AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science April 26, 2002, Vol.296


速報(Brevia)

カーボンナノチューブの発火と再構成(Nanotubes in a Flash--Ignition and Reconstruction) 単層カーボンナノチューブ(SWNT)は、小さいこととその構造がユニークであることから 様々な性質を示すことが知られているが、今度はカメラのフラッシュ光に反応して発火 したり構造を変えたりすることが発見された。フラッシュは大気中に置かれたSWNTから 数センチ離れた場合に発火しするが、多層ナノチューブ、グラファイト、煤、 C60では発火しない。発火した後には、二酸化炭素、一酸化炭素の他に、構 造の乱れた物質が少量の痕跡が残る。発火に伴ってトラップガスが放出され、超音波も 発せられる。真空中や希ガス中でSWNTにフラッシュ光を浴びせると、驚くほどの構造変 化が生じ、雰囲気によって様々な構造が生じる。特に大気中では単層ナノコーンが多数 生成される。(Ej,hE)
Nanotubes in a Flash--Ignition and Reconstruction
   P. M. Ajayan, M. Terrones, A. de la Guardia, V. Huc, N. Grobert, B. Q. Wei, H. Lezec, G. Ramanath, and T. W. Ebbesen
p. 705.

原子核とともに突進する電子(Electrons Racing with Nuclei)

Born-Oppenheimer 近似により、理論家は、分子の中ではるかに高速で軽い電子の運動を 原子核の運動とは別に扱うことが可能となる。開殻構造の F や Cl のようなハロゲン原 子と H2 との反応においては、三つのポテンシャルエネルギー表面 (potential energy surfaces PES) により、その反応は記述される。もし、 Born-Oppenheimer 近似が成り立つのならば、最低エネルギーの PES のみが、生成物を作 るのに寄与するはずである。確かに、F に対しては、これは 10% の範囲で正しいが、よ り重い Cl 種に対しては、ずっと小さな寄与が予想される。それにも関わらず、最近の実 験的な結果は、Cl 反応に対してより高エネルギーのスピン-軌道 PES が主要な反応チャ ネルであることを示唆している。Alexander たち (p. 715; Manolopoulos による展望記 事を参照のこと) は、そのスピン-軌道 PES は、非常に低エネルギーの場合以外は、反応 性に寄与していないように思われること、そして、非弾性反応チャネルが基底状態から開 いていることを示している。理論と実験との不一致の原因は明らかではなく、いっそうの 研究の必要性を示している。(Wt)
Experimental Quantum Cloning of Single Photons
    Antia Lamas-Linares, Christoph Simon, John C. Howell, and Dik Bouwmeester
p. 712-714.

水蒸気が果たす気候への役割(The Role Not Taken)

水蒸気はもっとも重要な温室効果ガスであるが、地球温暖化に起因する水蒸気濃度上昇が 更なる温暖化を促すのか、それとも低温化を促すのか、については議論がある。水蒸気が 地球から発生する長波長の放射をより多く吸収するなら温暖化が促進される(正のフィ ードバック)。水蒸気がより多くの雲を形成し、その結果より強く太陽光を妨げるなら低 温化が促進される(負のフィードバック)。Sodenたちは(P. 727、Del Genioの展望も参照) 、1991年のPinatubo山噴火後に発生した大気の低温化と乾燥化の観測データを大気の汎用 循環モデルとして用い、これら両方の可能性について検証した。水蒸気のフィードバック を考慮に入れたモデルと入れないモデルで噴火後の低温化と、水蒸気減少という観察結果 について比較し、水蒸気の正のフィードバックが無ければ低温化を正確に再現できないこ とを証明した。これらの結果は、最近の気候モデルが水蒸気の役割を正確に組み込んでい ることを示唆している。(Na)
Global Cooling After the Eruption of Mount Pinatubo: A Test of Climate Feedback by Water Vapor
    Brian J. Soden, Richard T. Wetherald, Georgiy L. Stenchikov, and Alan Robock
p. 727-730

大陸斜面の傾斜を保つ(Maintaining Continental Slopes)

大陸斜面は、2度から4度の一定した角度を保っている。これは、大陸侵食(continental erosion)と海洋力学との均衡によって安定な形状状態のが保たれていることを示している 。Cacchioneたち(p.724)は、大陸斜面よりも低い角度の、半日周期の内部潮汐波は、海底 面に向かって反射され、斜面と海底面に沿ってその速度と剪断応力(shear stresse)とが 増加する。この過剰エネルギーは、微粒子の堆積が斜面に沿って集まらないようにし、そ の結果角度が保たれる。これらのモデルは、北カリフォルニア海岸やニュージャージ海岸 での観測と一致しており、大陸化プロセスと海洋化プロセスとの関係を理解することにも 用いることが出来る。(TO,Og)
The Shaping of Continental Slopes by Internal Tides
    D. A. Cacchione, L. F. Pratson, and A. S. Ogston
p. 724-727

量子クローニングによりうり二つに出会う(Seeing Double with Quantum Cloning)

量子力学に内在する不確定性は、量子状態の完全なコピーすなわち"クローニング"の作成 能力に制限を課す。多くの理論的研究は、コピーをいかにうまく作りうるかに焦点を当て てきた。Lamas-Linares たち (p.712) は、ひとつの光子の分極状態のクローニングの実 験的例証を与えている。ある光子と非線型結晶中の2倍周波数の光子とが一致しているこ とは、二つの光子の生成という結果に帰着する。その光子のひとつは、入力した光子のク ローンである。測定された忠実度 0.81 は、理論的限界である 0.83 に近い。(Wt)
Experimental Quantum Cloning of Single Photons
    Antia Lamas-Linares, Christoph Simon, John C. Howell, and Dik Bouwmeester
p. 712-714

種が少ないほど収量増加(When Less Is More)

草地の生態系では、従来植物種が多い方が草地全体の収量も多くなると言われていた。 Paine (p. 736) は、ワシントン州のTatoosh島の間潮岩礁地帯で数年間繰り返し実験し 、この従来説が必ずしも正しくないことを示した。ケルプ、草食動物、捕食動物が混合し た自然のままの生態系は多様性に富む植物集合となっており、これはこの生態系の主な草 食動物の選択的食性によって維持されている。もしこの1種の草食動物を実験的に取り除 くと1種の植物が優占種となり、総生産量が増加した。この場合は、種の多様性と植物生 産量は負の相関があることになる。(Ej,hE)
Trophic Control of Production in a Rocky Intertidal Community
    Robert T. Paine
p. 736-739

変り易いフィンチ(小鳥)

脊椎動物の自然母集団における進化についての連続的で長期的研究は殆どされていない 。そして 我々は、淘汰の一貫性、進化の応答あるいは交雑の頻度、もしくは変化が漸進 的か偶発的であるかに対して殆ど見識を持っていない。GrantとGrant(p. 707; Zimmerに よるニュースを参照)は30年以上ガラパゴスにおけるダーウィンのフィンチ(訳注:ガラ パゴス諸島の島に固有の、くちばしの形が変化したフィンチで、ダーウィンの進化論に強 い影響を与えたことで知られている。)を研究していた。そして彼らの一式のデータは 、進化過程における予想可能な要素と予測不可能な要素の相互作用を長期的に観測したも のを提供している。(hk)
Unpredictable Evolution in a 30-Year Study of Darwin's Finches
    Peter R. Grant and B. Rosemary Grant
p. 707-711.

未だ精神分裂病遺伝子は見つからない(Still Searching for Schizophrenia Genes)

精神分裂病に関係する遺伝子は長年探索されており、紛らわしいものでもある。Levinson たち(p. 739) は精神分裂症の800家族を対象にした現在続行中の多施設間共同研究成果を 示し、過去、複数の研究によって精神分裂症との関連が指摘されていた染色体上の「候補 」領域について評価した。以前の報告(その内の1つはScienceに掲載された)では領域 1qが強い関連を持つ領域として示唆されていたが、今回の研究では関連があるとの証拠は 1つも見つからなかった。このことから、領域1qと精神分裂症の関係は、あったとしても 集団レベルでは極めて小さな関連であろうことが推察される。(Ej,hE)
No Major Schizophrenia Locus Detected on Chromosome 1q in a Large Multicenter Sample
    Douglas F. Levinson, Peter A. Holmans, Claudine Laurent, Brien Riley, Ann E. Pulver, Pablo V. Gejman, Sibylle G. Schwab, Nigel M. Williams, Michael J. Owen, Dieter B. Wildenauer, Alan R. Sanders, Gerald Nestadt, Bryan J. Mowry, Brandon Wormley, Stephanie Bauche, Stephane Soubigou, Robert Ribble, Deborah A. Nertney, Kung Yee Liang, Laura Martinolich, Wolfgang Maier, Nadine Norton, Hywel Williams, Margot Albus, Eric B. Carpenter, Nicola deMarchi, Kelly R. Ewen-White, Dermot Walsh, Maurice Jay, Jean-Francois Deleuze, F. Anthony O'Neill, George Papadimitriou, Ann Weilbaecher, Bernard Lerer, Michael C. O'Donovan, Dimitris Dikeos, Jeremy M. Silverman, Kenneth S. Kendler, Jacques Mallet, Raymond R. Crowe, and Marilyn Walters
p. 739-741

ネズミ毒素Misnomer (Murine Toxin Misnomer)

ペストはペスト菌が原因であるが、この伝染はノミに噛まれることで行われる。近縁の細 菌では、ヒト宿主との間に、こんな迂回経路は採らない。Hinnebusch たち (p. 733)は 、いわゆるエルシニアネズミ毒素がノミによる感染の鍵を握っていることを明らかにした 。毒素はホスホリパーゼD酵素であり、ノミの腸の中での活性が感染成立に重要な役目を 担っている。(Ej,hE)
Role of Yersinia Murine Toxin in Survival of Yersinia pestis in the Midgut of the Flea Vector
    B. Joseph Hinnebusch, Amy E. Rudolph, Peter Cherepanov, Jack E. Dixon, Tom G. Schwan, and Ake Forsberg
p. 733-735

採食行動は種によって異なる(Not All Foraging Is the Same)

遺伝子が環境と相互作用してどのように行動に影響を及ぼすかを包括的に理解することが 、いよいよ現実味を帯びてきた。Ben-Shaharたち (p. 741; Pennisiによるニュース記事 参照)は、ショウジョウバエでは遺伝子型の変異が食料調達行動に影響を及ぼすことが知 られているが、この同じ遺伝子が、ミツバチの行動成熟の過程での発現の制御を介して採 食行動に影響を及ぼすことを報告した。この採食行動遺伝子(foraging)は、多くのシグナ ル伝達経路の中心的役割を請け負うグアノシン 3',5'-一リン酸依存性プロテインキナ ーゼをコードする。このようにこの遺伝子は驚くほど異なった時間のスケールに渡って 、進化にも発生にも影響を及ぼす。(Ej,hE)
Influence of Gene Action Across Different Time Scales on Behavior
    Y. Ben-Shahar, A. Robichon, M. B. Sokolowski, and G. E. Robinson
p. 741-744

植物の抵抗を喚起する(Rousing the Resistance in Plants)

「遺伝子のための遺伝子」仮説は、長い間、特定の植物が特定の病原体からの感染抵抗を つけていくことの説明としてとして役立ってきたが、いまや複雑に込み入ってきた。新た な植物遺伝子のRcr3が特定の真菌エリシター(訳注:エリシターは高等生物に防御反応を 引き起こさせる物質)とそれに関係した植物細胞膜中に局在化した植物コードタンパク質 の間の相互作用に関係していることがわかった。Krueger たち(p. 744) は、この真菌の 感染に応答して植物細胞からプロテアーゼのRcr3が分泌されることを示している。Rcr3の 機能は病原体侵入へのロバストな(環境の影響を受けにくい)応答として必須である。 (Ej,hE)
A Tomato Cysteine Protease Required for Cf-2-Dependent Disease Resistance and Suppression of Autonecrosis
    Julia Krüger, Colwyn M. Thomas, Catherine Golstein, Mark S. Dixon, Matthew Smoker, Saijun Tang, Lonneke Mulder, and Jonathan D. G. Jones
p. 744-747

T細胞の癒し(Healing Touch of T cells)

T細胞受容体を有する樹状表皮性gd T細胞(DETCs)は、活性化されるとケラチノサイト増 殖因子とケモカインを産生し、それにより皮膚の完全性に寄与すると考えられている。 Jamesonたち(p. 747)は、DETCsが創傷修復に直接的に関与していることを示すことによ り、DETCsがケラチノサイトの損傷に反応して成長因子を発現することを示した以前の研 究を拡張した。gd DETCを欠損するマウスでは、正常な数のDETCsを有するマウスと比較し て創傷治癒の速度が半分になり、それだけでなくケラチノサイト増殖が顕著に減少するこ とが示された。皮膚器官培養システムにおいて、gd DETCが存在しない場合の創傷修復お よびケラチノサイト増殖の減少は、ケラチノサイト成長因子を添加することにより、正常 化することができた。したがって、皮膚gd T細胞は、迅速な創傷治癒を可能にする際に重 要な役割を果たしているようである。(NF)
A Role for Skin T Cells in Wound Repair
    Julie Jameson, Karen Ugarte, Nicole Chen, Pia Yachi, Elaine Fuchs, Richard Boismenu, and Wendy L. Havran
p. 747-749

ゆっくりと変化するパートナー分子(Slowly Changing Partners)

多量のゲノム情報およびプロテオーム情報により、現在は、タンパク質相互作用ネットワ ークの基本的特性および進化について解析することができる。進化速度を見積もるために 、Fraserたち(p. 750)は、酵母(Saccharomyces cerevisiae)および線虫( Caenorhabditis elegans)における推定オルソロガスタンパク質を対比した。予想された ように、高度に相互作用性のタンパク質が、あまり関連しない対応する分子よりも、生存 に必要とされるようであるならば、高度に関係したタンパク質はよりゆっくりと進化する ようでもある。しかしながら、著者たちの解析から、相互作用性のタンパク質の進化速度 を制限しているものは、より高い比率の分子それ自体が物理的な相互作用に関与している ためであることが示される。相互作用するパートナー分子の変化は、その他のパートナ ー分子における相互変化に対する選択圧を生じる場合にのみ維持されると予想される。こ の要求性は、相互作用するパートナー分子に対して同様な進化速度を必要とするようであ る。(NF)
Evolutionary Rate in the Protein Interaction Network
    Hunter B. Fraser, Aaron E. Hirsh, Lars M. Steinmetz, Curt Scharfe, and Marcus W. Feldman
p. 750-752

遺伝子の変異(Variations on Some Genes)

転写レベルを調節する具体的な遺伝子を同定するために、Bremたち(p. 752)は、酵母の 研究室株および同じ条件下で増殖した野生株に由来する天然単離株に由来する遺伝子の発 現パターンを対比し、そしてディファレンシャルに発現する1500以上の遺伝子を見出した 。著者たちは、2系統間での交雑に由来する子孫を解析し、そして308の相違は、メンデル の様式で分離し、そしてマッピングできることが見いだされた。遺伝子発現の変異は、典 型的には多数の遺伝子により調節されていた;8種類は、トランス-活性化型で、幅広い転 写作用を有するようである。(NF)
Genetic Dissection of Transcriptional Regulation in Budding Yeast
    Rachel B. Brem, Gael Yvert, Rebecca Clinton, and Leonid Kruglyak
p. 752-755

陰イオンがソースかシンクを決定する(Anion Determines Source or Sink)

地殻の岩石と土壌中に見られる微量無機質相であるハイドロタルサイト (hydrotalcites)は、ハイドロタルサイトの組成に依存して水に混入する二価金属に とっての重要なシンクあるいあはソースである。Alladaたち(p. 721)はコバルト-アルミ ニウム・ハイドロタルサイトの生成熱を測定するために熱量測定法を用い、水溶 性を決定するのは陽イオンよりも陰イオンの方が重要であることを実証した。例えば、陰 イオンがCO32-であるならば、そのときハイドロタル サイトは水に容易に溶解せず、したがって汚染重金属に対する吸収源となりうる。ところ がもし陰イオンがNO32-であるならば、そのときハイド ロタルサイトは水により容易に溶解し、その結果重金属汚染を引き起こす放出源となりう る。(hk,Og,Nk)
Thermochemistry and Aqueous Solubilities of Hydrotalcite-Like Solids
    Rama kumar Allada, Alexandra Navrotsky, Hillary Thompson Berbeco, and William H. Casey
p. 721-723

ふさわしいパートナーとだけ(Only the Right Partners)

アキラルな物質は平面内に閉じ込められるとキラルになる。GrzybowskiとWhitesides(p. 718)は、流体ー空気界面に閉じ込められたときに磁性プレートを右手(R)と左手(S)の掌性 とする尾部を持ったミリメートルサイズの磁気プレートを研究している。回転磁場の影響 下で、このプレートも回転するが、その掌性によって異なる局所的な流れの場を創り出す 。Rプレートが流体の流れと結合すると、トレーサ色素やトレーサ粒子の解析で明らかな ようにプレート間で引力が生じている。一方、Sプレーとでは反撥力が生じている。この 結果は、RプレートがフリーなRプレートによりもたらされる複雑な相互作用によりダイポ ールを形成し、一方SプレートはSとR物質の両方で反撥されているということである。二 つの尾部の片方に付与したり、或いはその形状を狭めたりしてそのプレートを変えると 、形成される集合体のタイプが変わる。(KU)
Dynamic Aggregation of Chiral Spinners
    Bartosz A. Grzybowski and George M. Whitesides
p. 718-721

異常発生を判定する(Judging the Blooms)

例えば北大西洋で毎年春に発生するような植物プランクトンの異常発生(Phytoplankt on blooms)は、大気の莫大な量の二酸化炭素を固定する。1950年代初期に、Sverdrupは、異 常発生を起こすために必要な条件を示す単純なモデルを作った。そのモデルでは、光合成 は光にのみ制約され、局所的な照射量の線形関数であると仮定していた。しかし、光合成 による有機炭素(organic carbon)生成の総量が呼吸による有機炭素損失両と補償的照射量 (compensation irradiance)と呼ばれるその他のプロセスとの総量とが等しいとした光の レベルの評価は、1桁以上の差があった。Siegelたち(p.730)は、1998年から2000年の期 間に北大西洋で春に起こる植物プランクトン異常発生の特性を表すSeaWiFS からの人工衛 星データと水位測定(hydrographic measurements)とを組み合わせて、広域な規模の有機 栄養の生産量の評価を行った。その結果、コミュニティ呼吸(community respiration)の およそ2分の1が植物プランクトンの呼吸によるものと示される。(TO)
The North Atlantic Spring Phytoplankton Bloom and Sverdrup's Critical Depth Hypothesis
    D. A. Siegel, S. C. Doney, and J. A. Yoder
p. 730-733

メディエータといっしょに働く(Working with the Mediator)

真核生物のRNAポリメラーゼIIによって転写される遺伝子の転写活性に関するメカニズム については良く分かってない。転写活性因子は、活性化補助因子をプロモータに補充する が、次にプロモータはポロメラーゼ分子と共働して、これを制御する。酵母ではメディエ ータ活性化補助因子複合体が、転写活性化因子タンパク質とメディエータの特異的サブユ ニットの相互作用を通じてプロモータに補充される。Stevensたち(p. 755)はこのモデル を、更により高等な真核生物に拡張し、特異的活性化因子は、哺乳動物メディエータ複合 体のSur2サブユニットとの特徴的相互作用によってRas-マイトジェイン活性化プロテイン キナーゼ情報伝達経路に転写応答を仲介できることを示した。(Ej,hE)
Transcription Control by E1A and MAP Kinase Pathway via Sur2 Mediator Subunit
    Jennitte L. Stevens, Greg T. Cantin, Gang Wang, Andrej Shevchenko, Anna Shevchenko, and Arnold J. Berk
p. 755-758

銀ナノワイヤーの電子顕微鏡解析(Electron Microscopic Characterization of Silver Nanowire Arrays)

Hongたち(Reports、12 October 2001,p. 348)は、直径約0.4nm、長さ1μ程度の単結晶銀 ナノワイヤーのアレーを合成したことを報告し、制御視野電子線回析(ED)パターンと共に 高分解能電子顕微鏡(HREM)画像でもってその主張を裏付けている。コメントにおいて、 IjimaとQinは、提示されたサンプルは「実際にはナノワイヤーのアレーを示しているので はなく、大きな欠陥を持った針状の銀の結晶」であり、積層欠陥と針状軸に平行に配列し た双晶面により、観察されたようなアレー状の幾何構造を示していると主張している。 Hongたちは、EDパターンや電子エネルギー損失スペクトル、及び赤外線スペクトルの詳細 な解析をして、その画像がバルクな銀を表現しているというIjimaやQinの主張を支持して おらず、逆にナノワイヤーであるという解釈に更に良く一致していると反論している。こ のコメントの全内容は
www.Sciencemag.org./content/full/296/5568/611a を参照。(KU)
Electron Microscopic Characterization of Silver Nanowire Arrays
    Sumio Iijima, Lu-Chang Qin, Byung Hee Hong, Sung Chul Bae, Suk Joo Youn, and Kwang S. Kim
p. 611

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