AbstractClub - 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約


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Science October 11, 1996, Vol.274


発生におけるコレステロールの役割(Role of choleterol in development)

コレステロールは生物学においてもう一つ必須の役割を演じている。Porterたち( p.255;およびMartinによる展望p.203)は、コレステロールは胚形成時、パターン 形成の中心的調節機能を持っているHedgehog(Hh)タンパク質にくっついている。 Hhの前駆物質は自己タンパク質分解を経由して、Hhの情報伝達活性を持っている アミノ末端領域(Hh-N)とカルボキシル末端領域(Hh-C)を形成する。このプロセス を通じて、Hh-CはコレステロールのHh-Nへの付着を仲介する。このコレステロー ルのタグ(荷札)はHh-Nシグナルの拡散をを最小限に押え、胚発生における(長 距離に対して)短距離の効果を制御しているのであろう。(Ej,Kj)

彗星からのエックス線(Cometary x-rays)

百武彗星が地球へ最接近した時、恐らく最も予想外の観測 結果は、Roentgenエックス線衛星とRossiエックス線Timing Explorerにより、エックス線と紫外線の放射が検出された ことであった。 Lisse たち( p. 205 )は、放射は太 陽風か太陽の磁場か、あるいはその両方と彗星との相互 作用による可能性を示唆している。これらの彗星からのエック ス線を生ずる正確なメカニズムは不明確なままではある が、太陽系に侵入してくる次の彗星はこれら高い周波数領域 で徹底的に調べられることになるだろう。(Wt,Nk)

TCRの構造;単独の場合とMHCに結合したときと(TCR structure, alone and with MHC)

主要組織適合複合体(MHC)に結合したペプチドと、T細胞受容体(TCR)のα鎖とβ 鎖の相互作用は、T細胞による外来抗原の認識を支配している。β鎖と、α鎖の 一部に関する以前の構造研究によってこれらの分子が免疫グロブリンに似ている ことが示されているが、 然のままで、その相互作用を示しているαとβ受容体の結晶を得る ことは難しかった。Garciaたち(p.209;および、表紙とServiceによるニュース解 説p.176)は、特定のα、βTCR, TCR 2Cを完全グリコシル化した形で過剰発現さ せた。この受容体の高分解能構造は、αの定常部(C)、およびα定 常部とβ定常部との相互作用を除いて抗体の構造に類似している。また 受容体結晶がMHC分子のH-2Kbと一緒の状態では、MHCペプチドの結合溝 に対するTCRドメインの位置が如何に違っているかが低分解能の解析からわかった。(Ej,Kj)

ウラルの先祖(Roots of the Urals)

ウラル山脈は、パンゲア超大陸の形成される間のおよそ 3億年前に始まった、アジアとヨーロッパの衝突の刻印である 。アパラチア山脈とアルプス山脈の縫合とは異なり、この 衝突によって引き起こされた縫合は、 引き続いて起きたパン ゲア大陸の解体の間、大陸の内部に維持されていた。4件の 報告は(p. 220 から始まっている;Kerr( p. 181)による 解説記事を参照)、深部におけるこの地殻の縫合の特性を 探求するための国際的地震実験に基づく結果に焦点をあててい る。Urals の中の地殻は、60kmの深さまで伸びており、 マントル岩石圏(溶融のない地域)は 150 キロまで伸びてい る可能性がある。(Wt)

突進する(Surging ahead)

氷床の安定性を評価する上で、グリーンランドと南極の氷床の放出量の変化を知 ることは極めて重要である。過去にも小さな氷河が一時的に前進速度を急激に速 めたことは知られているが、大きな氷床の最近の放出量の変化に付いては良く分 かっていなかった。Joughinたち(p.228)は、衛星によるレーダー波干渉観測によっ て、グリーンランド氷床の氷河放出(Ryder氷河)が、1995の終わりに突然3倍も 速くなったことを示している。(Ej,Og)

極短波長エックス線パルス(Ultrashort x-ray pulses)

エックス線による方法は非常に高い構造的な分解能を与えう るにもかかわらず、極短波長エックス線パルスを生じるこ とは困難であった。そして、高分解能な動的な研究 ( 100 フェムト秒、すなわち、一回の分子振動のオーダーで) は、 一般的には光学的な分光に限られてきた。 Schoenlein たち ( p. 236 )は、0.4オングストロームの 波長の300フェムト秒のエックス線の生成を示している 。そのエックス線は、加速器中の極めて相対論的である 電子ビームからの強烈な赤外線のレーザーパルスを散乱した。 ある俯瞰的な記事において、 Eisenberger と Suckewer ( p. 201 )は、いかにこれらの結果が、短波長エックス 線パルス生成のための他のアプローチに関係しているか を論じている。(Wt)

小窩の発芽(Budding caveolae)

膜での情報や物質の交換における小窩(caveolae=哺乳類細胞の原形質膜上の膜の 陥入)の役割と、小窩が、細胞外の色々なリガンドを細胞内部に移行させる (インターナリゼーション)メカニズムについては議 論が多い。Schnitzerたち(p.239)は、小窩が、分離された原形質 膜からin vitroで放出されること、および、グアノシン三リン酸とサイトゾルの存在下 で透過処理した細胞の原形質膜から放出されることを報告している。(Ej,Kj)

染色体末端の手段(Means to a chromosome end)

染色体末端の構造であるテロメアは、細胞分割のサイクルの間、テロメラーゼ酵素によって維 持されなければならない、さもなくば、テロメアは徐々に短くなり、細胞の老齢 化に至る。Nugentたち(p.249)は、テロメラーゼ欠損フェノタイプを示す酵母の突 然変異体を同定した。この原因となる遺伝子の1つであるEST4(EST:より短いテロメ ア)は実際は、対立遺伝子CDC13であこれは以前からテロメア機能に関係し ていることが示唆されていたものである。著者たちによればCDC13タンパク質が1本鎖のテロメアDNAに結合 しており、2つの機能を持っている:1つは染色体末端が分解することから保護 し、もう1つはテロメラーゼが染色体終端へアクセスすることを仲介しる。(Ej,Kj)
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