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Science December 8, 1995
高等真核生物のDNA複製起点 (DNA replication origins in higher eukaryotes)
酵母では、起点認識複合体(ORC)であるマルチサブユニットタンパク質(multisubunit
protein)はレプリケーター配列に結合しており、DNA複製の開始をさせる。また他の
タンパク質のように、ORCは複製開始の頻度(frequency)を決めるとともに転写沈黙(t
ranscriptional silencing)にも関与している。3つの報告が、高等真核生物からのO
RC単離について述べている(Marxによるニュース解説p.1585参照)。Gavinたち(p.1667
)は、多数の生物から、最大のORCサブユニットであるOrc1pとOrc2pに関するタンパク
質を分離し、ヒトのORCタンパク質が生体内で複合体を作るために反応することを示
した。Gossenたち(p.1674)はショウジョウバエのOrc2pとOrc5pの相同体をクローン化
し、DmOrc2が、胚生成時期、即ち、DNA複製が最も活発な時、にもっとも豊富に存在
することを見つけた。Ehrenhofer-Murray たち(p.1671)は、DmOrc2が、酵母Orc2-1突
然変異における沈黙欠失を補うことは出来るが、複製欠失を補うことは出来ないこと
、したがってこれらの機能は分離しうることを示した。
ゆらぐ流束 (Fluctuating flux)
太陽ニュートリノの測定された流束とモデルから予測される流束との間
の相違は、太陽ニュートリノの問題となっている。 McNutt(p.1635)
は、ニュートリノ流束の変動と太陽風の変化との間の相関があることを
報告している。これは、標準のニュートリノ物理学を改訂する必要
性を示している可能性がある。この相関は、コロナ中の太陽磁場との
相互作用により、電子ニュートリノが、検出できないタイプへの共鳴
変換することと、両立する。
量子コンピューター ( Quantum computers)
量子力学的システムから構成された論理要素を持つコンピューターは、
原理的に大きな数を素数に分解することが可能である。これは、在
来型のコンピューターの能力を超える問題である。しかしながら、
これを行なうアルゴリズムは、量子コンピューターが完全に孤立してい
ることを仮定している。 Chuang et al.(p.1633)は、コヒーレンスの
喪失に導く、量子コンピューターとその環境の間に相互作用が存在し
てさえも、その様なコンピューターはなお実現可能であることを示し
た。量子的なエラー修復が、計算を安定化するのに必要であろう。
エアロゾルの源 (Aerosol source)
成層圏は高濃度の微少な霧状の液体硫酸粒子を含んでおり、最終的にはオゾンを奪う
ことになる反応に関わっている。火山活動は上記粒子を形成する物質を成層圏に噴出
するが、それでは、火山が活動してないときは何処からくるのか? Brookたち(p.16
50)は、硫酸水粒子はまんべんなく熱帯上部の上部対流圏で生成されており、それが
上部の成層圏に運ばれていることを示した。
繊細に織られた (Finely fabricated)
微細な、ナノスケール素子の製造に焦点を当てた2つの報告が成されている。Snowと
Campbell(p.1639;およびDagataによる解説p.1625)は、原子間力顕微鏡の先端で、金
属の線を引き、金属-酸化物-金属接合を形成することが出来た。導電性の先端を使う
ことで、10ナノメートルのTiによる構造物を作ることができ、TiO2の生成を抑えるこ
とが出来た。LehmannとStuke(p.1644)は、アルミニュウムと酸化アルミニウムで3次
元構造の微細構造を作った。コンピュータが2つのレーザー光線の動きを制御してお
り、2つの光が交差する場所で気相反応物からの沈着が起きる。彼らは熱膨張と収縮
によって動く線形マイクロモーターを作り、レーザーによってこれに熱が供給された。
塩を押え込む (Hold the salt)
塩分の高い土壌で植物が成長する能力は、イオン輸送を含むいくつかの生理学上の特
徴と関連がある。Rubio たち(p.1660)は、植物の正常な生理活動に必要であるがナト
リウム過剰状態で植物が生育するとナトリウムによる毒性が生じるイオン輸送の様相
を同定した。HKT1イオン共輸送(symporter)は、通常、Na+と一緒にK+を輸送する。し
かし、Na+が高濃度のときは、HKT1は、K+輸送の犠牲によって、低親和性サイトを通
して余分のNa+を輸送する。膜貫通領域での突然変異はNa+とK+の識別能力を向上させ
、結果として耐塩性の向上に寄与するかも知れない。
テロメアタンパク質 (Telomere protein)
染色体の末端、即ちテロメア(末端小粒=telomere)は2本鎖DNAヘキサマー(hexamer
)の繰り返しやタンパク質の複合体で、このタンパク質は細胞周期の崩壊や悪性化の
原因となるDNA損傷が起きないように保つために必要なものである。Chongたち(p1663
)は、ヒトのテロメア反復結合因子(telomeric repeat binding factor=TRF)のクロー
ニングについて報告している。蛍光免疫法(immunofluorescent)によるラベリングに
よると、クローン化タンパク質は、生体内で、染色体の末端に局在している。
修正とてんかん (Editing and epilepsy)
AMPA感受性のグルタミン酸受容体を発現する神経細胞はRNA修正のメカニズムを受け
るが、生理学上の重要性は不明確である。修正を受けたサブユニットはCaの透過率が
低くなっているが、これは受容体チャンネルの孔形成領域でグルタミンがアルギニン
に置換されたからである。Brusaたち(p.1677)は、AMPA受容体サブユニットRNAのいく
つかのバージョンを修正することが出来ないトランスジェニックマウス(transgenic
mouse)を作った。このマウスは、生後21以内に激しい発作を起こして死亡した。こ
のマウスの表現型が示すところによれば、完全な哺乳類の脳の中でのRNA修正機能の
重要性であり、早期てんかんのモデルを与えている。
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