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- 英文技術専門誌の論文・記事の和文要約
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Science March 29, 1996
クロストークによって抑制され (Inhibited by cross talk)
細胞の運命(役割)を決めるために、発生中には、複数のシグナル形質導入経路がし ばしば必要である。では、どのようにこれらシグナル経路が組み込まれているのであ ろうか、と言うことについては、しばしば不明確である。Axelrodたち(p.1826;Blair による「展望」参照p.1822)は、発生中のショウジョウバエの羽のパターン形成中におけ る NotchとWinglessのシグナリング経路間の相互作用について調べた。羽周縁部の毛が分化 誘導さ れる際に、Wingless経路に機能することが知られている遺伝子dishevelled(もじゃ もじゃ髪の)は、Notchによるシグナリングを抑制するように働く。試験管実験から 類推すれば、Dishevelledは、Notchのカルボキシル末端に物理的に作用する、直接的な ものである。この相互作用によって、上記経路間に見られる抑制クロストークの分 子的メカニズムが説明される。(Ej)
深みから出てきて(I) (Out of depths I)
今まで思われていた以上に多数の地表露出岩石がマントル深部由 来のものであると認識されてきている。これらの例には400km以上の深部からマグ マによって運ばれてきた小岩石であるゼノリス(xenolith)や、典型的には大陸衝突帯 の地質構造的プロセスによって露出させられた、ダイヤモンドのような高圧鉱物を含 むより大きな岩石体があげられる。Dobrzhinetskayaたち(p.1841;およびKerrによる ニュース解説参照p.1811)の示すところによれば、アルプスの巨大山塊であるAlpe Ar amiかんらん岩は、もしかしたら300km以上もの深部から来たのかも知れないと言 う。岩体の中のオリビンはFeTiO3の新しい相のインクルージョン(表紙参照)を持っ ており、これが、高圧ペロヴスカイト相の溶離物の可能性を示している。(Ej)
深みから出てきて(II) (Out of depths II)
珪酸塩マグマが地殻を通って登ってくる速度や方法はよく解っていなかった。Brando nたち(p.1845)は、マグマの高圧下で安定であるが浅部に来ると溶解する鉱物である 緑簾石(epidote)の溶解の研究を行い、マグマの侵入と冷却速度の評価を行った。い くつかの岩脈(dike)や貫入岩(intrusion)中の緑簾石の保存状態から、母マグマは侵 入し結晶化するのに、おおよそ1000年以下であった。この冷却速度は、マグマのダ イアピ ル内への上昇にしては速過ぎる。(Ej)
古代温室ではない? (No old greenhouse?)
白亜紀最終時期の気候は、暖かな温室のような気候であったとしばしば思われている 。確かに、現在の気候に比べ、高緯度地域はもっと暖かかった。しかし、熱帯の海洋 温度は想像するよりも冷たかったと言う証拠がある。D'HondtとArthur(p.1838)は、 広範囲の緯度に渡る後白亜紀の堆積物の中の有孔虫プランクトンの酸素同位体を解析 し、熱帯の海洋は冷たかったことを見つけた。また、緯度方向への海洋表面温度勾配 が小さかったこと、このことから極方向への熱の運搬が大きく、従って温室のような コントロールされた気候ではなかったことが推察された。(Ej)
女王を作るもの ( What makes a queen)
蜜蜂のコロニーにおいて、女王蜂と働き蜂の階級分化は、異なるフェロモン生成により 調節されている。Plettner et al.(p.1851; Robinsonによる展望p.1824も参照のこと)は 、これ らのフェロモンの生合成経路を解明するために、重水素化した酵素基質を用いた。異な る社会 的階級には異なる機能をする、様々なフェロモン異性体が関わっており、そこで、機能 する酵素の僅かな変化が、階級に特異的なフェロモン混合物を生成する。
磁気の転移 ( Magnetic transfer)
磁気共鳴イメージング(MRI)では、もし研究中の核が「下向き」に比べ「上向き」に整列 された スピンの割合が多ければ、より高いコントラストを得ることができる。最近、光学的な ポンピン グの方法が、3Heや129Xeのような希ガスにおいて、スピンを整列するのに用いられた。N avon et al.(p.1848; Sevice による解説記事p.1810も参照のこと)は、スピン偏極した129Xeが溶 液中に 導入されると、それは、核のOverhauser効果により、効果的に磁化を溶媒の陽子に転移 すること ができることを示した。この効果は、在来のMRIに、また、蛋白質や表面の核磁気共鳴に 用いる ことができるであろう。
いささか繋がらず ( Not quite connected)
ネズミの鼻の部分の髭は、感覚系の重要な部分である。各髭は、その神経床を通して皮 質のタル 状構造へと突き抜けている。このタル状構造は、主にはその「中心」となる髭に反応す るが、し かし、また、近接するタルからの信号をも統合することができる。 Welker et al. (p. 1864)は 、神経床のタル状構造が変化し、個々の皮質におけるタル構造の消失した自然発生の突 然 変異体を同定した。感覚としての処理はなお生じており、全体的な入力の位相関係は保 存される にもかかわらず、個々の髭の応答間の空間的なまた時間的な識別能力は、減少している 。
神経と筋肉 ( Nerve and muscle)
発達する神経の成長突起がその筋肉のターゲットと接触し、シナプスを形成する時、神 経と筋肉との結合が形成される。Kopczynski et al. (p. 1867; Roushによる解説記事 p. 1807を参照のこと) は、ショウジョウバエ (Drosophila)から、細胞表面の蛋白質のテトラスパニン族のひとつをコードする遺伝子 late bloomer(or lbl) を同定した。突然変異体のlbl遺伝子 を持つ胎児においては、シナプス形成は遅れ、他のニューロンは、筋肉細胞のターゲッ ト への異常な結合を形成する。
細胞成長と伸長因子を結び付ける (Linking cell growth and elongation factors)
ヒト骨髄白血球の一種は、ELL遺伝子中に中断点をもつ染色体転位と関連しているが、 ELLの機能については解かってない。Shilatifardたち(p.1873)は、ELLが、ポリメラーゼ の一時停止を抑制することで、RNAポリメラーゼII転写の触媒速度を促進させる 転写伸長因子をコードすることを見いだした。最近になって、von Hippel-Lindau 腫瘍抑圧遺伝子の生成物もまた伸長因子であることがわかった。(Ej)
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