevia)

絶滅の危機にある植物(Estimating the Size of the World's Threatened Flora) 全世界の植物種の13%が絶滅の危機にある、というもっとも一般的に引用されている数値 は、一方で非常に低すぎるとも考えられている。この数値には世界最大の数の植物種が存 在する熱帯地域の正確な数値が含まれていない。各国固有の植物種の全世界における分布 パターンを熱帯地域に適用して見積もった数値を考慮に入れると全体の半数に近い植物種 が国際自然保護連合(IUCN)の定義による絶滅の危機にある可能性がある。しかしながら 、熱帯の国々の総合的な植物レッドリストは不完全であり、正確な数値を予測することは 困難である。Pitman等は(p.989)、その国に固有の種の数と、その国の絶滅の危機にある 種の数が近似であることに注目して、絶滅の危機にある種の全数を予測している。彼等の 行った見積もりによると少なくとも植物種全体の30%が今世紀中に絶滅する危機にある 。(Na)
Estimating the Size of the World's Threatened Flora
   Nigel C. A. Pitman and Peter M. Jørgensen
p. 989.

協同的変化(Cooperative Change)

有機分子が単一の結晶であることを保ちうる変化は、通常、結晶を粉々にするような大き な格子運動は避けなければならない。このような格子運動で、二重結合を一重結合に変換 されたり、あるいは、ゲスト分子が細孔を移動するような系が見られる。Atwood たち (p.1000; Steed による展望記事を参照のこと) は、ゲスト分子を細孔のないホスト分子 に添加することにより、大きなスケールでの原子の協調運動を引き起こされ、その結果 、単一結晶性が維持されるようなホスト-ゲスト変換が観察された。ひとたび、その変換 が開始されても、ホスト分子が単に部分的にゲスト分子で飽和状態になっている時でも 、平衡方向に引き戻されていった。(Wt)
MATERIALS SCIENCE:
Molecular "Ghosts"

   Jonathan W. Steed
p. 976-977.
Guest Transport in a Nonporous Organic Solid via Dynamic van der Waals Cooperativity
   Jerry L. Atwood, Leonard J. Barbour, Agoston Jerga, and Brandi L. Schottel
p. 1000-1002.

より速く成長するグレイン(Faster Growing Grains)

炭素鋼が溶融物から冷却されると、いくつかの固体状態の変態を経た多結晶構造を形成す る。新しく開発されたX線技術とシンクロトロン源を用いて、Offerman たち (p.1003;Militzer による展望記事を参照のこと) は、個々の結晶グレイン(粒子)中で 発生する変態を研究し、現在のモデルはグレイン成長の物理過程を完全には捕らえてはい ないことを見出した。グレインの核形成は、以前に考えられていたよりもはるかに早く起 こる。これらの観察は、炭素鋼形成に対してより強力な方法が見つかる可能性がある 。(Wt)
MATERIALS SCIENCE:
Enhanced: A Synchrotron Look at Steel

   Matthias Militzer
p. 975-976.
Grain Nucleation and Growth During Phase Transformations
   S. E. Offerman, N. H. van Dijk, J. Sietsma, S. Grigull, E. M. Lauridsen, L. Margulies, H. F. Poulsen, M. Th. Rekveldt, and S. van der Zwaag
p. 1003-1005.

より小さなエアロゾル間接効果(Less Indirect Effect)

エアロゾル間接効果、すなわち大気中のエアロゾルによる雲の量や特性の変化は、太陽エ ネルギー純収支を計算する上で最もあいまいになっていることである。Lohmannと Lesins(p.1012)は、POLDER人工衛星(地表反射光観測装置)によるエアロゾルや雲の特性を 観測した結果を取り込んだ複合気象モデルモデルから得られた束縛条件によって、人為的 なエアロゾルの間接効果の正確な推定値を提案した。雲アルベド(太陽光反射率)と雲の寿 命とに基づくエアロゾル効果を考慮することで、エアロゾル間接効果、1平方メートルあ たり0.8ワットは、気象モデルシミュレーションだけで導かれた値(1.4)よりもかなり小さ い。(TO)
Stronger Constraints on the Anthropogenic Indirect Aerosol Effect
   Ulrike Lohmann and Glen Lesins
p. 1012-1015.

日本における静かな地震(Silent Earthquake in Japan)

東京の東南200キロメートル、日本中央部にある東海地方では、1854年の大地震を最後に ストレスが蓄積されている。そして、次の大規模な地震が、近々東海地方東部に発生する かもしれないと懸念されている。Ozawaたち(p.1009)は、GPSのデータを用いて地面の変形 を調査し、2001年に浜名湖付近の東海地方西部では、非地震性すべり(aseismic slip)(静 かな地震と呼ばれる)が2センチメートルにも達していたことを発見した。東海地方西部に おける非地震性すべりはストレス状態が変化しつづけていて、東海地方東部における地震 発生の可能性を高めているようである。(TO)
Detection and Monitoring of Ongoing Aseismic Slip in the Tokai Region, Central Japan
   Shinzaburo Ozawa, Makoto Murakami, Masaru Kaidzu, Takashi Tada, Takeshi Sagiya, Yuki Hatanaka, Hiroshi Yarai, and Takuya Nishimura
p. 1009-1012.

蛾が作る進行波(Moths Making Traveling Waves)

動物の個体数は食物連鎖などの影響によって非線形な動的変化を示し、これが空間的時間 的な多様なパターンを生じさせ、進行波やらせん波のようなものも見られることが、モデ ルから予測される。しかし、これを実験的に確かめたものはほとんど無かった 。Bjornstad たち(p. 1020; Rantaたちによる展望記事も参照)は、ヨーロッパアルプスの 航空調査によって長期間(40年以上)の食害による落葉パターンが動的に変化する様子か ら、局地的に大量発生を繰り返すカラマツ蛾について報告している。空間的に拡張された 理論的モデルに基づく統計モデルによって、周期8〜9年の規則的な進行波が生じることが 明らかになった。(Ej,hE)
ECOLOGY:
On the Crest of a Population Wave

   Esa Ranta, Per Lundberg, Veijo Kaitala, and Nils Chr. Stenseth
p. 973-974.
Waves of Larch Budmoth Outbreaks in the European Alps
   Ottar N. Bjørnstad, Mikko Peltonen, Andrew M. Liebhold, and Werner Baltensweiler
p. 1020-1023.

溶媒の洗浄化(Solvent Scrubbing)

地下水の汚染物質であるトリクロロエタンを還元脱塩素する嫌気性細菌がSunたち(p. 1023, Gossettによる展望記事も参照)によって見つかった。この微生物は他の脱塩素嫌気 性菌に関連はしているが系統的には異なる種である。この研究に記述された汚染現場に存 在しなかった外来微生物の供給(bioaugmentation)は、トリクロロエタンで汚染された地 下水堆積物の浄化に利用できる。(Ej,hE)
ENVIRONMENT:
Fishing for Microbes

   James M. Gossett
p. 974-975.
Microbial Dehalorespiration with 1,1,1-Trichloroethane
   Baolin Sun, Benjamin M. Griffin, Héctor L. Ayala-del-Río, Syed A. Hashsham, and James M. Tiedje
p. 1023-1025.

潮間帯のホットスポット(Intertidal Hot Spots)

潮間帯は、ここに住む生物にとっては熱的な許容限界に極めて近いため、気候変化の先導 者と信じられている。Helmuth たち(p. 1015) は、一般的潮間帯のムール貝の一種である Mytilus californianusはアメリカ西部海岸に沿って緯度傾斜方向への高温被曝のパタ ーンに応答するが、その様子は予想以上に複雑である。ほとんどの場合、北のほうが熱ス トレスが大きく、温暖化が進むと種が北の方に単純にシフトするのではなく、局地的な種 の絶滅が起きるであろう。(Ej,hE)
Climate Change and Latitudinal Patterns of Intertidal Thermal Stress
   Brian Helmuth, Christopher D. G. Harley, Patricia M. Halpin, Michael O'Donnell, Gretchen E. Hofmann, and Carol A. Blanchette
p. 1015-1017.

保育の起源(The Nature of Nurturing)

眼とか胎盤とかの複雑な器官の進化には、多数の動物個体が機能とちょうどうまく適応す る必要があるためジレンマがあり、これらのつじつまがうまく合う様子を想像することは 難しい。胎生の魚であるPoeciliopsis属では胎盤の発達の様子が連続的に存在する 。Poeciliopsisのあるものは母体からの栄養補給が全く無い卵黄摂食形態から、もっと長 期間母体から栄養補給するものまであり、この器官の進化の研究には適している 。Reznick たち(p. 1018; Morrellによる展望記事も参照)は、この属のなかには、それぞ れ独立した3種類の長期型の起源が存在する。受精後の長期栄養補給型の進化の上限は 75万年から234万年前までさかのぼる。このような比較的短期の進化は理論的には予測さ れていた。(Ej,hE)
EVOLUTIONARY BIOLOGY:
Placentas May Nourish Complexity Studies

   Virginia Morell
p. 945.
Independent Origins and Rapid Evolution of the Placenta in the Fish Genus Poeciliopsis
   David N. Reznick, Mariana Mateos, and Mark S. Springer
p. 1018-1020.

ディフェンシン戦略(Defensins Strategies)

生得的な免疫システムは、微生物の妨害または直接的な殺傷か、または免疫系の適応力を 活性化することのいずれかにより、病原体に対して迅速に反応する。ディフェンシン (defensin)類は、粘膜組織および皮膚の微生物感染に反応して産生される、生得的免疫 システムの抗菌性小ペプチドである。2つの研究により、それらがどのように機能してい るのかについての洞察が提供される(Ganzによる展望記事を参照)。ケモカインは、CD8 T細胞によるヒト免疫不全ウィルス-1型(HIV-1)複製の阻害において役割を果たしている が、関与する因子は完全には同定されていない。Zhangたち(p. 995;9月27日のCohenに よるニュース記事を参照)は、マススペクトロメトリーおよびタンパク質チップ技術を使 用して、AIDSに対して長期間進行しない患者から単離したCD8細胞由来の培養上清を調べ た。アミノ酸配列決定および抗体認識に基づいて、彼らは、T細胞活性化の際にのみ出現 する一連のディフェンシンを同定した。これらの分子に対する抗体は、CD8によるウィル ス阻害をブロックし、そしてベータ-ディフェンシン-1および-2の商業的な調製品は、異 なるHIV-1単離株を阻害した。Biragynたち(p. 1025)は、グラム-陰性細菌のエンドトキ シンであるリポ多糖(LPS)などの病原体-由来分子を認識することに限定されると今まで のところは考えられている細胞-表面パターン-認識タンパク質であるToll-様受容体- 4(TLR-4)を結合することにより、一つのディフェンシン、ベータ-ディフェンシン-2が 樹状細胞(DC)を活性化することができることを見出す。DCにおいては、ベータ-ディフ ェンシン-2とTLR-4との相互作用により、LPSとほぼ同様の細胞活性化プログラムが誘導さ れ、これには共刺激分子の刺激および前-炎症性サイトカイン発現を伴っている。(NF)
Contribution of Human alpha-Defensin 1, 2, and 3 to the Anti-HIV-1 Activity of CD8 Antiviral Factor
    Linqi Zhang, Wenjie Yu, Tian He, Jian Yu, Rebecca E. Caffrey, Enrique A. Dalmasso, Siyu Fu, Thang Pham, Jianfeng Mei, Jaclyn J. Ho, Wenyong Zhang, Peter Lopez, David D. Ho
p. 995-1000.
Toll-Like Receptor 4-Dependent Activation of Dendritic Cells by beta-Defensin
    Arya Biragyn, Pier Adelchi Ruffini, Cynthia A. Leifer, Elena Klyushnenkova, Alexander Shakhov, Oleg Chertov, Aiko K. Shirakawa, Joshua M. Farber, David M. Segal, Joost J. Oppenheim, Larry W. Kwak
p. 1025-1029.
Versatile Defensins
    Tomas Ganz
p. 977-979.

心臓を守る(Protecting the Heart)

心臓細胞のミトコンドリア内では、イオンチャンネルが様々なイオンの流れを制御してお り、そしてミトコンドリアの生理学的状態を変化させ、その結果、心臓細胞の相対的健康 に影響を与える。Xuたち(p. 1029)はここで、モルモット心臓細胞のミトコンドリア内 膜において、細胞を虚血から保護する際の、カルシウム-依存性カリウムチャンネルの役 割について記載する。チャンネルを開く薬物により、梗塞から心臓を保護することができ た。(NF)
Cytoprotective Role of Ca2+- Activated K+ Channels in the Cardiac Inner Mitochondrial Membrane
   Wenhong Xu, Yongge Liu, Sheng Wang, Todd McDonald, Jennifer E. Van Eyk, Agnieszka Sidor, and Brian O'Rourke
p. 1029-1033.

宿主の情報伝達経路を利用(Taking Advantage of the Host)

ダニで媒介される原虫寄生虫Theileria spp.(マラリア原虫Plasmodium spp. (変形体)と 関係する)は、ウシにおいて癌と類似する疾病を引き起こし、その疾病はアフリカとアジ アで重要な経済問題となっている。Heusslerたち (p. 1033)は、この病原体がどのように 宿主の情報伝達経路を自分のために利用しているかについて示している。分裂体期 (schizont)のマラリア原虫が免疫系のB細胞とT細胞を感染し、転移可能な腫瘍類似細胞に 不死化する。マラリア原虫がNF-kB経路を活性化し、アポトーシスを防ぐことによって形 質転換が起きると考えられている。この活性化は、多サブユニットIkBキナーゼ(IKK)の上 流にあるNF-kB情報伝達経路に影響する薬によって遮断することは不可能である。著者は 、Theileriaの細胞内の病巣はIKK signalsome複合体の補充と凝集に関与することを示し ている。このような凝集は、キナーゼを活性化することに引き続いてNF-kBを活性化する ために十分であるようである。(An)
Hijacking of Host Cell IKK Signalosomes by the Transforming Parasite Theileria
   Volker T. Heussler, Sven Rottenberg, Rebekka Schwab, Peter Küenzi, Paula C. Fernandez, Susan McKellar, Brian Shiels, Zhijian J. Chen, Kim Orth, David Wallach, and Dirk A. E. Dobbelaere
p. 1033-1036.

Polycombグループのメチル化(Polycomb Group Methylation)

ゲノムのDNAを染色質にパッケージすることを補助するタンパク質であるヒストンの共有 結合性修飾は、遺伝子発現と染色体の分離に重要な役割を果たす。タンパク質の Polycomb(Pc)グループは染色質を修飾するタンパク質として示唆されたが、Caoたち(p. 1039)は、知られている2つのPc複合体のひとつであるESC-E(Z)がリジン残基27のヒストン H3を特異的にメチル化することを示している。この修飾は、第二目の複合体である Polycomb抑圧的複合体1を補充し、遺伝子発現を停止する。補充は、Polycombタンパク質 実体を利用すると思われる。(An)
Role of Histone H3 Lysine 27 Methylation in Polycomb-Group Silencing
   Ru Cao, Liangjun Wang, Hengbin Wang, Li Xia, Hediye Erdjument-Bromage, Paul Tempst, Richard S. Jones, and Yi Zhang
p. 1039-1043.

コロイドのかご(Colloidal Cages)

二つの混ざらない液体が強引に混ぜ合わせられるとき、短時間ならば少なくとも主要な成 分内に微量成分を含む小滴を得ることは可能である。乳濁液は、コロイド粒子が小滴の表 面に凝集するので、コロイド粒子の添加によって安定化される。このようにコロイド粒子 は表面自由エネルギーを低下させている。粒子径が狭い範囲に分布しているコロイドを使 って、望みのサイズの細孔カプセルを形成するためにコロイド粒子を融合させたことを Dinsmoreたち(p.1006)は示している。乳濁液の少ない成分の方に溶ける薬剤あるいは細胞 を包含するようにそのカプセルを設計することができる。一度囲われると、その構造は新 しい溶媒体へ蓄積するか伝達するのに十分安定である。(hk)
Colloidosomes: Selectively Permeable Capsules Composed of Colloidal Particles
   A. D. Dinsmore, Ming F. Hsu, M. G. Nikolaides, Manuel Marquez, A. R. Bausch, and D. A. Weitz
p. 1006-1009.

細胞への振り付け(Cell Choreography)

発生過程にある脊椎動物では、原腸形成の移動点から正中に沿って延び出していく細胞は 後になると区分されて体節となるが、これが筋肉やその他の組織を形成するに到るのであ る。進んだイメージング技術を用いることで、この、パンのかたまりをナイフで切り分け るのと似ていると長いこと考えられてきたプロセスが、今や、細胞の移動と遺伝子発現の 変化からなるより複雑な振り付けによるもののように見えてきた。KulesaとFraserは、生 きているニワトリの胚における細胞の移動を観察し、若い体節板からそれぞれの体節が分 かれる際に、細胞が尾側およびくちばし側に向けて、始めにできた体節境界を横切って移 動していくことを見出した(p. 991)。体節決定に関与すると考えられている遺伝子発現領 域はすべてのそれぞれの細胞の運命を特定するわけではない。というのも、細胞はさまざ まな発現の領域を出入りして移動するからである。(KF)
Cell Dynamics During Somite Boundary Formation Revealed by Time-Lapse Analysis
   Paul M. Kulesa and Scott E. Fraser
p. 991-995.

転写の必須要素(Transcription Essentials)

転写についての初期の研究から、TATA結合因子、すなわちTBPが、RNAポリメラーゼI(pol I)やpol II、pol IIIプロモータからの転写に必要な基本転写因子であると示唆されてき た。しかし、より最近の研究で、TBPとTBP関連因子とは初期胚の遺伝子転写においては種 種の異なる役割を示すことが明らかになった。Martianovたちはこのたび、マウスのTBPを 相同的組換えで不活性化し、母親からのTBPが消失した後に胚盤胞が成長静止とアポト ーシスを経験することを示している(p. 1036)。TBPを欠くマウスの胎児は胚盤胞段階で 、母親からのTBP供給が枯渇するとすぐに死ぬのである。RNAポリメラーゼII転写はTBPが なくても継続する。しかし、RNAポリメラーゼI転写はTBPがなくなるとひどく損なわれる 。こうした結果は、TBP非依存のRNAポリメラーゼII転写性機構の存在を明らかにし 、TBPは細胞分裂や転写の開始には必須であるかもしれないが、生体内での転写を維持す るのには必要でないということを示唆するものである。(KF)
RNA Polymerase II Transcription in Murine Cells Lacking the TATA Binding Protein
    Igor Martianov, Stephane Viville, Irwin Davidson
p. 1036-1039.

グリーンランドAkiliaの古い石英岩の起源と意味(Origin and Significance of Archean Quartzose Rocks at Akilia, Greenland)

FedoとWhitehouseは、従来炭素同位元素法によって地球上の最古の生命を示す証拠を含む と考えられてきたグリーンランドの38億年前の古い石英からなる岩を再解釈し、交代作用 を受けた超塩基性の火成岩だとした(2002年5月24日号の報告 p. 1448)。これは、彼らの 主張によれば、その岩が早い時期の生物の活動を記録しているとする主張を無効にする起 源である。それぞれ別のコメントで、MojzsisとHarrison、およびFriendたちは、これら の岩における希土類の含まれ方とその他の地球化学的なパターンは、超塩基性火成岩より はむしろ古代の沈降性縞状鉄累層のものに似ていると論じ、また場の順序関係は、Fedoと Whitehouseが従来の研究で試料とされたキーとなるユニットを分析しなかったことを示唆 していると論じている。FedoとWhitehouseは、そうした従来の研究とこのたびのコメント は文献に適切に記述されてこなかった唯一の資料に頼り過ぎていると応じ、Akilia地域か ら得られた場および地球化学上のデータをより包括的に評価することで、これらの岩が交 代作用を受けた超塩基性のものであることが支持されると述べている。これらテキスト全 文は、下で読むことができる。(KF)
http://www.sciencemag.org/cgi/content/full/298/5595/917a
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