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- 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約
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Science April 18, 1997, Vol.276
免疫グロブリンと膜発現(Immunoglobulins and membrane expression)
免疫グロブリン(Ig)は分泌型としても、あるいは膜結合型としても存在する。 後 者によって発揮される機能について、3つの報告がなされている(Tarlingtonによ る展望,p.374)。膜貫通領域の標的破壊が、Kaishoたち(p.412)によってなされ、 彼らはIgG1を利用した。Achatzたち(p.409)はIgEを使い、抗原特的な分泌性 IgG1とIgEの産生は、以前の膜結合型の表面発現に厳密に依存していることを示し た。IgG1とIgEの高度に保存された細胞質領域を切り詰める(truncate)ことによっ て、最短の細胞質尾部を有する分子の膜発現を生じ、その結果、血清と抗原特異 的Igは、大幅ではあるが不充分な減少となる。Weiserたち(p.407)は、尾が長いと きにはエンドソームのターゲティングモチーフを含んでいることを示した:膜 Igに結合している抗原はエン ドソームの区画に送り込まれ、ここで、引続きT細胞に提示されるために処理さ れる。これらの新たな結果は、T細胞の寄与に対するIgG1とIgEの応答の依存性 と整合している。(Ej,Kj)
極性を持った有機フィルム(Polar organic films)
膜の二重層の中において、2枚の脂質層は、裏と裏が接している;両側は親水性 で、双極子モーメントのような固有の分子の極性は、対向する層の反対向きの分 子によってキャンセルされる。Stuppたち(p.384;およびServiceによるニュース解 説、p.354)は。固有の極性で配向する有機フィルムを作った;つまり、表と裏をくっ つけ、一方の側は疎水性で他方は親水性の。比較的短いtriblockの共重合体は自 己アセンブルして200キロダルトンの微細構造体になり、それから層状に凝集して フィルムを形成する。このフィルムは基質への粘着性が高く、強い発色団を持っ ていないにもかかわらず、固有極性によって2次の非線形光学活性を示す。(Ej, Kj)
彗星と衝撃波化学(Comets and shock chemistry)
彗星は、地球や他の惑星に有機分子を直接もたらした可能性もあるが、しかし、衝突時の衝撃波に よる高温も原子惑星大気中で分子の合成を助けた可能性もある。McKay と Borucki (p. 390)は 、全体として彗星の組成を有する大気の衝撃波による加熱状況をシミュレートした。彼らの結果に よると、有機分子はメタンの豊富な大気を衝撃波加熱することにより生成されうるが、しかし、二 酸化炭素のみが豊富な中では形成されないであろうことを示唆している。(Wt)
冷たいけれど動いている(Cold but moving)
ストロンチウムチタン酸塩 (SrTiO3) は、固体物理学において最も研究された材料の一つである。 Grupp と Goldman (p.392) は、それのレパートリーにもう一つの現象を付け加えた。その材料 は、絶対温度 10K 以下の温度では、見かけ上は0度における量子力学的な臨界点のため、大きな 圧電効果を示す。この効果は、他の低温におけるの圧電性が減少した応答しか示さない温度領域に おいて大きい。これは、超低温の温度測定や走査型プロープ顕微鏡において利用できる可能性があ る。(Wt)
古代の猿の祖先(Ancent ape ancestor)
1960年代の初め、ウガンダのモロトから、ヒトと猿の共通の祖先を代表すると見 られる化石が発見されたが、この年代や、解釈については議論が続いてきた。 Geboたち(p.401;およびGibbonsによるニュースレポート、p.355)は、より若い年代の 玄武岩溶岩に対してアルゴン40-アルゴン-39法を適用し、その結果モロト化石は 少なくとも2060万年経っていることを示した。彼らが収集した、より若い年代の 化石資料と、古い化石の証拠から、猿に似た体型は、この時期にすでに出来上がっ ていたことが読み取れる。(Ej)
安定性を得つつ(Gaining stability)
ダイヤモンドのような、ある種の高エネルギー固相は、もし、低温、低圧におい て、低エネルギー構造を作るための障壁が余りにも高いならば、通常の条件でも 持続して存在する。しかし、その他の多くの高エネルギー固体は、圧力を開放し、 あるいは温度を下げるに従って、自発的に、より低エネルギーの構造に遷移する。 Chenたち(p.398;およびBrusによる展望、p.373)は、微細結晶の相変化の動力学を、 結晶の大きさの関数として研究した。彼らによると、準安定相は、バルク相に比 べて、より低温低圧で存続することから、微細結晶を利用して、高エネルギー構 造材料を合成したり安定化させる糸口になるかも知れない。(Ej)
遺伝病の影響を処置する(Treating the effect of genetic disease)
テー(Tay-Sachs)病とか、ゴーシェー(Gaucher's)病と言ったいくつかの病気は、 リソソームのスフィンゴ糖脂質の崩壊の経路の欠損に付随している。これらの病 気を処置する1つの戦略は、特定の遺伝子の欠損を含むか否かにかかわらず、ス フィンゴ糖脂質の産生を阻止することである。テー病のマウスモデルを使って、 Plattたち(p.428)は、N-butyldeoxynojirimycinによる処置によって、スフィンゴ 糖脂質の産生を阻止し、脳における異常な蓄積を防いだ。(Ej,Kj)
異性化酵素の内幕(Inside an isomerase)
多数の生物学的反応や酵素反応は、エノールやエノラートの中間体を形成するた めに、カルボニル(CO)基やカルボキシル(COOH)基の隣の炭素-水素 結合の切断を含んでおり、これによって、目的とする結合そのもの、あるいは隣 接の炭素原子が順番にプロトン化される。この種の化合物は概念的には3-オキソ- 5-ステロイド異性化酵素である。この溶液構造は、多次元異核磁気共鳴スペクト ルを使って、Wuたち(p.415)によって決定された。この決定された構造と速度論と突然 変異誘発についての研究から、ジエノラートは、以前示唆されていたような、 低障壁の水素結合よりも、2つの水素 結合によって安定化されると言う。(Ej,Kj)
薄膜は原子1つずつ(Thin films, atom by atom)
気相から原子を析出させて作る金属や半導体の薄膜成長は、平衡条件からは遠く 外れており、平坦なテラス上や、階段状の場所や、2つのステップ一緒になった折れ曲が り点(kink)や、平坦な面上に数個の原子がまとまって出来た「島(island)」のようなところで 成長する。熱力学的制約の中で、どのようにして動力学プロセスが競合して行く のか、ZhangとLagally(p.377)が論じている。制御された成長とは、原子拡散、島の 核形成、成長層間の原子移動などの現象を含む。(Ej,Kj)
冷たくても成長している(Growing cold)
最近の研究によれば南洋におけるある種の生物の一次生産物は南極の海氷内部で 生じている。最近の観測によれば、氷の中で、驚くほど多様な地衣類が繁殖して おり、しかも成長する場所を住み分けている。Arrigoたち(p.353)は南極大陸の周 辺における有機物の海氷中での生産の数値モデルを作 り、観測値で校正した。モデルの結果によれば、産出量の大部分は1年氷で、し かも積雪の少ない地域のものであるとともに、氷の年産出量には40テラグラムもの 炭素が含まれている。(Brownによるニュース解説参照)(Ej)
複数の内分泌異常増殖遺伝子(Multiple endocrine neoplasia gene)
複数内分泌異常増殖-1型は、副甲状腺、膵臓の島(ランゲルハンス島)、十二指腸内 分泌細胞、その他下垂体前葉の腫瘍によって特徴付けられる癌症候群である。1 0年もの探索の結果、この病気に関連した遺伝子がChandrasekharappaたち(p.404)に よって発見された。彼らはMEN1の遺伝型を持つ15家族に突然変異を同定した。 この遺伝子は、正常型では腫瘍を抑制するように作用するが、今まで知られてい るタンパク質のどれとも似ていない。(Ej,Kj)
肥満細胞の管理(Managing mast cells)
Cblタンパク質は情報伝達機構に関与しているプロトオンコジーン生成物で、これ によって造血細胞は細胞外のシグナルに反応する。OtaとSamelson(p.418)は、アレル ギー反応のメディエータを放出するように刺激された肥満細胞中のCblの機能を研 究した。Cblは、情報伝達経路の他のタンパク質と結合する複雑なアダプタタンパ ク質として働くだけでなく、肥満細胞からヒスタミンを放出するために必要な酵 素であるSyk非受容体タンパク質チロシンキナーゼに直接結合し、これを抑制する。 (Ej,Kj)
蚊対マラリア(Mosquitoes versus malaria)
蚊がどのようにしてマラリアの寄生虫に抵抗しているかを理解することは、マラ リアを制御する戦略を考える上で助けになる。蚊ベクターの1系統である Anopheles gambiae は、メラニンに富むカプセルで成熟寄生虫を覆うことによっ て抵抗している。Zhengたち(p.425 )は、このカプセル化は、Anophelesゲノム中の 1つの主要な、そして2つの非重要な定量的形質座位と関連していることを見つ けた。この発見によって、この種の抵抗性を含むような遺伝子の単離が可能にな るかも知れない。(Ej,Kj)
AraC構造(AraC structure)
単糖L-アラビノースの取り込みと異化作用をコントロールしている遺伝子は、大 腸菌のAraCタンパク質によって制御されている。この二量体の転写レギュレータ のDNA結合性は、L-アラビノースと複合体を形成するときに変化する。Soissonたち(p.421 )は、 AraCが遊離状態のとき、およびL-アラビノースと複合体を形成しているときの結 晶構造を示した。それによれば、遊離状態では、アミノ末端の腕が不整列で糖-結 合ポケットを露出させ、オリゴマー形成の仲介となりうることを示している。他 方、結合型では、アミノ末端の腕はL-アラビノースリガンドを完全に覆っている。 (Ej,Kj)
遊離における役割(Roles in release)
熱ショックタンパク質70(Hsp70)とHsp90ファミリーのメンバーは、タンパク 質が折り畳み損なわれるのを防ぐ、分子シャペロンとして作用する。ペプチドの 結合と遊離は、アデノシン三リン酸結合と加水分解によって誘発されるコンフォ メーションの変化を含んでいる。この、結合と加水分解は、アデニンヌクレオチド 交換因子であるGrpEのような補助因子によって援助を受けているが、そのメカニ ズムはよく分かっていない。Harrisonたち(p.431 )は、Hsp70の大腸菌相同体である、 DnaKのアデノシントリフォスファターゼ(ATPase)領域と複合体を形成している切 断型GrpEの結晶構造を示した。2つのGrp分子がATPase領域に結合しており、 GrpEは、Dnakのヌクレオチド結合間隙を開き、ATPaseからアデノシン二リン酸を 放出させるように見え る。GrpEの2つの長いα-ヘリックスは、ATPase領域を越えて伸びており、このこと から、GrpEもまたペプチドの放出に関与していることを示唆している。(Ej,Kj)
星を地上に持ってくる(Bringing the stars down to earth)
恒星の物理現象は理論的な研究によってかなり理解されている。 Glanz(p.351)による解説によると、恒星での現象は、核融合の現象に驚くほど 良く似ていると言う。核融合のために開発されたシミュレーションソフトが 超新星の不安定性の理解に大変役立っている。あるいは、太陽表面でのプラズマ のアーチが合流し、噴出する様子は、シミュレーションで詳細に再現出来る。 小規模な実験と比較しながら研究を続けることで、近い将来、超新星が爆発を 起こす数百万年前に見せると思われている星のまわりの微かなリングの原因と 構造も明らかにしてくれるものと、期待されている。(Ej)
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