AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science December 19, 2003, Vol.302


銅が溶ける(Copper Melts)

経済的に価値のある斑状金属鉱床の形成はよく理解されていない。Harrisた ち(p.2109;Clineによる展望記事参照)は、アルゼンチンにおける銅—金鉱床中に石英 鉱脈を見出した。その鉱脈は初期の流体包有物と共存するマグマ含有物を含んでい る。その場での、高空間分解能での非破壊核顕微鏡技術を用いて、彼らはその液体 と気体の含有物が高濃度の銅を含んでいるということを結論づけた。その流動体 は、最終的には鉱床中に濃縮される銅を保持している。このような初期の共生物ま たは組合わせにより、この金属はその後の段階で混じり合わないがためにマグマか ら必ずしも分離する必要はないことを意味している。鉱床中への銅の濃縮の割合 は、これらの含有物測定から決定される分配係数を用いて追跡することが可能であ る。(KU,og)
GEOLOGY:
How to Concentrate Copper

   Jean S. Cline
p. 2075-2076.
Melt Inclusions in Veins: Linking Magmas and Porphyry Cu Deposits
   Anthony C. Harris, Vadim S. Kamenetsky, Noel C. White, Esmé van Achterbergh, and Chris G. Ryan
p. 2109-2111.

進化による登山(Evolutionary Mountain Climbing)

進化論では、遺伝子型が一度適応のピークに達すると小さな突然変異は適応性を下 げるため、それ以上に多様化する可能性が減少することを示している。Bucklingた ち(p.2107; Elena と Sanjuanによる展望記事参照)は、いくつかのバクテリア系 列(bacterial line)を実験上の微小生態系(microcosms)において多様化させるこ とを再三にわたり可能にした。7日間の培養後、フォーカルの細胞外環境(focal niche)で最も量の多い遺伝子型は最も適応した遺伝子型と仮定することができ、そ れを次の新たな培養を始めるために使用し、そして続いて起こる多様化を計測し た。予測どおり、うまく適応した遺伝子型は新たな細胞外環境(niche)の中で多様 化の能力が下がることを示していた。(TO,Ej)
EVOLUTION:
Climb Every Mountain?

   Santiago F. Elena and Rafael Sanjuán
p. 2074-2075.
Adaptation Limits Diversification of Experimental Bacterial Populations
   Angus Buckling, Matthew A. Wills, and Nick Colegrave
p. 2107-2109.

明るさで生体分子を見分ける(Brighter When Recognized)

液晶分子の配向は、基板表面の化学状態や凹凸によって変化することが知られてい る。また、圧力や温度によってもわずかではあるが変化する。Brakeらは、(p. 2094)これらの特性を利用して、シンプルなバイオセンサーを開発した。ネマチック 液晶にリン脂質を吸着させると液晶は基盤に対して垂直に配向するようになり、直 行した偏光子をほとんどの光は透過しない。しかし、ある特定のタンパク質や生体 分子がそのリン脂質と相互作用すると、液晶の配向が変化し、光を透過するように なる。配向の変化はリン脂質と生体分子の相互作用の程度で決まるため、透過光の 強弱でその生体分子を特定できるという。(NK)
Biomolecular Interactions at Phospholipid-Decorated Surfaces of Liquid Crystals
   Jeffrey M. Brake, Maren K. Daschner, Yan-Yeung Luk, and Nicholas L. Abbott
p. 2094-2097.

分子を凝縮物質に変換する(Converting Molecules into Condensates)

8年前に、ボソン原子集団の Bose-Einstein 凝縮が示されて以来、原子冷却を目指 す研究者たちは、分子やフェルミオン原子のようなより複雑な系で、縮退した同一 量子状態に到達することを目指して努力が重ねられてきた。Jochim たち (p.2101) は、2成分フェルミ気体のアンサンブルで、そのような状態を達成したという、説 得力に富んだ証拠を与えている。二量体分子の二つのフェルミオン原子間の相互作 用強度を調整することにより、彼らは、その分子が長寿命(20秒)となるような環境 を作り出している。そして、光学的に、分子のアンサンブルを捕捉し、冷却して、 量子的に縮退した状態にしている。対をなすフェルミオンのアンサンブル間の相互 作用強度が制御可能であることは、調整可能なテストシステムを用いることで、超 流動、および、超伝導の特異な状態を探し当てる可能性を切り開くものであ る。(Wt)
Bose-Einstein Condensation of Molecules
   S. Jochim, M. Bartenstein, A. Altmeyer, G. Hendl, S. Riedl, C. Chin, J. Hecker Denschlag, and R. Grimm
p. 2101-2103.

量子計算のランダム化(Randomizing Quantum Computation)

古典的な通信ネットワークや計算においては、乱数発生器へのアクセスは、率的情 報処理やエラー処理,暗号化などの効率化に必要であるばかりでなく、量子情報処 理の発展のためにも乱数演算子と乱数状態へのアクセスは必要である。しかし、量 子系のサイズが大きくなると、乱数演算子集合を用意するための資源は指数関数的 に大きくなってくる。Emerson たち(p. 2098; Pazによる展望記事参照)は、完全な 量子系の特徴を統計的に模倣することができる、一般化した擬似乱数演算子の回路 を示した。しかし、完全系に比べて、そのコストははるかに安価である。次に核磁 気共鳴量子プロセッサに実装化することで、その潜在能力を実証した。(hk)
COMPUTER SCIENCE:
Randomness in Quantum Computation

   Juan Pablo Paz
p. 2076-2077.
Pseudo-Random Unitary Operators for Quantum Information Processing
   Joseph Emerson, Yaakov S. Weinstein, Marcos Saraceno, Seth Lloyd, and David G. Cory
p. 2098-2100.

細胞あたり一個のにおい(One Smell Per Cell)

マウスの鼻の上皮にある個々の臭覚ニューロンは1000個以上ある臭覚受容体遺伝子 のうちの一つのみを発現する。このように制限された発現は、免疫系における抗体 遺伝子の選択方法を思い出させるが、しかしながら抗体遺伝子の選択と異なり、臭 覚受容体遺伝子選択のメカニズムは未知である。Serizawaたち(p.2088;Lewcockと Reedによる展望記事参照)は、この度臭覚受容体遺伝子クラスターの上流にあるDNA 領域が、どの臭覚受容体遺伝子を確率論的な形で発現するかを優先的に選択するこ とを示している。一旦選択されると、発現した遺伝子の生成物がクラスター中の他 の臭覚受容体遺伝子のいかなるものの発現をも妨げて、「一つのニューロン、一つの 受容体」の原則の維持に努める。(KU)
NEUROSCIENCE:
Enhanced: ORs Rule the Roost in the Olfactory System

   Joseph W. Lewcock and Randall R. Reed
p. 2078-2079.
Negative Feedback Regulation Ensures the One Receptor-One Olfactory Neuron Rule in Mouse
   Shou Serizawa, Kazunari Miyamichi, Hiroko Nakatani, Misao Suzuki, Michiko Saito, Yoshihiro Yoshihara, and Hitoshi Sakano
p. 2088-2094.

多様性は内部から生成される(Generating Diversity from Within)

機能的多様性を生じさせるための1つの経路はエクソンの選択的スプライシングに よる方法である。pre-mRNAの選択的スプライシングはヒトの発生、生理学や病気に も重要な役割を演じていると思われており、大多数のヒト遺伝子でも選択的スプラ イシングされている。Johnson たち(p. 2141) は、52組織と細胞系統中にある10000 以上のマルチエキソン遺伝子中のエキソン-エキソン結合のマイクロアレイ分析を 行った。選択的スプライシングのパターン中に新規なイソフォームと組織特異性が 観察され、70%以上の遺伝子は選択的スプライシングを受けていた。(Ej,hE)   
Genome-Wide Survey of Human Alternative Pre-mRNA Splicing with Exon Junction Microarrays
   Jason M. Johnson, John Castle, Philip Garrett-Engele, Zhengyan Kan, Patrick M. Loerch, Christopher D. Armour, Ralph Santos, Eric E. Schadt, Roland Stoughton, and Daniel D. Shoemaker
p. 2141-2144.

酵母を長生きさせる(Making Yeast Live Longer)

多くの生物においてカロリー制限すると寿命が長くなる。酵母では、ヒストン脱ア セチル化酵素であるSir2がこの応答に関与している。このときSir2は直接ニコチン アミドアデニンヌクレオチド(NAD+)によって活性化されるのか、あるい は、Sir2阻害剤を除去することによって見かけ上の活性化が生じているのかは、よ くわかってなかった。生体内での核磁気共鳴分光によって細胞中の遊離NAD +レベルを定量し、Andersonたち(p. 2124)は、カロリー制限によって酵母中 のNAD+レベルが減少したことを観察した。これらの結果は、食料制限に よって、この小さなSir2分子の利用度を増加することでSir2を活性化させている訳 ではないことを示唆している。(Ej,hE)
Yeast Life-Span Extension by Calorie Restriction Is Independent of NAD Fluctuation
   Rozalyn M. Anderson, Magda Latorre-Esteves, Ana Rute Neves, Siva Lavu, Oliver Medvedik, Christopher Taylor, Konrad T. Howitz, Helena Santos, and David A. Sinclair
p. 2124-2126.

ブラジルナッツは収穫が続くか?(Sustainable Brazil Nut Harvesting?)

ブラジルナッツ(南アメリカ原産の大木Bertholletia excelsaの種子)は、もっぱら アマゾン川流域の野生木の集団から採取される。そして熱帯雨林から継続的に採取 できる資源の一例としてしばしば挙げられる。Peresたち(p.2112; Stokstadによる ニュース記事参照)は、アマゾン流域のボリビア側、ペルー側、ブラジル側の内、23 箇所の地点でブラジルナッツ木の集団のサイズ構成のデータを収集した。期待に反 し、何十年間に及ぶナッツの採取は、新たな若木の補充が少なくなり、その結果多 くの集団がもはや維持できなくなっている。(TO)    
ECOLOGY:
Too Much Crunching on Rainforest Nuts?

   Erik Stokstad
p. 2049.
Demographic Threats to the Sustainability of Brazil Nut Exploitation
   Carlos A. Peres, Claudia Baider, Pieter A. Zuidema, Lúcia H. O. Wadt, Karen A. Kainer, Daisy A. P. Gomes-Silva, Rafael P. Salomão, Luciana L. Simões, Eduardo R. N. Franciosi, Fernando Cornejo Valverde, Rogério Gribel, Glenn H. Shepard Jr., Milton Kanashiro, Peter Coventry, Douglas W. Yu, Andrew R. Watkinson, and Robert P. Freckleton
p. 2112-2114.

トウモロコシの遺伝子をがらくたから分離する(Separating Maize Genes from the Chaff)

トウモロコシは、完全なゲノムの配列決定の成功を難しくさせるほど巨大なゲノム をもっている。Whitelawたち(p. 2118)とPalmerたち(p. 2115)は、遺伝子-コーディ ング領域に富んだトウモロコシのゲノム配列を作り出した。トウモロコシのゲノム は繰り返される配列をたくさん含んでいるが、非反復配列は、DNAを融解してから再 アニール化することで選択することができる。メチル化状態もまた、活発に転写さ れる配列をあまり活発でない配列から分離するのに用いられる。これらフィルター の一方あるいは双方によって、配列決定の努力を、発現した遺伝子配列に集中させ ることができるのである。(KF)
Maize Genome Sequencing by Methylation Filtration
   Lance E. Palmer, Pablo D. Rabinowicz, Andrew L. O'Shaughnessy, Vivekanand S. Balija, Lidia U. Nascimento, Sujit Dike, Melissa de la Bastide, Robert A. Martienssen, and W. Richard McCombie
p. 2115-2117.
Enrichment of Gene-Coding Sequences in Maize by Genome Filtration
   C. A. Whitelaw, W. B. Barbazuk, G. Pertea, A. P. Chan, F. Cheung, Y. Lee, L. Zheng, S. van Heeringen, S. Karamycheva, J. L. Bennetzen, P. SanMiguel, N. Lakey, J. Bedell, Y. Yuan, M. A. Budiman, A. Resnick, S. Van Aken, T. Utterback, S. Riedmuller, M. Williams, T. Feldblyum, K. Schubert, R. Beachy, C. M. Fraser, and J. Quackenbush
p. 2118-2120.

発生中の管の生成(Generating Tubes During Development)

動物の世界では、複数の器官の発生、たとえば腎臓や肺、血管の発生には管形成が 関与している。Berryたちは、適切な管形成および/またはその維持に必要な遺伝子 を、線虫(C.elegans)の排泄系について調べた(p. 2134; またPaulとBeitelによる展 望記事参照のこと)。彼らは、管腔が形成され始める時期、管の形態形成の初期に機 能する細胞内クロライドチャネルと推定されるものを同定し、その特徴を明らかに した。この遺伝子の変異は、排泄系の発生に際して、連続的な管腔チャネルではな く嚢胞(cyst)の形成を引き起こすことになる。(KF)
DEVELOPMENTAL BIOLOGY:
Tubulogenesis CLICs into Place

   Sarah M. Paul and Greg J. Beitel
p. 2077-2078.
A C. elegans CLIC-like Protein Required for Intracellular Tube Formation and Maintenance
   Katherine L. Berry, Hannes E. Bülow, David H. Hall, and Oliver Hobert
p. 2134-2137.

染色体の分離と細胞の分離(Separating Chromosomes and Separating Cells)

細胞は、染色体の分離と、紡錐体および細胞質分裂(すなわち2つの娘細胞の物理的 な分離)の活動とを、いかにして協調させているのだろう。PereiraとSchiebelは、 この疑問を酵母細胞について調べ、INCENP(内部セントラメア様タンパク質)とし て知られているタンパク質複合体の役割を発見した(p. 2120)。染色体が紡錐体の中 心に整列している中期(metaphase)には、INCENPは、染色体の中心の領域にあって染 色体の分配に際して紡錘微小管と相互作用をする動原体(kinetochores)と結びつ いている。後期(anaphase)すなわち有糸分裂の分離相には、INCENPは紡錘微小管に 場所を移し、そこで中間帯の限定とそれによる細胞質分裂溝の位置の限定を助ける のである。INCENPのこの移動は、細胞周期脱リン酸酵素cdc14によって促進される が、このcdc14は染色体の制御装置のセパラーゼによって刺激されて作用する。この ように、cdc14は有糸分裂の終わりと紡錘特性を協調的に制御することで、忠実な細 胞質分裂を保証するのである。(KF)
Separase Regulates INCENP-Aurora B Anaphase Spindle Function Through Cdc14
   Gislene Pereira and Elmar Schiebel
p. 2120-2124.

キネシンが踏むステップ(How Kinesin Does the Two-Step)

双頭のモータータンパク質キネシンは、微少管に沿って8 nmのステップで移動する が、それについて考えられるメカニズムは、大きく分けて2つのクラスに分類するこ とができる、--すなわち、hand-over-hand型メカニズムとシャクトリムシ型メカニ ズムである。hand-over-hand型メカニズムでは、2つの頭部が先導する役割とそれを 追いかける役割とをそれぞれのステップごとに交代で行うが、一方シャクトリムシ 型メカニズムでは、1つの頭部が常に先導する役割を果たす。Asburyたち(p. 2130)は、いくつかのキネシン分子が、連続したステップのそれぞれにおいて、2種 の異なる速度を交互に繰り返しており、それにより効果的に微少管に沿って跛行す るように移動していることを示した。このように、ステッピングは非対称性である はずであり、このことからシャクトリムシ型メカニズムと対称性のhand-over-hand 型メカニズムの可能性は排除され、非対称性のhand-over-hand型メカニズムの可能 性を支持するものである。Yildizたち(12月18日のサイエンスエクスプレス)は、 平均的なステップが、0 nmのステップと17 nmのステップとにより交互に構成されて いることを示した。(NF)
Kinesin Moves by an Asymmetric Hand-Over-Hand Mechanism
   Charles L. Asbury, Adrian N. Fehr, and Steven M. Block
p. 2130-2134.

微生物を識別する方法(Dissecting Microbial Discrimination)

ショウジョウバエにおけるグラム-陽性細菌による感染に対する抵抗力は、Tollパ ターン認識経路による抗菌性ペプチドの誘導に依存している。Toll受容体の活性化 に引き続いて、まだ完全には解明されていないメカニズムを介して、その推定リガ ンド前駆体、Spaetzleのタンパク質分解性切断が生じる。Gobertたち(p. 2126) は、遺伝的変異体スクリーニングを使用して、グラム-陰性結合性タンパク質 1(GNBP1)が、グラム-陽性細菌による感染の後のショウジョウバエの生存には重要 であるが、真菌またはグラム-陰性細菌による感染の後のショウジョウバエの生存に は重要ではないことを明らかにした。同様の役割は、ペプチドグリカン認識タンパ ク質SAについてすでに立証されている。2種類のタンパク質は、Spaetzleを活性化す るタンパク質分解性カスケードの活性化という点で協力している可能性がある。こ のように、無脊椎動物のパターン検出反応は、今まで認識されてきたよりもずっと 複雑である。(NF)
Dual Activation of the Drosophila Toll Pathway by Two Pattern Recognition Receptors
   Vanessa Gobert, Marie Gottar, Alexey A. Matskevich, Sophie Rutschmann, Julien Royet, Marcia Belvin, Jules A. Hoffmann, and Dominique Ferrandon
p. 2126-2130.

スイッチ切り替え(AIDing the Switch)

抗体は、抗体が意図する機能に依存して、いくつかの形態で産生することができ る。このことは、クラススイッチ組換え(CSR)として知られているプロセスを介し て達成され、それにより抗体分子の機能性末端をコードするエクソンが、連続的に 別のものと置換され、異なる転写物が形成される。この現象が起こるために、おそ らくは生殖細胞の抗体遺伝子座が転写される時に、CSRが生じる場所であるスイッチ 領域での染色質の接近可能性が変化することが必要とされる。Nambuたち(p. 2137)は、スイッチ領域のヒストンアセチル化--すなわち、活動性の染色質の特徴 --が検出できる時と同時に、RNA/DNA編集酵素、活性誘導型シチジンデアミナー ゼ(AID)が、スイッチ領域と結合していることを示した。AIDは、クラススイッチ 組換えに重要な役割を果たしており、そしてそれが染色質を標的とする可能性か ら、その役割は直接的であり、おそらくは転写機構との相互作用を介している可能 性があることが示唆される。(NF)
Transcription-Coupled Events Associating with Immunoglobulin Switch Region Chromatin
   Yukiko Nambu, Manabu Sugai, Hiroyuki Gonda, Chung-Gi Lee, Tomoya Katakai, Yasutoshi Agata, Yoshifumi Yokota, and Akira Shimizu
p. 2137-2140.

重い電子系における超伝導性を明らかにする(Revealing Superconductivity in Heavy Electron Compounds)

相関電子系における超伝導を研究するひとつの方法は、これらの物質のさまざまな 族の相図における共通な挙動を明らかにすることである。Yuan たち (p.2104) は、 重い電子系、Ge-置換 CeCu2Si2 の相図に関する詳細な実験データを発表してい る。彼らは、その物質中に、二つの別個の超伝導相がある証拠を与えている。その 一つは、磁気的秩序の開始近くの磁気的な対生成メカニズムに基づくものであり、 もう一つは、価電子の状態密度が突然に変化する近傍近くで生ずるものである。彼 らは、両方のメカニズムは、相関電子系の他のクラスにも一般的に適用できる可能 性があると示唆している。(Wt)
Observation of Two Distinct Superconducting Phases in CeCu2Si2
   H. Q. Yuan, F. M. Grosche, M. Deppe, C. Geibel, G. Sparn, and F. Steglich
p. 2104-2107.

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