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- 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約
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Science May 4, 2001, Vol.292
水と油が混ざりあう(Oil and Water Try to Mix)
よく知られているように、異なる液体間の界面は界面における分子の形状が、その周囲 のバルクな液体の形状と異なるために実験的に調べることが難しい。振動和周波数分光 法(vibrational sum frequency spectroscopy)は、この問題を克服する数少ない方法の 一つである。Scatenaたち(p.908)はこの方法を用いて、有機溶媒−水界面における水分 子の水素結合と配向を調べた。疎水性の液体表面近傍では通常知られている水分子間の 強い水素結合の姿とは逆に、彼らは水分子が弱い水素結合をしており、そして有機相と の相互作用によって部分的に配向していることを見い出した。(KU)
原子内部の電子軌道を監視する(Monitoring Electron Paths in Atoms)
強烈なレーザーの場が原子と相互作用するとき、そのレーザーの場で駆動される励起電子 は、原子核から引き抜かれ、ある複雑な軌道を描き、そして、原子核へと戻されて、散乱 あるいは再結合する可能性がある。このようなプロセスの量子力学的な描像を、計算する ことは、多くの場合可能ではあるが、それらの評価は困難なことが多い。量子力学への Feynman の方法は、すべての可能な経路、すなわち、量子力学的軌道の合算を含んでいる が、しかし、含まれる経路の切断数のため、多くの実験はこのような方法で描写すること は困難であった。Salieres たち (p. 902; Seife によるニュース解説を参照のこと) は 、偏光したレーザーの場を用いて、可能な経路の数を限定し、量子軌道による方法がその 過程を表現することが可能であることを示している。(Wt)
強い圧縮(A Tight Squeeze)
液体が非常に小さい空間に閉じ込められたときに何が起きるのだろうか?液体分子を円 柱状の雲母表面の間に閉じ込めて、その間隔が厳密に制御された表面力測定装置をもち いて、分離距離の関数として表面力が測定された。Heubergerたち (p.905;IsraelachvilとGourdonによる展望参照)は表面力測定装置を改良して、高速 のスペクトル相関を装置分解能で10〜30倍改善した。彼らは分子の大きさより遥に小さ な分離距離に対する液体の挙動を調べ、圧力とサンプルの比容積の両方を測定した。彼 らは、サンプルが液体と気体として共存するようなケースと液体相のみが存在して連続 体的挙動がもはや適用しえないようなケースの両方のデータを与えている。(KU)
光によって回転(Rotating with Light)
マイクロ・スケールのオブジェクトは、容易に光ビームによって移動できる(光ピンセ ット)が、これに回転制御を加えるように開発された手法では、取り扱われる材料の特 性に制限があった。Patersonたち(p. 912)は、任意の形状のオブジェクトを回転制御す る一般化されたテクニックを紹介している。このために利用した技術は Laguerre‐Gaussian光線である。このビームは光軸上において位相の特異点が存在し 、位相の先端は螺旋状であり、位相が進行するに従ってポインティングベクトルはコル クの栓抜きと同じらせん状の経路をとる。これがビームの角運動量を与え、光場内で捕 えられるどんなオブジェクトでも、その螺旋状に進むビーム中を回しながら回転させら れる。(hk)
振動のシワを伸ばす (Ironing Out Vibrations)
フォノンは、固体の多くの基本的な特性に影響を与える振動要素である。しかし、それ らの振動を圧力や温度で表現することは、特に極限的状況では、実際に行うことは困難 なことが多い。たとえば、鉄は地球のコアの主成分であるが、その多くの特性は、まだ 、地震による測定や熱流のデータと精密に整合してはいない。Mao (p.914) は、修正ダ イヤモンドアンビル加圧と核共鳴非弾性X線散乱測定の両方を用いた実験的方法と、第 一原理的量子力学計算とを組み合わせて、地球のコアの圧力に至るまでのフォノンの状 態密度を推算した。これらの結果によると、コアの平均的原子番号は、純粋の鉄のもの より大きく、コア内部におけるある程度のニッケルの存在を示唆している。(Wt)
海洋中の有機物(Organics in the Oceans)
海洋中の有機炭素の殆どは、個々の有機体の形でなく、海洋中に溶け込んでいる有機物 質(DOM: dissolved organic matter)の形態で存在している。DOMの特徴を特定すること は困難だった。しかし、その起源、動力学、生物への利用性などを理解することは地球 規模炭素収支の中における海洋の果たす役割を数量化するために決定的に重要である 。実験室での研究でOgawaたちは、有機体が自然発生の海洋バクテリアにより処理され る過程を追跡した(p. 917)。海洋バクテリアは殆どのDOMを処理することに決定的な役 割を果たす、と同時に、不応性であるか、生物学的利用度の低いDOMを大量に生産する 。(Na)
卵子の外被を脱がせてあげる(Helping with Her Coat)
ホスホリパーゼC(PLC)は、膜リン脂質を加水分解して、細胞の情報伝達経路において機 能することになる2つのセカンド・メッセンジャーを産生する。Fukamiたちは、その PLCd4アイソフォームを調べた(p. 920)。これは精子の先体領域に局在しているもので ある。マウスのこのPLCd4遺伝子を崩壊させると、その結果生じるオスは生殖不能とな るか、ほとんど子孫を残せなくなる。その精子が、卵外被、透明帯と適切な相互作用を できなくなるのである。PLCd4は哺乳類の受精の早い段階において欠かせないものなの で、このタンパク質の機能に関するより深い洞察があれば、ヒトの生殖能力についての 理解の助け、また避妊への応用が可能となるのだ。(KF)
断片を寄せ集めて(Putting the Pieces Together)
リボソームの大サブユニットおよび小サブユニットを原子レベルの分解能で撮ったスナ ップ写真を、リボソーム全体の構造を決定したり、その内部での作用の仕組みの一端を 明らかにするために利用できるようになった(Dahlbergによる展望記事参照のこと) 。Yusupovたちは、サブユニット構造を用いて、リボソーム全体(大小サブユニット)と 、メッセンジャーRNA(mRNA)と転移RNA(tRNA)が結合した複合体を、5.5オングストロ ーム・レベルで解き明かした(p. 883; またPennisiによる3月30日号のニュース記事参 照のこと)。tRNAは、A部位、すなわちアクセプター部位から入り込み、P部位、すなわ ちペプチジル転移酵素部位に移動し、E部位から出ていく。今や、3つのtRNA結合部位間 の正確な物理的関係と、サブユニットの相対的移動を支えている界面間のブリッジが見 えるようになった。これは、tRNA群とmRNAのトランスロケーションを調整するものとし て仮定されていた手段である。Ogreたちは、抗生物質パラモマイシンを含む場合と含ま ない場合について、3.1オングストロームから3.3オングストロームの分解能で、A部位 tRNAおよびmRNAと複合体をなしているリボソームの小サブユニットの構造と、同族に近 いtRNAとを、リボソームがどのようにして区別しているかを示している(p. 897)。小サ ブユニットにおける構造変化によって、最初の2つの塩基対についてワトソン-クリック 塩基対生成を必要とするコドン-アンチコドン二重らせんとの特異的相互作用が可能に なる。抗生物質パラモマイシンは、部分的に、こうした構造変化を引き起こし、同族に 近いtRNAの結合を促進することによって解読を妨害するのである。(KF,Tn)
グリア細胞とシナプス(Glial Cells and the Synapse)
グリア細胞は、シナプス間隙での神経伝達物質の拡散および濃度を調節することにより 、シナプス伝達の制御に関与している。この調節に関して、2報の論文がグルタミン酸 とその受容体の役割について探索している(GalloとChittajalluによる展望記事を参照 )。グリア細胞のグルタミン酸取り込みを研究するため、Olietたち(p. 923)は、生 殖状態の変化の間におこる視床下部におけるアストロサイトとニューロンとの間での実 質的な解剖学的再構成を利用した。授乳の間、アストロサイトによるシプナスの絶縁が 減少しそしてそれに伴ってグルタミン酸除去が減少し、その結果シナプス前ニューロン の代謝調節型グルタミン酸受容体の活性化により引き起こされる興奮性シナプス後ニュ ーロンでの誘発電流の振幅に変化が引き起こされる。グリア細胞はAMPAグルタミン酸受 容体サブユニットを発現しているが、その生理学的役割はほとんどわかっていない 。Iinoたち(p. 926)は、チャンネルをカルシウム非透過性にする働きを持つAMPA受容 体サブユニットを、小脳のBergmannグリア細胞に追加して、その機能を変更した。彼ら は、シナプス周辺のグリア細胞分化の大きな形態的変化を観察した:例えば 、Purkinje細胞の樹状突起の周囲を覆うグリア細胞のエンベロップが収縮する。放出さ れたグルタミン酸の除去能力が低下し、そしてPurkinje細胞の登上線維神経支配が異常 にたくさん引き起こされた。(NF)
代謝モデルの制御(Managing Metabolic Models)
完全なゲノム中での遺伝子機能を理解するために、検証可能な仮説の解析および生成を 容易にする様な方法で、様々な種類の情報を統合することが必要になるだろう 。Idekerたち(p. 929)は、酵母におけるガラクトース利用経路をプローブするための 、DNAマイクロアレイ、プロテオミクスおよび生理学的相互作用データベースを利用す る、システムアプローチを開発した。変異および選択的培地中での成長により、その経 路を混乱させ、そしてその変化をおよそ6200個の酵母遺伝子においてアッセイした 。Gal-1-Pおよびガラクトーストランスポーターの制御能力に関して、彼らは仮説を立 て、そして検証した。(NF)
ナチュラルは保護をする(A Natural Take on Preservation)
ナチュラルキラー(NK)細胞は自然免疫と獲得免疫の橋渡しの役目をし、腫瘍やウイルス に対する防御において特異的役割を演じる。いくつかの系列的研究によれば、NK細胞は 抑制と活性化受容体によって配信される信号を通じて作用することが示されていたが 、病原体に対する防御において、活性化受容体が存在するとの直接的証拠は得られてな かった。Brownたち(p. 934)は、NK活性化受容体のLY-49Hが、マウスのサイトメガロウ イルスによる感染に対する抵抗性で、決定的役割を演じていることを示した。LY-49は 免疫受容体のチロシンベースの活性化モチーフを含む情報伝達モチーフを含んでおり 、これは通常ではリンパ球膜受容体中に見られる。このことはNK細胞が、獲得免疫応答 の細胞と、類似の細胞信号伝達経路を通じて作用すかも知れないことを示している。 (Ej,hE,Tn)
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