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- 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約
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Science November 30, 2001, Vol.294
速報 (In Brevia ...)
まさに絶滅の危機に瀕している北太平洋ホッキョククジラ(Eubalaena japonica)は 、Tynanたち(p.1894)によると過去50年間にその習性と捕食生物を変えてきたが、依然 として絶滅の瀬戸際にある。Lanzaたち(p.1893)により続けられているクローン牛に関 する注意深い記録は、110回の妊娠から生存した24の成牛は、妊娠や出産の期間は通常 よりも高い死亡率にあるのにも関わらず、完全に健康であることを示している。(TO)
光生成による銀製三角形状ナノプリズム(Photogenerating Triangular Silver Nanoprisms)
ナノパーティクルの液相合成におけるひとつの重要な挑戦課題は、生成物の高い全収率を 維持しながら、パーティクルの大きさと形状を制御することである。Jin たち (p.1901) は、可視光によって、球状の銀粒子をほとんど完全に、エッジの長さが 100
15
nm の薄い三角プリズムに変換することができることを示している。こ れらのナノパーティクルの三角形状のため、赤色領域において二つの明確な四重極プラズ モン共鳴とレイリー散乱が存在するという、異常な光学特性を示す。これらは、球形粒子 では、むしろ青色において典型的なものである。(Wt)
液体核の剛性(Rigidity in the Liquid Core)
地球の外核は、鉄の豊富な液体からなっているが、それの化学状態と構造の相違は核の対 流と章動 (地球がその軸に対して歳差運動する時に、太陽に向けて地球が僅かな頷きを示 すこと)に対してある効果を及ぼしている。Rost と Revenaugh (p.1911) は、外殻の上表 部で薄く(約 0.2km)、硬い領域を見出した。そして、この領域は、鉄合金の液体と、鉄合 金と酸化鉄からなる固体粒子の混合物であると推測している。(Wt)
シグアトキシンの合成に取り組む(Tackling Ciguatoxin Synthesis)
海洋魚介類の多くは双鞭毛藻類 Gambierdiscus Toxicusがつくるシグアテラ( ciguatera)神経毒に対する媒介動物であり、これによって亜熱帯地域や熱帯地域におい て20.000人を越える人が魚介類中毒にかかっている。この毒素に対する抗毒素の開発は 魚介類に存在するこの毒素の極めて低い含有量のために困難となっている。Hiramaたち (p.1904;Markによる展望参照)は、比較的複雑な二つの断片を収束した集合体により シグアトキシンの一つ、CTX3Cの全合成に関して報告している。(KU)
極性の有機構造体(Polarizing Organic Frameworks)
分子の双極子が一方向に配列している極性の結晶は強誘電性や光の振動数を倍にするとい った有用な特性を持っている。有機結晶は固体状態でより意図した結合を設計しうる可能 性をもっているが、有機分子の双極子は結晶中で打ち消しあって非極性の構造を形成しが ちでる。Holmanたち(p.1907)は、ゲスト分子を包接する有機のホスト構造をアキラルな バナナ形状の架橋分子を用いて修飾すると、全体が極性をもつ構造が形成される事を示し ている。ゲスト分子をうまく選定すると、第二高調波を発振する結晶を作ることが出来る 。(KU)
火星上の水素(Hydrogen on Mars)
火星上の水素分子は、CO
2
を主成分とする火星の大気のなかに存在する物質 の中で比較的微量な物質だが、火星の大気と土壌中の化学的安定性に寄与しており、過 去、火星には大量の水が存在していたことの証拠を提供している。Krasnopolskyと Feldmanは(p. 1914、Huntenによる展望も参照)、遠紫外線分光探査機(FUSE:Far Ultraviolet Spectroscopic Explorer)を用いて火星大気上空のH
2
の量を観 測した。彼らは大気中にCOとO
2
の蓄積を防ぐに十分なH
2
が存在 することを発見し、土壌中に水素ベースのオキシダントの存在することを説明した。又 、初期の火星には地球よりも(惑星の重量比率に対して)豊富な水が存在していたことを 示唆する。(Na)
CD8の機能を再考(Revising CD8 Function)
腸の上皮内リンパ球(IEL)は、腸の上皮表面上に存在するが、このT細胞クラスのメンバ ーの多くがCD8α分子のホモタイプ形成を発現する。この分子は、IEL生物学における役割 が今まで説明されていなかった。Leishmanたち(p. 1936;LambolezとRochaによる展望記事 参照)は、CD8ααのホモ二量体がTLという主要組織適合複合体様分子と相互作用すること を示している。TLは腸の上皮細胞で発現される。CD8ααがTLと相互作用すると、細胞分 裂と抗原特異的IELのサイトカイン産生が増加したが、細胞障害活性のような他のエフェ クター機能は抑制される。このようにCD8ααは、典型的な補助受容体ではなくむしろ腸 のT細胞の活性を変調する調節分子として作用するのかもしれない。(An)
メッセンジャRNAの交通管理(Managing Messenger RNA Traffic)
受容体とアダプタという2つのタンパク質クラスは、正常に処理されたメッセンジャ RNA(mRNA)を認識し、細胞質における核膜の細孔を通してmRNAを出入することを促進す る。アダプタは直接mRNAと結合するが、受容体は核孔の複合体(NPC)とアダプタと相互 作用する。タンパク質とタンパク質との相互作用の可能な組合せが重複するために、ア ダプタと受容体の対を見いだすのが困難であった。両方のタンパク質は、再利用のため NPCを通してリサイクルされなければならない(MooreとRosbashによる展望記事参照) 。GallouziとSteitz(p 1985)はこのたび、mRNAの細胞への運動の全体を邪魔せずに、受 容体とアダプタの対の相互作用を選択的に抑制する細胞浸透性ペプチドを開発した 。(An)
トップダウンに起こる損失(Losses Coming from the Top Down)
自然生息地の断片化は、肉食動物が存在しないことで引き起こされる群集レベルの食物 連鎖の玉突き現象(trophic cascade)を作り出してきた。Terborghたち(p.1923;Diamond による展望記事参照)は、中央ベネズエラにあるGuriダムプロジェクトにより熱帯の森 林が崩壊したため、肉食動物の生息数を維持できなくなっていることを示す。草食動物 は過度に発生して、それは林冠の木の補充量をかなり越えている。そしてこれは植生全 体の大規模な衰退と種の多様性喪失の前兆となっている。(TO)
飛行中の吸気をコントロールする(Controlling Air Intake During Flight)
ショウジョウバエは、拡散を利用した呼吸系を有しているが、飛行中の過剰な水分喪失 を避けつつ一方で激しい呼吸にエネルギーを与えるための十分なガス交換を維持しなけ ればならない。ガス交換を媒介する気門の開口は、力の産生の強度に適合するように整 調されているのだろうか?このなぞを解くため、Lehmann(p. 1926)は、個々のメスの Drosophilaをガスタイトチャンバー中の支持体に糊付けし、そして水およびCO2の放出 をモニターすることにより、気門の開口を間接的に測定した。著者は結果について、ハ エは、飛んでいるあいだには、以前に示唆されていたように気門を開けたままにするの ではなく、ハエの代謝要求性に対応して気門の開口サイズをいくらか調整していること を示していると、解釈する。(NF)
ウィルスの動きを観察する(Watch a Virus Make Its Moves)
我々の多くは、微生物学の最初の授業で、ゾウリムシ(Paramecia)がその餌を取り込 んでいく映像を見たことだろう。Seisenbergerたち(p. 1929;Beckmanによるニュース 記事を参照)はここで、読者に、単一のウィルス粒子が、細胞に付着し、エンドサイト ーシスを介して内部に取り込まれ、細胞質中で壊れ、そして核に到達し、そこで宿主機 能の無差別な乗っ取りが始まることを記録する、リアルタイム蛍光ビデオを提供する 。この侵入者、アデノ関連ウィルス、はウィルスを基礎とする遺伝子治療アプローチの ための第一の候補であるため、予期せぬほどに移行時間が短いことは、特に興味深いこ とである。(NF)
Gタンパク質と小胞輸送(G. Proteins and Vesicle Trafficking)
細胞のシグナルを弱めることは、これを誘導するときと同じように重要である。例えば 、Gタンパク質情報伝達制御因子(RGS)タンパク質は、受容体と共役したヘテロ三量体G タンパク質からの情報発信を変調する。Zhengたち(p. 1939; von ZastrowとMostovによ る展望記事参照)は、Gタンパク質のGα
s
クラスの、よく分かってなかった RGSを同定した。これはRGS-PX1と名づけられたが、これは膜と相互作用するPhoXドメイ ンを含んでおり、このドメインの存在によってGタンパク質信号伝達と細胞内の小胞輸 送を結び付けていると思われる。(Ej,hE)
脂質と免疫抑制(Lipids and Immunosuppression)
分裂促進剤や、その他の刺激を細胞に加えることによって脂質ホスファチジン酸(PA)を 産生するが、出来たPAは第2のメッセンジャーとして色々な細胞応答を促進する。Fang たち(p. 1942)は、脂質の分裂促進的効果を持っていると思われるPA結合によって制御 される新規な標的を同定した。PAで処理された細胞中では、ホスファチジルイノシト ール・キナーゼ様の酵素であるmTORタンパク質(このように呼ばれている理由は、免疫 抑制薬rapimycinの哺乳類標的だから:mammalian target of the immunosuppressant rapimycin)は活性化される。分裂促進薬によって刺激されたヒト細胞はPAの蓄積が促 進され、PA産生阻害剤は、mTORによる情報伝達を阻止した。この結果から、PAは分裂促 進剤のmTOR活性化の効果を仲介し、rapimycinがPAの結合をブロックすることによって mTORの機能を阻害するのかも知れない。(Ej,hE)
臭いをとらえる方法(How to Catch a Smell)
ロブスターは第一触角にある小さな毛髪状のアレイでもって臭いを嗅ぎつける。この第 一触角の動きが空間的な臭いのパターンを乱すことがあるのだろうか? Koehlたち (p.1948)はレーザ光と高速ビデオ画像装置を用いて、このような第一触角による螢光 色素の流れを可視化し、色素の小さな空間的パターンが第一触角の上から下への速い動 きの間に、僅かな初期の乱れと共に受容体領域に入り込んでいることを見い出した。空 間的パターンは戻りの動きとその後に続く停止の間わずかにぼやけただけであった。 (KU)
表面の加齢(Surface Aging )
プランクトンの有孔虫類は、水面の放射性炭素による年代と、大気から直接獲得された 若い炭素の「真の」年代と、深層水から得られたより古い炭素の「蓄積年代」の混合物 であることを物語っている。Sianiたち(p. 1917; Adkinsによる展望記事参照)は、独 立に年代を推定できる火山灰層に含まれるプランクトン有孔虫類の放射線炭素年代を調 べることによって、過去16,000年間の地中海水面の蓄積年代を決定した。蓄積年代は約 14,000年前にほとんど2倍になった。それを説明するために、著者たちは最終氷河の開 始時期に起きた北大西洋海洋循環における変化について詳しく述べている。(hk)
幹細胞の大循環(Greater Circulation of Stem Cells)
造血幹細胞や、これに関連する前駆細胞は、多くの場合骨髄中に存在すると思われてい るが、稀には循環血液中に点在することがある。外科的に2匹のマウスを縫合して、マ ウスの血液循環を共有させ、Wrightたち (p. 1933)は、造血幹細胞や前駆細胞が骨髄 と循環血液の間を驚くほどの機敏さで動くことを示した。この結果から、循環している 幹細胞の数は、以前思っていたよりも多そうであることが推察される。(Ej,hE)
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