[前の号]
[次の号]
Science April 19, 1996
アマゾン雨林におけるパレオインディアンの生活( Paleoindian life in the Amaz
on rainforest )
Clovisのような北アメリカの遺跡では、およそ11,000年前には、開けた生息地に対する
大規模
な狩猟計画にもとづいた文化の発生が示唆されている。この同時代の南アメリカにおい
て、
これと首尾一貫した状況の証拠を得ることは、困難なものであった。 Roosevelt et al.
(p.
373; Gibbonsによる表紙と解説記事p. 346を参照のこと)は、いくつかのアマゾン河の遺
跡を
調査し、洞窟における野営の遺跡から、熱帯の氾濫原と森林での食料調達に基づくある
文化の
存在の証拠を見出した。この遺跡は、10,000年から11,200年以前に居住されていたと見
られる
が、これから、精巧に割られた石の道具や様式化された岩の絵画が発掘された。(Wt)
大陸への手がかり( Clues to continents )
二つの大洋プレートが衝突する時、通常は、一つのプレートは他の下に滑り込まざるを
えなく
なる。地震と火山活動は、プレートが互いに擦れあう時に発生し、最後は、大洋の島弧
を
形成する。 Suyehiro et al. (p. 390)は、局所的な地震を反射と屈折の調査とともに用
いて
、伊豆−小笠原島弧の下にある地殻と上層のマントルの構造をモデル化した。比較的速
度
の速い花崗岩の帯が、地殻の中間的なレベルで見つかった。これは、大陸の地殻は、大
洋の滑
り込んでいく岩盤に由来するものらしいことを示唆ししている。
このようなメカニズムは、いかに大陸が形成されたかの説明に役立つものであろう。(Wt
)
しっかり留める( Holding fast )
ダイアモンドのコーティングは、固く耐候性があるため、金属や金属炭化物の部品には
望まし
いものであるが、そのような膜の基板への密着性はしはしば弱いものである。これは、
一つに
は、熱膨張の特性がコーティングと基板とで異なっているためである。 Singh たち (p.
396)は、レーザーによる微小な荒し処理により基板を前処理し、ダイヤモンドコーティ
ングの
密着性を改善した。これは、ひっかきや刻み目をつけるテストにより測定されている。(
Wt)
NO を逃れて(Evading NO)
宿主に感染するバクテリアは、宿主の防御反応を避ける自分の方策を持っている。De
Grooteたち(p.414)は、ネズミチフス菌が感染したマウスの細胞が、ホモシステイン
を生成することによって作られる有毒な酸化窒素(NO)からネズミチフス菌が身を護ると
報告している。
このホモシステインは明らかに、S-nitrosothiolsからのnitrosonium(NO+)の運搬を引き
受
けており、かように鋭敏な細胞標的からNOをそらせている。ホモシステインの合成能
力を欠く突然変異バクテリアは、NOをドナーとする化合物に、より敏感であり、マウ
スにとってはバクテリアの毒性を弱めている。ホモシステインの蓄積は、人間の血管や
神
経系の病気に関連して起きる。また、このNOによって仲介されるシグナルとの相互
作用は、この効果のメカニズムを象徴しているのかも知れない。(Ej)
植物発生中のステロイド(Steroid in plant development)
動物において、ステロイドホルモンは成長に不可欠であるが、植物性ステロイドの生
理学上の役割はよく解ってない。Liたち(p.398;およびRussellによる「展望」p.370)
は、ArabidopsisのDET2遺伝子の突然変異体が、
光を規制した状態で発生段階を経ると欠陥を持つに至ること
を示している。このDET2遺伝子は哺乳類のステロイド5αレダクターゼ
の遺伝子配列とよく似ている。しかし、突然変異体は、植物性ステロイドのブラシノラ
イドを与える
ことで改善される。これらの結果は、光が関与する発生シグナルの形質導入に
植物性ステロイドが果たす役割を示唆している。(Ej)
殺し屋に対する見解(View to a killer)
活性化したナチュラルキラー(natural killer =NK)細胞や刺激を受けたT細胞で発現さ
れる
Lag3遺伝子と、CD4遺伝子の相同性から、その生成物であるLAG3タンパク質はT細胞
応答の制御に関与しているかも知れないことが示唆された。Miyazakiたち(p.405)は
Lag3ノックアウトマウスを作り、このマウスが、NK細胞によってある種の標的腫瘍
細胞を殺すことに欠陥があること以外には見かけ上正常であることを見つけた;主要
組織適合性遺伝子複合体クラスI分子が不足している非形質転換細胞を殺す能力は
保持したままであるが。これらのことから、NK経路が複数存在すること、そして、
LAG3は、これらのモードを定義するためのレゼプターあるいはコレセプターとして
の役割を持つことを示唆している。(Ej)
ヒストンと転写(Histones and transcription)
DNAに結合するヒストンタンパク質を修飾すると、転写因子がDNAの制御部位に接近する
ことに
影響があると思われている。哺乳類細胞でのヒストンのdeacetylaseを抑止すること
で、G1あるいはG2期において細胞周期の分裂停止をもたらす。Tauntonたち(p.408;お
よびWolffeによる「展望」p.371)は、ヒトのジャーカットT細胞からのhistone deac
etylase catalytic subunit(ヒストン デアセチラーゼの触媒サブユニット)を
精製し、クローン化した。予想されたタンパク質は、酵母の転写因子であるRPD3に類似
している。これらの結果は、ヒストンの調節修飾は特定プロモーターにおける転写制
御にどのように寄与しているか、の説明に役立つ。(Ej)
リードをフォローしながら(Following a lead)
脊椎動物の脳の発生期、大脳皮質神経細胞は元の生まれた場所から移動し、成熟した
脳の特徴のある層構造を形成する。神経細胞はグリア細胞の繊維が設定してくれたルー
トを
たどる。Zhengたち(p.417)は、小脳において、ガイド付き移動を助けることで知られ
ているastrotactinタンパク質が、移動する神経細胞によって薄層構造が形成されて
いる脳の色々な部分で発現していることを見いだした。astrotactinは、移動神経
細胞とガイド役のグリア細胞繊維を仲介する。(Ej)
LTPへのリンク(Links to LTP)
哺乳類に於て、安定的な感覚刺激入力は、自身の脳を変化させる。このような、経験に
基
づく適応性と刺激に対する分子応答(例えば、個々のシナプスに見られる長期増強性(lo
n
g-term potentiation=LTP))の関係はよく解ってはいなかった。Glazewskeたち(p.42
1)は、LTPに関与していることが知られているα-CaMKII を作る遺伝子が欠失している
大人のマウス(ただし青年期を含まない)は、ひげの感覚刺激入力が変化
した時、皮質の反応は正常より小さな変化が見られたことを示した。これはLTPと経
験に基づく適応性とを結び付けている。(Ej)
[前の号]
[次の号]